【ディーゼル】関東民にマジでオススメする房総半島秘境の旅【単線】

▲まずはこの動画を見てほしい。こんな景色が東京のすぐ隣にあるなんて、俺は知らなかったよ。(筆者撮影)


土曜夕方、自宅でパズドラマルチに耽っていてはいけないと思い立ち、友人と千葉県は外房へ。
東京駅で駅弁とビールを買ってから高速バスに乗り込み、適当に東へと向かう。
夜はスナックで飲み散らかして、翌朝二日酔いの身体を引きずりつつ東金〜大網〜大原と乗り継ぐ。

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大原は小さな街だが駅近くに漁港があり、観光案内所も非常に親切だ。
タクシーで市場に乗り付け、大原漁港の『いさばや』にてたこ飯定食(1700円)を喰らう。

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▲なんというか、1700円の味!という感じで非常に納得感があった。


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▲こちらのはまぐりは一粒350円。パズドラならレアガチャ引ける寸前の味。舌の上に外房に面した太平洋が広がる。


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▲漁港のウエットティッシュはバケツのように巨大だ。アルコールが目に染みる。


いすみ鉄道は1時間に1本程度のダイヤで運行されている。
外房と内房のあいだにはもともと木更津(内房)〜大原(外房)を結ぶ木原線というのが計画されていたのだが
なんやかんやあって現在ではいすみ鉄道が大原から、小湊鉄道が五井から運行されており、
このふたつのとんでもないローカル線が房総横断鉄道として鉄道マニアの目を楽しませている。
興味のある向きはこのへんからWikipediaホッピングをしてみてほしい。軽く3時間は飛び去っていく。

たこ飯定食が腹部を圧迫するが、いすみ鉄道出発の時は近い。
漁港の魅力的な光景を尻目に軽いジョグで駅へと戻る。

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大原駅ではアイドリング音を轟かせながら黄色いディーゼルカーが待っていた。
トイレを済ませて乗り込むと、低いエンジンの音とともにいすみ鉄道は大原駅を離れる。

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ゆるい。とにかくゆるい。
ムーミンとタイアップしたいすみ鉄道は社内にムーミンの意匠をベタベタと貼ってデコレートしているが、
駅のホームには地元の学校の生徒が作ったとおぼしきヤレたムーミンが鎮座している。

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両脇を田んぼに挟まれたレールをゴトゴトと走り、
森に突き刺さり、深い溪谷を越えたかと思えば、県道沿いに建った家々の間を軽トラックが走り去る。
保線状況はJRのそれと比べるべくもなく、車体は揺れに揺れ、木々の枝がしたたかに車体を打つ音が聴こえる。
山間部のアップダウンを心地よく楽しむこと20分ほど。列車は終点の大多喜駅にたどり着いた。

大多喜駅には鉄道ファンがそれぞれにカメラを構え、ウロウロしながらディーゼルカーの入れ替えを眺めている。
あまりに牧歌的で夢のような景色に呆然としながら駅前のよろず屋(スーパーではない)でビールを買い、
それを啜りながら車庫からはみ出た国鉄型のディーゼルカーの妻面を味わう。
こんなに楽しいことがあるだろうか、という楽しさ。鉄道が好きじゃなくても絶対に懐かしさを覚える謎の空間。最高だ。
我々は言葉もなくビールを片手に駅のあちらからこちらへと何度も何度も往復し、たまに鳴る汽笛に驚いたりした。

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日本酒とせんべいを入手した我々はさらに西を目指し、上総中野行きの車両に乗り込んだ。
(Suicaとクレジットカードにまみれた暮らしをしていた我々の財布の中身は残り数十円だったことも付け加えておこう)
樽生の原酒をやりながらせんべいをパクつき、車窓にいちいち驚いていると上総中野にはあっという間に到着した。
ここで房総横断鉄道の西半分を担当する小湊鉄道線に乗り換える。

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大原の漁港で昼飯を食った以外は寄り道することなく、最短乗り継ぎで来たはずなのに時刻はすでに16時30分。
小湊鉄道線の保線状況はいすみ鉄道よりもさらに悪く、上下左右に激しく揺れる車体はギイギイといまにも分解しそうな音を立てる。
養老渓谷駅で大量の年配ハイカー(総じてマナーが悪い)が乗り込んでくると、突如として乗車率が跳ね上がる。
あたりは既に真っ暗で、それぞれの駅を彩るLEDのイルミネーションだけがギラギラと極彩色を放っていた。
ハイキングの疲れから押し黙る老人たち。暗い蛍光灯がポツポツと設置された車内。真っ暗の車窓。満艦飾の駅。
もはやそれは千葉でも日本でもなく、あの世とこの世の境目を走る妖怪列車のようだった。

前日からの酒といすみ鉄道で飲んだ日本酒、そして生ぬるい暖房の風に睡魔に襲われた我々はクロスシートで熟睡していた。
そして目を覚ませばそこは終点、五井駅だった。
ボロボロのディーゼルカーから這い出すと、向かいには銀色に輝く総武線快速が停まっている。
夢と現が対向のホームに共存している。あれほど不思議な景色はここ最近見た記憶がない。

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五井駅の前には渋谷やら上野やらで散々お世話になっているピザレストランのCONAが居を構えており、
そこで何杯か酒を追加しながら我々は今日起きたことをまとめようとしたが、それは霧のように朧でつかみどころがない。
我々が総武線快速に乗ると、東京へはたった1時間足らずでたどり着くのだった。

我々の住む街からさして遠くないところに、我々の想像する交通網とは少しだけ違う、テレビで見たような、映画で見たような、そういう鉄道が走っている。
赤字と黒字の狭間で、鉄道ファンの夢を乗せて頑張っている人達がいる。
(Google Mapsでルート検索をかけても、迂回したJRのほうが明らかに早いのでサジェストすらされない鉄道がこの世にはあるのだ!)

木々の間に鈍く光る2本のレール。唐突に現れる目も眩むような深い渓谷に架けられた名もない橋。
線路際に建つおんぼろ木造家屋の縁側から車窓に向かってにこやかに手を振る老婆。
ファンタジーではない、しかしどこまでもファンタジーのような、とてもとても不思議な景色は当分忘れられないだろう。

<追記>
ちなみにいすみ鉄道は社長公募システムによって
パシナ前面展望シリーズを立ち上げた鉄オタ会社員が社長を務めていたり
その社長が途中の駅のホームで朗らかに手を振ってたり
車内で伊勢海老料理のフルコースが楽しめる伊勢海老急行が走っていたり
いまならなんと房総横断鉄道2線が乗り降り自由な1700円のチケットが発行されていたり
さらにそのチケットには680円分のおみやげクーポンが付いてて結構かわいいおみやげが買えたり
実質1020円であんたら何やってるんですか大丈夫ですかとこっちが不安になるので
みんな乗ってあげよう。頑張れいすみ鉄道&小湊鉄道。
by kala-pattar | 2015-12-08 23:31 | 鉄分 | Comments(0)
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