悪夢のように美しい女たちのプラモデル。キミは「Kingdom Death」を知っているか。

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はいみなさん、これはなんでしょうか。箱ですね。
なんの箱かと申しますと、例によってプラモデルなのです。ここで1機が死にます。
こんな洒落散らかしたプラモデルの箱を、君は見たことがあるか。
表参道や銀座で売ってても恥ずかしくありません。ビビります。




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正確に言うとこれはプラモデルではなく、アメリカのAdam Pootsという人が作ったインディペンデントゲーム「Kingdom Death」のコマです。
日本ではめっきり廃れてしまいましたが、欧米ではいまだにミニチュアゲームというジャンルがあり、
ミニチュアという実体にスペックを当てはめて、ボードの上でルールに則って戦略性のあるゲームをする、という文化があります。
ここで2機目が死にます。なんだよ、Kingdom Deathって。かっこよすぎるだろ名前。

だいたいですね、インディペンデントのボードゲームのコマを金型彫ってプラモデルという形態で売ってるんですよ。
赤字だったら人間食っていけませんので、ここに市場があるということがわかります。地球は果てしなく広い。


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箱を開けますと、中身がこれだけなのです。3機目が死にました。マリオならここで終わりです。
説明書などという古びた概念はなく、気合でやっていけというメッセージが美しくもエロティックなイラスト一枚で伝わってきます。
というか、このイラストが本体ですね。そして紐パンのカードやチップ(これは台座になる)の宝物感が異常です。助けてください。


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▲ねえ、見てください。このローブに一体成型された顔を。


プラモを嗜む人ならば、ランナーの太さからその大きさが類推できると思います。
いったいどうやって設計し、彫刻しているのでしょうか。正直言って、意味がわかりません。
プラモデルのカタチをしているのに、プラモデルの常識がそこにはないのです。
理論上飛べない昆虫が、飛べないことを知らないから飛んでいる、という挿話を思い出します。


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▲尻彫られて、山河あり。


何度も言いますが、プラモデルの常識の彼方に、この曲面があります。スライド金型などというちゃちなトリックはなしです。
上下で割った金型に、この肉を込める。尋常じゃない執念と圧倒的センスです。一生眺めていたい。組んだらこのショーが終わってしまう。



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▲ちなみにこれは「Pinup Order Knight」というコマです。ブラックフライデーのセールで購入したのですが、12.5ドルでした。



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▲こちらは「Black Friday Ninja」です。25ドルしました。相変わらず、中身がクールすぎます。これで完結してます。世界観とランナーの、幸福なマリアージュ。
細部を見ていきましょう。



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▲わずか数センチの胴体に、へそがあり、複雑に分割された脚と、なびく髪の毛がそこに並んでいます。人はどこから来て、どこへ行くのか。私は、いつかプラモデルになりたい。


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▲胴体を裏返せば、尻があります。これは自然の摂理です。


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▲膝当てに彫られた能面もまた、和のテイストです。「中二力(ちゅうにりょく)」が極限まで高いデザインなのに、彫刻の力で恥ずかしさをねじ伏せています。


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▲全体像を見て、あなたは驚く。こんなにも小さいランナーに様々なパーツが配置され、一体どうやって成形しているのか想像できません。技術ではなく、根性論です。


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▲顔パーツは正しくフィギュア的な文脈において「かわいい」という造形。ミニチュアゲーム界の人々はこんなものに触れているのか……。信じられんぞ……。


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▲刺激が強いので小さめにしておきますね


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▲こちらは「Pinup Wet Nurse」です。12.5ドルでした。濡れたナース服と放り出した乳房を、プラモデルにする心意気……。


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▲パーツはわずかにこれだけ。分割は巧みで、パーツの合いもかなり良いです。組んだらこのショーは終わってしまうが、組まなければ出来はわからない。プラモの恐ろしいところです。


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▲助けてくれ!この手首のバングルはどうやって脱型しているんだ!もうだめだ!常識の外側に存在するプラモデルだ!!(錯乱中)


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▲いてもたってもいられず、組んで塗りました。1/48くらいのスケールですね……。顔を可愛く描くのは顕微鏡でも持ってこないと厳しいです。


……ということで、めくるめくKingdom Deathの世界をご紹介したわけですが、いかがだったでしょうか。
ミニチュアゲームの文脈において異常進化した造形が、プラモデルのカタチをしていながらまったく違う常識の上に成立している。
「ランナーにくっついたパーツ」なのに、説明書もなければ、塗装指示もない。あなたのイマジネーションが、試されているのです。
組んで塗ったら、恐ろしい精度の技を持った職人でもない限り、製品状態よりも、同梱のカードよりも、汚い物体になってしまう。
プラスチックのパーツと、カードに、全てが詰まっていて、そこから先は悪夢なのです。もう、自分が何を求めていたのか、混乱します。

欲しくなったでしょ。見たくなったでしょ。そして、組まずに飾っておきたいでしょ。
分割され、金型に押し込められた、悪夢のような美女たちを。(クリーチャー系もあるよ)






Commented at 2016-12-27 10:45 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kala-pattar at 2016-12-27 11:52
TVゲーム全盛期以前にはミニチュアゲームの専門誌が展開され、
(それこそインターネットのない時代のことなので正確には計測できませんが)数多くのコンテンツがミニチュアゲーム化されていましたし、
模型店で普通にメタル製のフィギュアが売られているのを見ていました。

しかし、80〜90年代においては決して隆盛とは言えず、現在まで連綿と続く欧米のミニチュアゲーム文化、層の厚みに比して
日本での市場はシュリンクしていたと言えるのではないでしょうか。

ウォーハンマーやD&Dといったゲームが正規の代理店を経由いて日本で展開されたのは2000年代に入ってから、と記憶しております。

現在では専門店やSNSでの発信を通じてようやく「文化として広がりを見せるための基盤」が整ったところだと感じるようになり、実際に自分もその世界を覗くに至った次第です。

決して日本におけるミニチュアゲームカルチャーを腐すものではなく、リスペクトをもって今後も接していくつもりですのでご笑覧いただければ幸いです。
もちろん、GWSの製品もストックしておりますので(今後記事も書きたいところです)ぜひ再訪いただければ。
by kala-pattar | 2016-12-25 18:23 |  →SPRUE CRAZY | Comments(2)