【GNH】ゼロ年代終わりのブータンを旅行してきた。【その5】
2010年 01月 21日
ガイドのKinleyも僕らのことは急かさない。全員グータラ。


オヤツ時になってようやく出発。バスでパロ・ゾンへ。
「ゾン」というのは各県(=ゾンカクと呼ばれる行政区)にある巨大な建造物で、
17世紀にブータンを統一する為に立てた城であり、要塞であり、お寺であるという
まあ地方行政の要みたいなもの。デカくて奇麗。裁判とかもここでやるらしい。
チベット軍が攻めて来たときにいち早く見つけて反撃することも考えているので
だいたいちょっと高いところに建っていて、それがますます威圧感を増す。




カメラを構えてウロウロして、あまりに巨大な建築物なのでイカした構図を考えるのだが
どうにもサマにならないので、シンメトリーな構図を狙う。
ところが、どう構えても左右対称にならない。
東京に帰ってから画像をPhotoshopでいじっていてようやく理解した。
上の写真をよくよく見れば分かると思うけど、そもそも建物が左右対称じゃないのだ。
なんつーかこれは個人的にけっこう衝撃だった。
ブータンには建築物に制限があって、5階建て以上の建物が建てられない。
背の高い建物はワンフロアが大きく作られているか、装飾物で嵩を上げてるかのどっちか。
建物もそんなに多くないし、規格品で建ってるのはおそらく新興住宅地の団地だけ。
あとは全部ワンオフで、たぶん適当なんだろう。そもそも石と木と土で作っているので
重みでガンガン梁が曲がっている。まっすぐであるべきラインも横から見るとグニャグニャ。
そういえば他の建物の階段とかもピッチが一定じゃなくて、みんな転びまくってた。
ブータン人のなんとなく適当な感じが如実に見える事例だね。
このゾンのなかで気づかされたのは、チベット密教というのが仏教とかなり違うということ。
後期仏教の亜流みたいな感じで、基本的な仏教のスタイルを受け継ぎながらも
日本の仏教を想像しているとあらゆるシンボルがちょっとずつ違うのでかなり戸惑う。
ここらへんは『地球の歩き方』に詳しいのでここではあんまりちゃんと書かない。
ざっくりとした理解としては、生活宗教として機能させるために
きわめて分かりやすい世界観、無理しない世界観で仏教を再解釈して
絵解きで教えるための宗教になっている、という感じかしら……。
ホントはこの後に
タ・ゾンと呼ばれる望楼を博物館に改造したところにも行くはずだったのだが、
まあ昼飯とかでぐうたらしていたので、予定をすっ飛ばしてバスで国道を走る。
パロ・ゾンから北西へ走ること数十分、ドゥゲ・ゾンに到着。
ここで道路がぶった切れている。
チベット軍が攻めて来ないように、ここから北の道を埋めたのだ。
つまり、中国まで続いてる道をブータン自らここで断ったのである。すごい。

▲ここがチベット軍を発見し、撃退するための砦であるドゥゲ・ゾンの入り口。
ドゥゲ・ゾンも20世紀に火災で焼け落ち、廃墟になっている。
石積みのボロボロの砦で、パロの谷を一望できる。
ブータンの兵士がここから矢を放ち、攻めて来たチベット兵の血は川を真っ赤に染め、
恐れをなしたチベット兵は逃げ帰って行った、というエピソードを聞かされる。



それにしても五色旗が多い。至る所ではためいている。
縦長の白い布が長い竿にくくり付けられたものと、五色の布をひもにくくり付けたものがあり、
「ダルシン」とか「タルチョ」と呼ばれるそれらの布には経文が書かれている。
布のフチは切りっぱなしになっていて、風が吹けば端からほつれ、糸が飛んでいく。
経文に込められた健康や豊作への祈りとか、死者への祈りが糸になって、飛んでいく。
この観念はけっこうロマンチックで、見ているだけでも信仰心が生まれそうな感じ。

それにしても寒い。
こちらはダウンジャケットにマフラーで防寒だけど、Kinleyは昼も夜も民族衣装の「ゴ」を着たまま。
「寒くねーのか」と聞くまでもなく、ガチガチ震えている。
夜の冷え込みを気にしつつ、街へ戻って商店により、ビールを買う。

ビールは1本30Nuとかで、大ビンをワンケース(15本)買って1000円くらい。激安。
「DRUK11000」というアルコール8%のビールが一般的らしく、どこでも買える。
ファームハウスに戻り、晩飯。昼と大差ないメインのオカズと、
ヒュンテ(そば粉で作った皮に包まれた餃子状の食べ物)が振る舞われ、ビールをバカスカ飲む。
Kinleyも一緒に食事をとり、英語とゾンカ(ブータン語)のチャンポンで延々と会話が続く。


思ったよりも夜は冷え込まなかったけど、
それでもダウンジャケット着たままベッドで寝てた。
寒くて着たままなのか、酔ってて着たままなのかは覚えてない。ははは。
つづく
by kala-pattar
| 2010-01-21 06:21
| 行ってきた