話題の「盆栽のプラモデル」を組んで、我々の住む宇宙の深淵を覗いた話。

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何はともあれ、盆栽のプラモデルである。盆栽を1/12スケールに縮めて、パーツに分解し、箱詰めしてあるのを、自分で組み立てるのだ。
プラッツ社の新製品、1/12 ザ・盆栽 壱 プラモデル BON-01はプラモ史上に残る「なんでだよ性」の高いアイテムである。
たまたまサンプルを手に入れる機会があったので、もったいぶらずに皆さんにこの「良さ」を伝えたいと思う。

もし誰かに「盆栽、いりますか?」と言われてもおいそれと貰うわけにはいかないだろう。手間もヒマもかかる。日当たりの良いスペースを確保しなければいけない。
しかし「盆栽のプラモデル、いりますか?」と言われたら、「いる」だろう。なんせプラモデルだ。プラモデルにはそういう魅力がある。
牛でも、おでん屋でも、宇宙人でも、プラモデルになっていると「ほしい」と思うのが人間なのである。理由はよくわからない。
小さくなって、パーツという単位に分解されて、ランナーという枝についているだけで、なんだか嬉しい。プラモデルとはそういうフォーマットである。
そこに、たまたま盆栽が訪れただけだ。世界の森羅万象をプラスチックに置き換えてバラバラにしていく人類の営みと、「盆栽」というモチーフが衝突したのだ。




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▲ハコを開けるとパーツが並んでいる、というのがプラモデルのいちばんプラモデルらしい姿である。だって、作ったら「盆栽の完成品」になっちゃうし。


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▲この「食品トレーに入ったプラモデル」というのは新しい。パーツや葉っぱ(どうやってくっついてんの!?)がハコの中で散乱しないようガードしてくれている。


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▲盆栽は時として「小さな宇宙」と呼ばれる。宇宙が分解され、ランナーにくっついている。こんな概念的なプラモデル他にあっただろうか!なんか感動します。


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▲ランナーと呼ばれるプラモの枝に文字通り「良い枝ぶり」がくっついている。枝の首脳会議である。


商品説明を読むと
「葉の部分は予め制作済みでスケール感のある針葉が植え込まれているプラッツ独自の技術『スポット植葉技術』により
生き生きとした表情を見せる葉の部分は精密かつ本物のような質感・雰囲気をリアルに再現しております。」
と書いてあるのだが、なんだろうか。接着剤なのだろうか。もっとハイテクなのだろうか。全然分からんが、とりあえず葉っぱが生えている。まぎれもなく、松だ。

組み立てにはニッパーと接着剤が必要だ。手モギだと枝を壊してしまうおそれがある。なにより、盆栽を乱雑に扱ってはならんという自戒が働く。
特に難しいところはないが、ピンセットなどをわざわざ取り出し、おずおずと組み立てると、なんだか格式の高いことをしている気分になる。


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▲組立説明は注意書きを除き、文字を使わずすべてイラストで描かれている。グローバルなマーケットを意識してるのかしら。器用な女の子です。


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▲土台と盆(鉢と言えば良いのか?)は切り離し済みで同梱されている。これも含めてパーツは全部で7つ。少ないからと言って、がっかりすることはない。めちゃくちゃ楽しい。


組み立てはあっという間に終わるが、やはりこれはプラモデル。「自分の盆栽」にするために何かしら手を加えたいところ。
しかし「マジメにプラモデル用塗料を出して塗装表現する」というのはちょっと違う気がしたので、このプラモデルの軽さにふさわしいアイテムを使ってみた。


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タミヤのウェザリングマスターから白とウグイス色をチョイスし、完成見本写真を参考にしつつ枝に塗りつける。凹んだところにはスミ入れ塗料を流し、陰影を強調した。


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▲そして出来上がったのがこちらである。1/12というのはだいたいこういう大きさで、なんとなく窓際に並べてもいいかもしれない。もちろんドールハウスにも合うサイズだ。


枝ぶりは誂えたように(誂えてもらっているから当たり前なのだが)美しい。少し不揃いな葉は説明書を読むと「小さなハサミで剪定する」というのが推奨されている。
あいにく細かくコントロールできるハサミが手元にないので、近々ちょっと良いハサミを手に入れるのもいいな、と思った。
しかしまあ、数十分で「オリジナルな何か」を作ることができるのはとても楽しい。目の前には小さくてかわいい盆栽が現れる。とてもいい。

「盆栽のプラモを作って、それからどうするの?」というのは愚問である。
プラモデルなんてそもそも「で、どうするの?」というオモチャである。組み立てている間は面白いが、完成したらしまっておくか人に見せるくらいしかやることがない。
つまり、「俺が欲しいと思って買い、俺の手で組み立て、俺のものにする」という過程が楽しいのである。他人にとやかく言われる筋合いなんてどこにもないのだ。
盆栽というのは自然の力や美しさを鉢の上でコントロールし、大きなモチーフの相似形を小さなスペースに現出させる遊びである。
そもそも似たようなコンセプトである「プラモデル」という商品形態と相性がいいのかもしれない。

「どうしてコレがプラモデルに?」というアイテムが出ると、世間的にはどうしてもキワモノ扱いする風潮がある。
そもそもプラモデルなんて遊びがフツーじゃないのだ。このアイテムにもシリーズナンバーとして大真面目に「BON-01」と書いてあるから、次回作がきっとあるのだ。
貪欲に、なんでもプラモデルになってもらいたいと願う。そして僕らは、プラモデルと聞いたら我慢できず、貪欲に組み続ける。
それが僕らにとって、この宇宙を観測するひとつの手段なのだから。





by kala-pattar | 2016-10-08 17:49 | プラモデル | Comments(0)
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