キワモノMS、バーザムが暴くプラモの真実。月刊モデルグラフィックス最新号が必読です。

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バーザムというモビルスーツがあります。『機動戦士Zガンダム』に登場しながら、32年もの間プラモデルにならなかった、悲運の機体です。
先月、ついにHGUC バーザムとして1/144スケールのプラモデルが発売され、随分と話題になりました。

本日発売された月刊モデルグラフィックス8月号では、巻頭37ページを使ってこのプラモデルを特集しています。
巷の評判を見ていると、「モデグラがバカな特集をやっている」というのを賞賛半分、呆れ半分でもてはやしているようです。
私は今回、"からぱた"として「バーザムのプラモデルのなにが普通じゃないのか喋ってくれ」と言われたので喋っています。
2時間以上ぶっ通しで喋ってたのを廣田恵介氏が原稿にしてくれています。



先程「賞賛半分、呆れ半分」と書きましたが、それはバーザムというゲテモノMS(32年もプラモデルにならず、ネタ扱いされてきた)を
商業誌の巻頭特集で扱うということが蛮勇であるという感覚があるのでしょう。
しかし、本特集はガンプラ(というか、プラモデル)の歴史に残るべき内容となっているように感じました。

マイナーメカのプラモデルが発売されたことを、話題になっているからこそ特集する、という姿勢は何も不思議ではないはず。
ではその中身もゲテモノになるかといえば、決してそうではありません。

「バーザムのプラモが発売されました。なのでプロモデラーがそれを作りました」だけでは37ページの特集になりません。
親戚のいない天涯孤独のモチーフが、たったひとつのプラモデルになったという事象を掘り下げるため、
編集はモビルスーツの歴史そのものをデザインやプロダクトの観点からひもとき、さらに設計、製造に携わった人にインタビューしまくっています。

そうすることで、「バーザムというキャラが模型になるという表層の裏側には、
真っ当なオトナの思考や経済活動や産業といったものがドバーッと広がっている」ということが明らかになっていきます。
バーザム誕生からプラモ化まですべてが必然で、社会的な意味を持っているということが読み取れるわけです。
結果として「ガンプラとは何か?モチーフとプラモデルの関係とは何か?商売とは?みたいなところが浮き彫りになり、
ひいてはバーザムのみならず「ガンプラの現在」記録する稀有な資料として成立してしまっているのです。

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ひとつのモチーフがいつどうやってこの世に生まれ、それがどんなカタチで立体化され、なぜプラモデルにならないまま長い時が経過したのか。
そしていざプラモデルになる日はいかにして訪れ、そうと決まったら何をしなければいけなかったのか?

そこにはデザイナーの意思があり、演出家の意図があり、数々の駄玩具があり、設計ソフトや金型やパッケージデザインがあります。
そこまで狙ってやったのかどうか、本当のところは分かりません。
キワモノ、ゲテモノとしていじることが文脈として面白かったバーザムというモチーフで巻頭特集をやろうとしたら、
「キャラクターがプラモデルというプロダクトになってユーザーに届くまで」の普遍的な景色が見えてきてしまった、という逆説的な驚き。
これはもう、福野礼一郎氏の著作「クルマはかくして作られる」シリーズに匹敵する興奮と言っていいと思います。

私は"いかなるモチーフも平等に工業製品にしてしまうプラモデル"を平等に愛したいので、「こんなものがプラモデルにwww」という態度が好きではありません。
だからこそ、「バーザムがプラモデルになった」ということが「プラモデルのできるまで」にすり替わって、多くの人に読まれることが面白くて面白くて仕方ない。
とにもかくにも、衝撃的な特集だと思います。
バーザムに興味があってもなくても、「キャラクタービジネスやプラモデルにも社会性があって、そこには真っ当な思考しか介在しないのだ」ということを
この特集を読んで感じてもらいたいです。
おそらく「良いプラモデル」というのは、そういう意識とがっぷり四つに組み合うことでしか、生まれないのです。
ぜひ。







by kala-pattar | 2017-06-25 22:12 |  →SPRUE CRAZY