写真撮るのが好きならインクジェットプリンターを買おう

「写真をプリントして見る」ということをしなくなったのはいつからだろうか。
昔はフイルムをDPEに出して、現像とプリントを楽しみに待って、サービス判を眺めるのがだれでも当たり前の体験だった。
デジタルカメラを買うようになって、撮った写真は背面モニターやPCの画面で眺めるものになった。
それもまた楽しいのだけれど、写真を画面で見るのと紙焼きで見るのは全く別種の体験だと思う。

画面の色や大きさ、ピクセルの粒、そして液晶のバックライト。
モニターで見る写真というのはこれらの要素によって構成された一時的なものだけど……云々。
フィジカル信仰(手に触れるものこそ至高!)みたいなものはあまりないんだけど、
紙の上に乗った色の粒子たちを反射光で見るというのはやっぱり楽しい。デカいプリントはめちゃめちゃ楽しい。

というわけで、いままで撮ってきた写真をどうにかしてプリントしたいなぁ、と思うようになって数ヶ月。
比較的良いプリンターがほしい。でも、何を買えばいいのか? どうやって選ぶのか?
ま、仕事の書類を印刷するだけならまあどんなプリンターでもいいんだろうけども、
自宅で、趣味で、道楽で、自分の愛する写真を自分で印刷したいということになってくると話は少々複雑になってくる。

選ぶときのパラメータはいくつかに分類されると思うが、おおまかに
「予算と画質と印刷可能な紙のサイズ」
ということになってくるだろう。

てなわけで、自分がどういう順番でプリンタを決めて購入に至ったのかを独断と偏見でツラツラと書く。
まず前提として、メーカーは写真プリントという用途で考えるとキヤノンとEPSONの二択になると思う。
その他メーカーについてはやはり設計もサプライもちょっと疑問が残る。

まず価格はピンキリなのだが、家庭用のインクジェットプリンターで一番ハイスペックなのはおそらくこのへん。
EPSON MAXART インクジェットプリンター PX-5002 A2・半切対応 K3インク搭載 8色顔料インク(実勢価格およそ14万円)
実機見たことないけど、これはもう巨大すぎるしおいそれ手を出せる価格じゃない。

続いてコレ。
Canon インクジェットプリンタ PIXUS PRO-1 A3ノビ対応 12色新 顔料インク 大容量インクタンクシステム 有線LAN対応(実勢価格およそ11万円)
「プリンターにそんな金払うの!? そこそこのレンズ買えるよ!?」と思うかもしれないけど、
少なくともキヤノンのPRO-1で出力したプリントを実際に目で見るとさすがに唸る。
とにかく黒が綺麗で、薄い色も綺麗で、クリアーでピシっとした画から、モヤッとした優しい画まで
信じられないくらい美しい。「これがあれば無敵!」と思える。
どっこい、A3ノビ対応で12色もインクを使うとなるとランニングコストも半端ないし、
そもそも巨大である(家のどこに置くのか悩むレベル)。
実際写真が趣味で、これがドッカリと部屋を専有されていても構わないという人なら迷わず買えば良い。

で、現実的なラインはどこになるか……という話なのだけど、
Canon インクジェットプリンタ PIXUS PRO-10(実勢価格およそ7万円)
Canon インクジェットプリンタ PIXUS PRO-100(実勢価格およそ4万5000円)
EPSON MAXART インクジェットプリンター PX-5V(実勢価格およそ8万円)
EPSON Colorio インクジェットプリンター PX-7V (いま在庫ないっぽい)

どうもEPSONはミドルクラスの写真用プリンターを刷新するつもりか整理するつもりか、現状あまり選択肢がない。
キヤノンはPROシリーズを松竹梅と用意してなかなか商売上手なのだが、
実際にプリントを比較してみると、きっちり1→10→100という順番に画質が落ちていく。
うーむ……と思いつつ、とりあえず写真をプリントするということに本気のモデルでありながら、
価格もこなれているPRO-100を買えるだけの現金を持ってヨドバシカメラに向かったのだった。

で、ヨドバシの店頭でいろいろと眺めてみたのだが、「写真をプリントすることに本気のモデル」はA3以上のサイズに対応したものしかないと言っていい。
デカいし、値段も張るのは先述したとおり。

