もうすぐ絶滅するという、紙の雑誌について。について。

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▲妖怪ウォッチじゃないですかね。

penの最新号、巻頭特集は『もうすぐ絶滅するという、紙の雑誌について。』
雑誌編集者のはしくれだった者として、これがどんな内容だろうが絶対に失敗するのがわかっていながら、表紙で買った。
タイトルの元ネタとなったエーコとカリエールの対談を読んだんだか読んでないんだか知らないが、
特集内容はまさしく「絶滅する側」の金切り声だった。

ずっと昔から、言われ続けてきた。もうすぐ雑誌は絶滅する、と。
雑誌が発信してきた情報をラジオが音声で伝え、テレビが映像を駆使して世界を一変させ、
インターネットが双方向の、そして国境を越えた交信を可能にした。
いま再び、紙の雑誌なんて要らないという声が大きくなっている。
電子版を端末で見るほうが手軽で便利だ、という人も少なくないかもしれない。
では、紙に印刷されて書店に並ぶ雑誌は、やはり老兵のように消え去るのか?
否、紙だからこそ伝えられる大切なものがあるということを、この特集で証明します。
(巻頭言より)

紙に印刷されて書店に並ぶ雑誌は消え去らないだろう。
ただし、それはとてもクローズドな、マスではない、"編集者と読者の対話"というカタチでしか残らないだろう。
僕はそう思う。

この特集は「雑誌にゆかりのある人々へのインタビュー」と「過去に輝いていた雑誌への憧憬」でそのほとんどが構成されている。
上記の巻頭言の次の見開きで若手雑誌編集者へのインタビューが4本掲載されているのだが、
それぞれ「バックナンバーを保管してます」「雑誌は趣味性の高い嗜好品になる」
「紙媒体の役割は縮小している」「自分が好きなモノがこの世から消滅してしまうのは悲しい」と語っている(葬式かと思った)。

じゃあ、なにが「否」なのか。紙だからこそ伝えられる大切なものはなんなのか。
結局penの編集部はそこをドカンと提示することなく、特集内で過去と現在を行ったり来たりしている。

おそらく「雑多な情報が掲載されているからこそ、出会いに多様性と偶発性があり、新たな発見がある」ということ
そして過去にあった綺羅星のような雑誌たちが現在の我々にも与え続けているその影響力を顧みよ」ということ
このふたつを骨子として本特集は企画されたんじゃなかろうかと思う。

だから、先程のようなインタビューの内容に編集部からの「これから新しい切り口が生まれることを期待したい」とか
「どんな未来が待っているだろうか」みたいなぶん投げメッセージがくっついて原稿は終わる。
そうじゃなくて「これから雑誌は再興する」ってのがタイトルへの反語的結論であるべきだし、それが美しいと思ったはずだ。
しかし、登場人物の誰もがそれを提言してないし、するつもりもないっぽい。
(penのFacebookページでは「雑誌全体が盛り上がればいいのだ!」みたいなことを書いてて、それはそれで恐ろしい)

まず滅ぶのは、おそらく「雑誌(=雑多な情報が掲載されている紙のメディア)」なんじゃないかと僕は思う。
まさに、このpenのような、毎度毎度ジャンル違いの特集をして、より多くの読者を獲得していこうとしているのが「雑誌」だ。

だけどもう「紙はやっぱり特別」って思ってる人なんて、少数派にもほどがあると思う(ちなみに自分は根っからの紙信者だ)。
そして、「偶発的な出会いが楽しい」なんて、いまじゃマゾヒストだと思う(偶発的な出会いは無駄も多いが楽しい)。
ググれば欲しい情報は手に入るし、映画だろうがメシだろうが、ネット見てその通りに楽しんどけばハズレない。
そして、雑誌が過去の雑誌を振り返ることほど無意味なことはない。
過去の雑誌をいくら振り返ったって、いまコンビニにある雑誌が売れるわけじゃない。
過去を振り返るのは、雑誌好きと雑誌の歴史を語りたいジャーナリストに任せておけばいい。
問題は、未来だ。

で、未来のことである。
奇しくもこの特集に登場する人々が口をそろえて言っているとおり
「特定の嗜好を持った人(=編集者)が鋭い切り口をもって深く掘り下げた事象」を紙媒体にまとめ上げることが
雑誌(それは限りなく「専門誌」に近づいていく)の強みとなる。
そして「その嗜好に心酔できて、紙媒体で読みたいと思う一定数の読者」と共振することがメディアとしての役割になる。

過去のようには儲からないだろう。長い目で見れば先細るだろう。インターネットはより強大になるだろう。
そのかわり、最適が出来てさえいれば、外野が喧しく騒いでいる「出版不況」など、ものともしないはずだ。
(それが証拠に、出版不況と言われて久しいけど、「専門誌」って出版業界全体の落ち込みよりもずっとゆるやかな推移をしている。)

雑誌が好きで、雑誌を作りたくて、雑誌の限界とか雑誌の特性とか雑誌の面白いところを知ってて、
まだ紙媒体で何かできるかもしらんな、と思いながら延々と思考を巡らせていたところに
こういうものがズドンと出てきて、
「ああ、やっぱり雑誌は死ぬんだ。いや、死なないけど、最適化して、"MAP兵器"から"近接ぶん殴り兵器"になるんだな。」
という確信めいたものを与えてくれたりして。確信だけあって、答えは見えてませんけど。うん。

にしても、「この特集の"未来へのメッセージの不在ぶり"が逆説的にもっとも強力なメッセージになっている」というところも含めて
めっちゃ面白い体験をしたな、と思って書きました。

おしまい。

Commented by きむらしんいち at 2014-11-27 22:50 x
紙であることにこだわるのなら、もっと紙であることの可能性を追求してみることもできそう。

手触りの異なる紙、透過性の異なる紙、硬い紙、柔らかい紙、染み込ませた匂いの多様さ、ページごとに変わる大きさや形、といったような可能性は、まだまだ未開拓だったりしないのかな。

毎号、紙ならではの、電子化できないような、さまざまな実験に挑戦する雑誌、紙であることを楽しむ雑誌があったらおもしろそう。

(「Pen」は紙でなくKindleで買ったことがあるだけなので、ちょっとむずがゆいような気持ちになりました。)
Commented by alpha at 2014-11-28 10:43 x
紙媒体でなくなると床屋や病院の待合室には置けなくなりますね。
Commented by yukimaru156 at 2014-11-29 02:15
タッチに慣れ過ぎてページがめくれない、なんて人たちが増えたら紙媒体はホントになくなるのかもですねぇ。マッチが擦れない人がいっぱいいるみたいに。
あたしは左手から右手にページが移動してくのとか、このくらい残ってる、なんて感覚好きだけど、「?」な人、いっぱいいるんだろーなー。
Commented by x at 2014-11-30 01:40 x
台湾のヘアサロンではiPadを「はい」と渡されるよ
雑誌なんかイラネ
資源を大切に
Commented by もうすぐ絶滅するという紙の書物について at 2014-12-01 12:57 x
もうすぐ絶滅するという紙の書物について
に触発されたのかな?
by kala-pattar | 2014-11-26 23:59 | Movie&Books | Comments(5)
“LWGY”