プラモデル界の芥川賞、エブロのモバイルキッチンが最高傑作である話。

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▲茶色のランナーに彫りたされた、クロワッサンやベーグル、バゲットの数々にむせび泣きます。


「初めてパリに行くのなら、夕方に到着するのもひとつの方法である。
ホテルの部屋から外を眺めると、印象派の画家たちが好んで描いたような昼間の青い空はすでに消えて、薄墨色の夕暮れが街をおおっている。」

プラモデルの側面に書かれた内容物の説明がこんな書き出しだったら、あなたはうろたえると思います。
かく言う私も大いにうろたえました。読んだ端から、うわあああとため息が出てしまった。
改行も段落も無視して、ありえないほど小さな字で、行間もツメツメで書かれたそれは、プラモデルの説明ではなく、もはや随筆です。
恐ろしく詩的で、いままで見たどんなプラモデルよりも「手にとってみたい」と思わせるテキスト。

読み返してみたら、そのときも私は箱に書かれた能書きを褒めちぎっていたけど、今回はもうそんな生易しいものではありません。
この文章を読んで、ハコを開けて、そこに彫刻されたモバイルキッチンを再現するためのパーツの数々を眺めるだけで、幸せになれる。
だって、最初の2行のその続きを、あなたも読んでみたいでしょう?




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▲これはノーマルのアッシュを去年のハロウィンに組んだもの。フィギュアや周りのアイテムは別売りのものを使いました。


そう、アッシュといえばやっぱり移動販売車であって、セイコーマートのデカールを貼ったのも、これを開けばホットシェフを振る舞うクルマになるという妄想から。
ホビーショーのエブロブースで展示されていたキッチン仕様のアッシュを見て、これが発売されたらどれだけ幸せだろう、と思っていたら、発売されてしまったのです。


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▲左は道端で遭遇したモバイルキッチン仕様のアッシュ。右はホビーショーで撮影したプラモデルのサンプルです。色までバッチリよ……。


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▲木目の入った木の板が外側にバタンと開けばそこがテーブルになり……


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▲もちろん車内にはレジスターやバリスタマシン、ガスコンロやオーブントースターが据え付けられ……


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▲両手鍋やスキレットでは温かい何かが作られるのです。マグカップで美味しいコーヒーが飲めるんでしょう。


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▲ビールやコーラだって、もちろん販売しています。


誰だって、お金のことを気にしないで悠々自適にメシ屋でもやりながら諸国をプラプラしてみたいと思ったことがあるはず。
でもそんな夢は簡単に叶わない。でも、プラモデルならば、パリに瞬間移動してモバイルなカフェを開業することができるんです。
とにかく、模型屋さんに行ってこのプラモデルを見つけたら、ハコの横に書かれたテキストを読んでみてください。
おそらく次の瞬間、あなたはレジに並んで、何色のアッシュでパリに行こうか、どんなサンドイッチを作ろうか、妄想しているはずです。





by kala-pattar | 2017-06-17 19:16 |  →SPRUE CRAZY