【GNH】ゼロ年代終わりのブータンを旅行してきた。【その4】
2010年 01月 18日
僕らを1週間ガイドしてくれるKinley Tsheringというイケメンであった。
Etho Metho Tours and Treksという旅行会社に所属する27歳。つまり、同い年。
仕事の都合で来れなかったこの旅行の言い出しっぺの名前を書いたカードを持って
僕らが空港のなかでグウタラグウタラ遊んでいるのにじっと待っていたのだろう。
集合写真はあまり好きじゃないんだけど、とりあえず記念に撮ってもらう。
荷物を窓から後部座席に放り込み、バスで今日の宿泊先に移動する。
Kinleyに「君はヒロシというカードを持ってたけど、残念ながら僕らの中にヒロシはいない」という
ナゾの説明をするところからガイドとのコミュニケーションは始まった。
パロ空港から10分かそこら走ったところでバスが停まる。
農家。
どこからどう見ても、農家。
確かに旅程表に"FARM HOUSE"と書いてあったが、脳内で全く訳していなかった。
FARM HOUSEは農家だ。たしかに。
駆け付け一杯、ではないけれど、とりあえず居間に通されて、バター茶を出される。
チャイみたいな見た目で、甘くてあたたかくて旨そうなオーラを発している。
ブータン初味覚だけに期待感も満載で茶碗を手に取り、
口に……うぇええええっぷ。
失礼は承知で、正直に書こう。
バター茶は、マズかった。というより、臭かった。
泥水と油を塩で整えてお湯で死ぬほど薄めた感じ、と言えばいいのだろうか。
とにかく見た目と味のギャップがハンパじゃない。
ブータンのバター茶、個人的には「スープ」に分類したいシロモノであった。
ただし、もう飲んでいる端から「ハイカロリーさ」がビンビンに伝わってくるし、なにより暖かい。
これが寒くて高いところで行動する活力源になることはとてもよくわかる。
塩だって農作業やボッカには欠かせないだろう。
文化とか気候風土に根ざした生活の知恵がダイレクトに味になっているんだろう。
「この味覚がこれから7日続くのか……」と軽い目眩のようなものを感じつつ
おつまみ的に出された米菓子に手を伸ばす。
無味。
ポン菓子の味付けしていない版を固くしたようなものをモソモソと噛む。
この旅行、地雷だったのかもなぁ。なんでブータンに来たんだろうなぁ……。
噛むたびに味ではなく思考が広がるワンダフルな体験をしつつ、昼飯の用意が進む。
外は快晴。室内は寒く、そしてなによりひとつだけ気になっていたことがあった。
この国、禁煙国家って聞いたけど、オレは耐えられるだろうか……?
なにせバンコクを発ってから一本も煙草を吸っていない。
吸えなければ吸えないで問題はないのだけど、吸えるか吸えないかは知りたい。
で、答えはあっけなく出た。
ガイドのKinleyがヘビースモーカーだったのだ。
寒くて暗くてお葬式ムードの部屋から外に出て、
作業場として使われているであろうコンクリのテラスの上で思い切り煙を吸い込む。
灰皿なんかないから、畑にぶん投げておけ、と指示される。
ブータンは2004年に事実上世界初の禁煙国家になった。
プライベートスペースでを除いた空間での喫煙と煙草の製造販売は禁じられ
海外からの煙草持ち込みには100パーセントの関税を課すという決まりになったのだ。
ところがぎっちょん。
この旅を通じて、それはあくまでポーズなのだということを実感した。
田舎道では普通にブータンの人々も煙草を吸っているし、
レストランやクラブにも別室で煙草を吸えるスペースがある。
かれらがどうやって煙草を手に入れているのかは結局分からずじまいだったが、
首都ティンプーの路上で歩き煙草をしている若者もちらほら見かけた。
嫌煙家はブータンに何か期待のようなものを持っているみたいだけれど
(実際に、ブータンで禁煙しよう!みたいなアホな言説もあるらしい)
はっきり言ってニコチン中毒患者はそんなもんでは根絶できない、ということだ。
そうこうしているうちに、昼食が出来上がる。
あまりにテラスが心地よいので、ここで食べることはできないか? と提案すると
かわいい柄の絨毯がポコポコと敷かれ、あっという間にピクニック的空間が現れた。
先ほどのお葬式を思い出しつつ、メシをほおばる。
異様な旨さ。
機内食を食べられなかったからか? と一瞬思うが、
とにかく旨い。全員ガツガツ食べる。
噂には聞いていたが、唐辛子をチーズで煮たもの(エマダツィ)は見た目が強烈。
白いとろとろのチーズに青唐辛子のスライスがごろんごろん入っている。
確かに辛いのだが(これを打ちながらも思い出して目の下にじわっと汗をかくほど)、
なんともいえない旨さ。辛いと旨いが交互にやってきて、米がこれを加速する。
ブータン、いい国かも!
つづく
by kala-pattar
| 2010-01-18 20:29
| 行ってきた