模型界の六角精児、コトブキヤのヘキサギアに思う「プラモの行方」

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▲はい、前回の忍者姉ちゃんが乗るメカを組み立てました。


コトブキヤのヘキサギアシリーズ、四足の犬猫的造形はあんまり心にグッと来なかったんですが、このカブトムシみたいなのは別。
全体のフォルムから飛行の挙動とか攻撃のイメージみたいなのが伝わってくるメカデザインってあんまりないよね。
ということで組みました、コトブキヤ ヘキサギア ブロックバスターです。
例によってランナーをしゃぶりながらあることないこと書きます。


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▲ランナー「ア」です。組み立てたら8割がた余りました。


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▲ランナー「イ」です。こちらもそこそこ余る。


完成後もプラモデルのランナーにパーツが余るのってビンボー症のワタクシからすると「えーっ!」という感じなのですが、
このヘキサギア、じつはパッケージのどこにも「プラモデル」とは書いてないんですね。
ヘキサギアの「ヘキサ」というのは「六角形」を指しているのでしょう。
全体の骨格的な組み立てはほとんどが六角形のジョイントと3mmの丸穴で接続する共通規格になっていて、まるでブロックトイのよう。
だからコトブキヤはこのジャンルを「キットブロック」と定義しているようです。
プラモデルのようでプラモデルでない、少しプラモな何か。


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▲ポリキャップも六角形。ランナータグ(上の出っ張り)まで六角形。徹底してます。


ここまでが多分どのヘキサギアにも入っている共通パーツなんでしょう。これとそのキットごとに設計されたパーツとミックスし、組み立てることで
それぞれのフォルムの骨格を作る。もちろん複数を組み合わせても、説明書を無視してオリジナルメカを作ってもいいですよ、という設計なんですね。
どうとでも組める、というのは結構やばくて、説明書見ていてもどの六角形にどの出っ張りを差し込めば良いのかが直感的にわからないし
Aというパーツの裏側からBというパーツをハメるところなどは、死角になるところが謎すぎて試行錯誤してしまいました。おじさんです。


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▲ここはたぶんブロックバスターに固有のパーツ。 メカメカしくてカッコイイんですが、なんというかこう、うまいこと余りパーツを流用できなかったのでしょうか。


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▲かと思えば竹割りみたいなパーツも混在していたり


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▲六角でも3mm径でもない穴が混在していて、規格とやりたいことのせめぎあいがどろどろに渦巻いています。


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▲このへんはもう、普通のキャラクタープラモ的なパーツですね。


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▲こういうのはメカの肝になるパーツなので、みんなが歓びます。


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▲ここまでのパーツはほとんどABS製で、色塗りたくなるパーツはPS(ポリスチレン)で成形されています。


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▲アパッチ野球軍


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▲なんというか全体的に同じランナーが2枚(倍取り)の構成が多く、見栄えのする造形をどう線対称で構成するかめちゃくちゃ苦心している様子が伝わってきます。


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▲ランナーにパーツが付いていない部分とかがあってビビるんですが


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▲ご丁寧に右下のパーツは工場で取り外されて塗装してくれていました。見栄えのするところは塗装しておいてあげよう、という配慮ですね。


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▲個人的にこのキャノピーの断面系がめちゃめちゃ放物線だったのが「うっ」という感じで、頂点がもっと潰れた円に近い構成だともっとカッコイイと思った。


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▲誤組みが大量に発生しながら行ったり来たり叫んだりしてようやく完成したブロックバスター。脚の関節の保持力が微妙。でも全体的にはカッコイイです。


ということで、カブトムシ見たさに組んでみたんですが、
「どうとでも組めるブロックトイ」というプレイバリューをプラモデルっぽい体裁で実現したために
「プラモデルとして一直線に完成形に到達するための組み立て」の気持ちよさがものすごい犠牲になっている気がしました。
ひとつのプロダクトにいろんな要素を詰め込もうとするとねじれが発生しますね……。

もちろんブロックトイとして遊ぼうとすれば2つめ、3つめのヘキサギアを買ってきて順列組み合わせを楽しむ、みたいなこともあるんでしょうけども
そういえば俺は「ある特定の形がどう分割されているのか」に異常なフェティシズムを感じる人間であって、
「どうとでも組み立てられる要素の集合体」みたいなものとは一線を置いているのだった……(だからレゴに手を出さないのです)ということを思い出しました。

あとこういう仕立ての商品は「いま手にしているパーツはなんなのか?」というのがボヤけまくる性質があり、
機能とか部位とかが不明瞭なパーツを組み立てる苦しみって(最近のガンプラにも顕著なんですが)あるよね〜という気持ちになったりして。
要は「俺、この製品のお客さんじゃなかった……」という印象が残るアレでしたが、
なるほどガンプラの順列組み合わせとかもロボットモデルのセンチネル的突き詰め方の対極として存在するし(ビルド〜とかはその範疇だよね)
それを楽しんでる人もいっぱいいるのね……という学びになったのでした。

「模型」とひとくちに言っても、自分の理想に向かってどんな素材にどう手を入れるか(素材はパテからレゴまであるわけだけど)という振れ幅はあるわけで
このヘキサギアとか近年のガンプラのあり方とかは
「スキルはないけど、ある程度具体的な形状を持ったパーツを組み合わせてオリジナリティを手に入れたい」というマイルドな造形趣味者たちと
これまでハードにプラモデル作ってきたメーカーがどう向き合うか、というトライアルなんじゃないかなーという、久々に腑に落ちる感を味わいましたです。
普段ノーマルなプラモデルを組んでいるみなさんもこれを一度組んだら、なんとなくこの不思議な感覚を味わえるかと思います。
鑑識課からは以上です。





by kala-pattar | 2017-10-21 12:42 |  →SPRUE CRAZY