【GNH】ゼロ年代終わりのブータンを旅行してきた。【EXTRA2】

豪奢でやかましくて刺激まみれの寺から離れると、少しは気分も良くなった。
ただもう暑くて疲れてて、何もしたくなかった。
カオサンに行くのもためらわれた。そのへんで寝てしまいたかった。

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▲船着き場裏にある小さな商店街みたいなところはいい雰囲気。



二日酔いかもしれないし、夏バテかもしれなかった。
どっちでもいいから冷たいものを呑んで、うまいものを食うべきだった。
仕方ないから、トゥクトゥクを捕まえてカオサンに向かった。
この頃にはこっちから妥当だと思われる金額を提示して乗れるくらいになってた。

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▲トゥクトゥク日本にもあればいいのに。こんな爽快な乗り物、あんまりないよ。


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▲バカに景色がきれいで、ますますひとりぼっち感が強まる。完全に病。


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▲カオサン通りの喧噪は僕と無関係だった。閉じこもって一人で呑みたかった。



適当な店に入って、一人で呑む酒はうまかった。
適当に濃い味のつまみを頼んで、延々呑んだ。
ブータンのことを反芻するでもなく、花を売りに来る女の子とか
クソでかいZippoもどきを売るおっさんとか、脚が片方ない人とか
そういう人がお金をとろうとして断られるのが目の前で何度も何度も繰り返されるのを見て
むしろそれに癒されるような感じがして、何も考えずに咀嚼と嚥下を繰り返してた。
僕はただのおセンチ野郎になっていた。

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▲野菜がうまいんだよね。ていうか肉もうまいよね。つーかメシうまいよね、タイ。



意味もなく三軒ハシゴした。
タバコをパカパカ吸いながら、シンハーとタイガーを呑んだ。
写真かなんかを見るように景色を見ていた。
誰からも話しかけられなかったし、誰にも話しかけなかった。

ただ、最後に目をつけた店に、「こいつとは確実に話ができる!」と思える男が座っていた。
理由はない。直感。
彼はスペイン人だった。名前は忘れた。
話が弾んだ。

ブータンはいい国だったということ。
自分は海外旅行が初めてだということ。
国王陛下がイケメンだったこと。
タイの熱気に気圧されているということ。

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スペイン人は僕にいろいろ話した。

新幹線がすげー速くてビビったこと。
ラブホテルがヤバいくらいイケてるってこと。
長野の善光寺が超クールだったってこと。

あれこれ1時間は話しただろうか。

最後に突然、
「恋しろよ。積極的になれ。恋しなきゃだめだ。」
と、説教された。
偶然だろうけど、本気でびっくりした。

僕はその説教を聞き終わったところでふと「ああ、東京に帰ろう」と思った。
スペイン人に別れを告げ、タクシーを拾って空港に向かった。

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飛行機に乗るためのちょうどいい時間、ちょうどいい間合いで空港に着いた。
Tシャツ一枚で飛行機に乗って、
「あ、失敗した。」
と思ったけど、もう遅かった。体も心も、風邪気味だった。

ただひたすら何も気にせず眠りこけて、上海の寒さに体の芯まで冷やされて、
そこから先はずっとブランケットにくるまったまま、東京が近づくのを感じていた。

東京は1月4日の夕方だった。
家で食べたかまぼこの味に、ようやく正月らしさを感じながら、
でもなんかブータンとタイにそれぞれいろいろ忘れ物をしたような感覚で
それがいつになったら解消されるのかは今もまだ分からない。

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by kala-pattar | 2010-01-31 20:06 | 行ってきた