【GNH】ゼロ年代終わりのブータンを旅行してきた。【その10】

大晦日の晩飯はソバでも出てくれば粋なのだが、
ホテルの晩飯は普通にカレーだった。

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▲まあ、ふつう。



時差3時間の日本が「あけましておめでとう」で盛り上がる頃、
Kinleyはランドローバーで僕らを迎えに来た。
飲酒運転上等。ビール飲み飲み、ティンプーを一望できる夜景スポットへ。

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▲めっちゃくちゃ奇麗。年越しまであと2時間くらいかな。



そして街に繰り出し、待ちに待った年越しパーティ。

そう、ティンプーにはクラブがあるのだ。クラブ。
果たしてどんな音楽がかかるのか!?
DJはどうやってやるのか!?
酒はなにが飲めるのか!?
かわいい姉ちゃんはいるのか!?
いろんなドキドキとともに、いざ「SPLASH」のNYEパーティーに潜入。

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▲セキュリティが超しっかりしていてビビる。入場料は500円くらいかな。



フロアは禁煙で、VIPルームみたいなところでタバコが吸える。
強面のにーちゃんがいるのでビビっていたが、話してみたら普通にいい奴。
前の駐車場でたむろしてるにーちゃんねーちゃんも全員いい奴。

ビールをガバガバ飲みながら踊りまくる。

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▲殺人光線みたいなレーザーが乱舞。日本だったら多分規格外。あり得ない。



マイケルのYou rock my worldのハウスmixがかかったり
Jay Seanの"Down"がヘビロテでかかったり、
レディガガやらBEPやら、とにかく最新のビルボードチャートでヒットした曲が
アホみたいにむちゃくちゃなつなぎ(ほぼブッコミ)でかかりまくる。
そりゃ楽しい。みんな歌ってるし。
日本のクラブみたいにナンパしている奴もいなくて、
なんか夫婦とか家族ぐるみで来ているクラバーが多数。謎。
そして話しかけると100%「俺の嫁だ!かわいいだろ!」(だいたいかわいくない)とか
「明日ウチに来い!パーティーすんぞ!」(おまえんちどこだよ……)とか言われる。
笑顔を顔に貼り付けたまま適当な英語で返すのだが、向こうは半分マジなので困惑する。

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▲まさかのフルスペック設備!てかヴァイナルかける環境がなくて、PCDJすら存在する!最先端じゃないか!



ちょっとチルアウト、と思って外に出ても、バカみたいに話しかけられる。
テンジンという若者は、やたらと自分のことを気に入ってくれたらしく
身につけていたリストバンドをむりやり僕に押し付けて来るし、
健康について延々説教してくれるし、電話番号をかってに押し付けて来るし
日本の金を見せろ!と言ってくるので「絶対盗む気だ!」と思いつつ
一万円札を渡したら(渡したのかよ)しげしげと眺めて
「イカす!」と言いながらすんなり返してきた。なんなんだ。

正直、この国のノーテンキさには恐れ入る。

あまりにノーテンキなので、こちらもガードがどんどん甘くなり……
記憶がない!!
なんせ自分の一眼レフで撮った写真に自分が写っているのだ。
あきらかにブータン人が撮っている写真。
でもカメラは自分の手元に返ってきている。なんなんだ。どこまで治安がいいのだ。

▲DJめっちゃいい奴!普通に機材とか音源について語らってくれるというブータン人的やさしさ爆発。



繰り返しになるけど、この国には乞食も居なければ(寒くて無理という説もある)
ボッタクリ商売もほとんどない。
みんな満ち足りた表情をしていて、他人に優しい。
でもこれは、国が豊かで信心深くて、税金が安くて教育水準が高いからなのだ。
観光客やそれを導くガイドは外貨を稼ぐための金蔓だ。だからやたらと親切にされる。

僕がブータンについての言説を見るときに
なんとなく嫌だなぁと思うことがある。
それは、「スローライフ」とか「ロハス」とかそういう言葉で
アホみたいに優しいブータン人を見る眼鏡が曇ってしまうことだ。

GNH、国民総幸福量というものはあくまでコンセプトであって
ブータン人は不足を感じず生きられる国で実際幸せに暮らしている。
位置エネルギーの高い国では、石油が湧くように電気が湧いてくる。
面積に対して人口は少なく、国内に流入する外国人は厳しく制限されている。
ほとんどの世帯が農家で、田んぼと畑と牛と鶏を持っている。

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▲ブータン人すごい適当。老若男女がクラブにいて、みんな超やさしい。やたら兄弟とか嫁を紹介したがる。



日本はどうがんばってもあんな国にはなれないだろう。
狭くて人がうじゃうじゃいて、資源はなくて、メシは外国頼みだ。
いっつもヒイヒイ言いながら働いてて、やることがたくさんありすぎる。

ブータンは暇だ。名所も旧跡も新宿も六本木もお台場もない。
そのかわり、生きるためのものがすべてある。豊富に。
そのコントロールに国がどれだけ神経を使っているか、それを知るべきだ。

満ち足りたテーマパークを経営し、ブータン国民はみな「キャスト」なのである。
僕ら「ゲスト」がいくら憧れても、
あの土壌とあの信心とあの気候とあの国王を手に入れられなければ
ブータン人のような暮らしなど望むべくもないのである。

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元旦。

朝。

二日酔いと筋肉痛にさいなまれながらずるずると起床し、
一足先に帰国の途に着くなっさん先輩を送り出す。

おぼろげな記憶をたぐり寄せる。
Kinleyは家族が居るにもかかわらず我々バカどもに付き合い、
27時の閉店時間まで踊りながら僕らを見守っていてくれた。
そしてレロレロに酔った僕らをランドローバーに乗せて、ホテルへ戻してくれた。

「テンジンって男がめっちゃいい奴だった!」
「うおー、年越しだしソバ喰いたい!ソバがダメならラーメン!」
「ラーメン喰いたい!」
「テンジン……博多天神喰いたい!」
「24時間営業のラーメン屋ないの!?」
「替え玉喰いたい!」

という世にも最低なオーダーを出し続けた僕らを怒るでも笑うでもなく、
呆れながら黙って運転するKinley。
何度も言うけど、こいつ同い年である。
俺がドライバーだったらブチ切れていただろう。

で、朝食を終えた僕らのもとに寝不足気味のKinleyがやってきた。

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▲2時間しか寝てないとか、マジごめん。酔っぱらってごめん。


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▲快晴。別に元旦らしさは皆無の人々。



そもそもブータンは旧暦でお寺と政治が動いているので、
グレゴリオ暦の正月には特別なにも起きない。お祭りとかもない。
一応ハッピーニューイヤーと言えば返してくれるけど、それだけ。

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▲午前中はゆるゆると過ごす。



つづく
by kala-pattar | 2010-01-31 14:11 | 行ってきた