【書評】イラン空軍のF-14トムキャット飛行隊

はい、買いましょう。
イラン空軍のF-14トムキャット飛行隊

F-14トムキャットの関連書籍の多くはアメリカ海軍所属機を取り上げたものばかりで、
イラン帝国空軍とその後身であるイラン・イスラーム共和国空軍が運用するF-14について書かれたものはこれまでありませんでした。
本書はこれまでに定説となっていたイランのF-14についての伝説や憶測を覆す、ほかに類を見ないもの。
どのようにトムキャットを導入し、イラン・イラク戦争においてどのような活躍を見せたのかを貴重写真90枚以上、カラー塗装図20点以上という素材で紹介します。

(大日本絵画ウェブサイトより)

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F-14トムキャットはアメリカ海軍が艦隊を護衛するために作った艦載機であり、
フェニックスミサイルというマッハ5で飛ぶスーパー兵器を唯一搭載可能な戦闘機である。
というのはみんな知ってると思うけど、その超兵器をアメリカ以外で運用する国があった。
イランである。

本書はページをめくるごとに「嘘でしょ……」と思わず呟いてしまう、イラン空軍のF-14トムキャットの真実に迫ったもの。
ソ連の脅威に対抗すべくアメリカの戦闘機メーカーに接近したパーレビ国王がなぜF-14を手に入れたのか
そしてそのF-14はいかにして運用されていたのかというのは謎に包まれており
通説として(ざっくり言うと)「イラン人にトムキャットなんか使えないだろ」というのが世界中の認識であった。

しかし、である。
彼らはひどく合理的な理由でF-14を入手し、反アメリカ運動でもあった革命後も必死でそれを運用していた。
というか、現役で飛ばしているのである(本国アメリカでは全機が退役済みだ)。

そう、我々は「知らないから」という理由だけでイラン空軍をなめていたのだ。
本書に記載されていることが100%真実かどうかははっきり言って不明である。
とはいえ写真や戦果については「どうやらホントウらしい」という部分がめちゃくちゃ多く、
それを信頼するだけでも「Wikipediaに書いてあることの大半はデタラメ」ということになってしまう。
(なにせイランにトムキャットが配備された1977年といえばいまからおよそ40年前。
1981年が真珠湾攻撃から40年だと考えればこの本の記述についても我が国の零戦神話の如く伝説化しているところがあるのかもしれない。)

東西冷戦があり、第三世界の勃興があり、革命と戦争のなかで数奇な運命をたどる戦闘機。
戦後史の真髄がここに詰め込まれている。ページをめくるたび手が震えるような感動。
知られざる中東のリアル「エリア88」のような展開に胸が熱くなる。まるでマンガや映画のようなドラマ。

「イランからイラクに亡命したトムキャットをアメリカ人スパイが秘密裏にサウジに持ってって爆破した」(横にはイラクで朽ち果てたファントムの写真が添えてある)
「レーダーがぶっ壊れたと思ったら尾翼が真っ赤かで国籍不明のミラージュ2000が現れたと主張するパイロットが精神異常の烙印を押された」
「後の調査でじつはエジプト軍がミラージュ5SDEの国籍マークを塗りつぶした最強部隊を編成していたことが判明している」
「空中給油機としてKC-707とKC-747(そんなもん今知ったわ)を運用していたイラン空軍だったが、彼らはそれを単に『レストラン』と呼んでいた」
「革命後に何者かがフェニックスミサイルを破壊した(当然CIAだよな……)けど基地の地下には即応状態のフェニックスミサイルを隠してあったのでその後も運用が可能であった」
などなど、もはやガンダムよりガンダムな記述のオンパレード。ロボットアニメのシナリオも真っ青である。

「イラン人がトムキャットなどという世界最強のハイテク戦闘機をアメリカ人と同等に扱えるわけ無いでしょ」という世界中の人々の偏見と
米政府の「ハイテク戦闘機を売っちゃいましたけど革命で国がグダグダですし、まああいつらには使いこなせませんから」という国民に対する欺瞞が合致したことで
イラン空軍のトムキャットについては偏見や妄想だけで語られてきただけに
戦闘機オタクでなくとも戦後の中東で何が起きていたのかを知るためにぜひとも読んでほしい。

願わくば、文庫判でもほしいなぁ、という感じであります。
イラン空軍のF-14トムキャット飛行隊 (オスプレイエアコンバットシリーズスペシャルエディション)



by kala-pattar | 2016-05-07 18:56 | Movie&Books | Comments(0)
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