「スナップフィットは初心者向け」と思っている人に教えたい、MENGモデルの新製品。

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MENG model 1/48 ノースアメリカン P-51D マスタング


2011年の創業から戦車模型を中心に快進撃を続ける香港の新興プラモデルメーカー、MENG model(モンモデル)が突然発売したP-51Dマスタング。
どうしてこの誰もが知っている米空軍の超傑作戦闘機を、いまさら、ライバルのいっぱいいる1/48で作らなきゃいけなかったんでしょうか。
しかも、(創業当時、数点のキワモノ飛行機を発売したものの)陸モノ一辺倒だったMENGが何故?

そう思ってました。正直。

そしたら「スナップフィット」(=接着剤無しでガンプラみたいにパチパチ組める)だというじゃないですか。
そうなると俄然気になるんですね。スケールモデルがスナップフィットで組める、って、それだけですっごく気になる。
なんだか簡単に組めそうだし、テロテローっと塗ってピシパシ嵌めれば完成しちゃうんでしょ?みたいなナメた気分になります。





観念的な話はさておき、ランナーでレビューです。


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▲機銃を縦に抜いてますが砲口の表現は微妙ですね……。増槽のモデリングはなかなか実感あふれるもの。何よりどのパーツもゲートの位置が良いですね。切った後に処理しやすい。


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▲コンソールパネルのディテールは緻密で彫りも深く、(デカールが付属していますが)思わず塗り分けたくなる出来。タイヤはホイールが別パーツでトレッドの表現もくっきりです。


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▲コクピットフロアです。ここまで接写してもヨレないのはいいですね。CADで設計してCAMで彫って、ビシーッとディテールが出ているのが実力ってもんです。


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▲こんなに細かいパーツも彫れますし


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▲こんな深いパーツにもディテールくっきり(脚収納庫ですね)


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▲主翼下面は左右一体というまあフツウのパーツ分割で(とはいえパネルラインとリベット、ファスナーのメリハリが濃いめで超いいです)


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▲主翼上面は左右割り。ガンパネルあたりの密度を見ると「ちょっとリベットくどすぎ?」という感じもしますが、塗るといい感じなんですよだいたい。


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▲フラップは下げ位置で固定されるようです。主翼で上下から挟み込む構造ですね


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▲みんな大好きスライド金型。エンジンカウルなど機体中央に来るパーツが並びます。ランナーの外側と、中央に開いた大穴から金型が斜めにスライドしてくる構造と思われ。
合せ目消さなくてOKで、サイドにもリベットが入るという親切仕様。パーツ番号が側面に彫られているの、これ見よがしで最高じゃないですか。


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▲排気管にもスライド金型を奢り、それぞれ開口してます。焼け色で塗ってから穴のところにスミを流せば立体的になりそうです。


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▲胴体も濃い目のディテールですね。飛行機プラモの宿命、正中線の合せ目を消さなきゃいけないところは垂直尾翼のみ!


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▲内側はご覧の通り。このダボがスナップフィットの証です。コクピット内壁のディテールもすっげえ立体的!


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▲このプラモデルの白眉と言える「主翼前縁からノーズ下面が一体化したパネル」です。左右からスライド型でスジ彫りもリベットもバッチリ!(左にホイールが見えますね)


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▲風防や照準器のクリアーパーツは透明度もまずまず。


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▲キャノピーはイングルウッド製のものとダラス製のもので異なる形状を再現してます。もちろんバブル形状を再現するためにスライド金型を採用。


さて、ここまでなら「おー、組みやすそう!」という感じで、塗る前にまず仮組みしてみたくなります。
塗ってから組むか、組んでから塗るかを考える上でも、ね。






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▲ダボは丸。小さいピンは十字型で、その側面の斜度と厚みを金型上でコントロールすることで嵌合の渋みを調整しているようです。


最初の数パーツは「お、いい感じ!」だったのですが、やはりスナップフィット初挑戦のMENGモデル。
板状の嵌合やパイプを使った嵌合、パーツそのものの弾性を利用した嵌合などをそれぞれの場所で使い分けているのですが、
やっぱりギシギシしてうまく位置が決まらなかったり、渋みが足りずにスポッとパーツが脱落してしまう箇所も散見されます。
接着すりゃ当然組めますが、
そうするとスナップフィットの弾力(反発しようとする力)が邪魔になったり、そもそも「スナップフィットの良さ」が失われてしまったりします。


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▲とりあえず飛行機っぽいカタチになるパーツをガガッと組んでみたのですが、そこかしこがフガフガしている様子が見て取れます。


プラモデルの心得がある人ならばすぐに「どこが組み立ての邪魔をしているか」がすぐ分かるはずなので
不要なダボを切ったり接着剤を適宜流し込んだりしてガンガン組み立てられると思いますが、
ガンプラのノリで「全パーツ整形して塗装してからはめ込んで完成させるぞ!」とやるとおそらく隙間がいっぱいできてしまうと思います。

「スナップフィット」という言葉にはどこか甘美な響きがあります。
接着剤を使うということに抵抗のある人にとっては「お、簡単そう」なのかもしれませんが、それはイコール「初心者向け」ではないのです。
メーカーにとっても経験値が必要な設計/製造手法でありますし、
作る側にとっても、貼って成形すれば簡単なところもわざわざ分割されていたり、隙間が出来ないよう調整しなければいけなかったりします。

スナップフィットというものを当たり前に運用しているバンダイのすごさが際立つとともに、
MENGモデルのチャレンジが少しばかり空回りした印象もある本作。
残念ながら、いわゆる飛行機モデル初体験なビギナーモデラーには正直おすすめしづらいものになっています。

とはいえ、マスタングという超メジャー機の1/48モデルがこのパーツ分割で、このディテール再現で新発売されたことは素直に喜ぶべきでしょう。
スナップフィットだから嬉しいところと、スナップフィットだとちょっと困るところが混在しているのも含め、
モデラーのスキルでちょっとだけ歩み寄ってあげながら、愛情込めて完成させてあげましょう。

何にせよ、「異なる組み味の、異なるプラモデル」が発売されることは嬉しいことです。
これからもMENGモデルが新たなユーザーを獲得するためにどんなチャレンジをするのか注視しつつ、
みなさんも「スナップフィット」というのがどれだけハイレベルな技術なのか、それとどう付き合うか考えながら組んでみてください。
かな〜り、示唆深いです。「お、組んでみよう」と思わせるファクターは「仕様」じゃなくて「言葉」なのかも、と思いませんか?
そう、我々が買っているのは「よく出来たプラモデル」ではなく、なんだか組めそうだという「呪い」なのです。

追記/識者より「年少者向けスナップフィットのデフォルメ飛行機モデルとして"モンキッズ"というシリーズがあるやん」というツッコミが入りました。
そのとおりですのでここに記載しておきます。あれ組んだことないんだけどどんなもんなんだろ。後日試してみます。





by kala-pattar | 2016-11-22 00:54 | プラモデル | Comments(0)