そこで、今度はA4サイズまでをプリントできるプリンターをざっと眺める。
しかしそこはやっぱり「家庭用プリンターとしていかに便利であるか」をウリにしたモデルがズラリと並ぶばかり。
いくら廉価なモデルでも画質はいいと書いてあるし、スマホ連携やWi-Fi連携、簡単スキャンやコピー機能などを謳ったものがほとんどだ。
正直、写真を撮るのが趣味な人は撮った写真をSDカードからそのまま印刷するなんてことはまずしないだろうし、
自分も写真を現像して編集してギチギチに追い込んでから思い通りのプリントを出したいと思ってプリンターを探しているのである。

こればかりは自分で悩んでいてもしょうがないので、店員さんを捕まえて「A4プリンタで一番画質がいいのはどれですか?」とズバリ訊いてみた。
すると答えはコレだった。
Canon インクジェット複合機 PIXUS MG7130(実勢価格およそ1万6000円)

あまりに安くて拍子抜けしたのだが、結局A4モデルというのはそういう戦場なのだなぁと納得。
もういちどキヤノンのPRO-100の実機を前にプリントサンプルを眺める(プリンタに関してはキヤノンびいきだ)。
PRO-10のプリントサンプルと比べる。PRO-1のそれも比べる。
圧倒的にPRO-1の画質がいい。……ならもうPRO-1がほしい。
PRO-10を買ったらPRO-1にしておけばよかったと後悔しそうだし、PRO-100を買えばPRO-10にすればよかったと後悔するだろう。
PROシリーズを買うなら梅でも竹でもなく、松を買うしかない!という強迫観念。
ほしいけど、図体も値段もトゥーマッチに感じる。そもそもA3のような巨大なプリントを出すのだろうか。
でもA3のプリントとか見てみたい。自宅でA3、夢じゃん。

「A4サイズで一番いい画質のプリンタは分かった。じゃあスペック的に同じでそのままA3も出せるプリンターはないのか?」
というのがその次の思考である。
店員さんにそのまま訊く。
果たして、そのままのプリンターがあるのだった。忽那さん、あなたは女神か。

EPSON インクジェット複合機 Colorio EP-976A3(実勢価格およそ2万8000円)

店員さん曰く、プリンターとしてのキモであるヘッドの機構とかは先述したMG7130と同じで、
そのままちょっとだけ大きくして簡素な給紙機構(A3は手差しのみ対応)を内蔵することでA3に対応させたモデルだ、と。
TVCMでも「エイサーん!」とか「ちいサメ!」とか言ってるアレだ、と気づいたのはそのときであった。

「ときどきA3、ボディはちっちゃく」というあのコピーが脳内に響き渡りつつ、私は「これをください」と発していた。

写真に特化した機種に画質や操作性で劣るのは宿命だが、
予算と画質と印刷可能な紙のサイズのバランスをきちんと考えて作ったモデルとして現状これがベストだろう、と。
A3なんて用紙も高いしインクも食うし、ときどきエイさんでいいのである。複合機ってのもお得な感じがする。



まるでEPSONの回し者のようなエントリになっているが、別に金をもらっているわけではない。
というか、キヤノンがPROシリーズを拡充させるなか、EPSONがこういうニーズに応えているというのが面白いし、キヤノンに同等の機種はない。
大判プリントが楽しい/便利だということをアピールしつつ、価格相応の画質を提供するという製品は「なるほどー」と思わせるに足る。

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▲買ったぜ。

で、実際にプリントしてみてどうなのか。

ハッキリ言ってやっぱりこれは暴れ馬である。
紙送りの精度の低さ、フチなしプリントにおけるはみ出し量の制御の大雑把さ、用紙の種類に対するプロファイルの貧弱さ、
キャリブレーションまで行かなくとも、適当なテストプリントと画面の色のマッチングをやりたくても、自力で、肉眼でやらなければいけない。
付属のソフトもユーザーフレンドリーにしようと努力した末のユルーイものばかり。イチからすべてを厳密にコントロールすることはできない。
これを乗りこなすのは大変だ。

「ぶっちゃけPRO-1買っても良かったんじゃないか……」という心の声に「アーアー聴こえない!」と返しつつ、
1枚100円以上するA3の用紙をぶち込んで、お気に入りの写真をダーッと印刷する。

カ・イ・カ・ン……

プリント、めっちゃ楽しいです。
いやもうここまで書いたことは全部どうでもいいので、まずはL判(いわゆる街のDPE屋さんで頼むと出てくるあのサイズ)でもいいし、
ちょっと特別な写真はA4で出すだけでも「ギエー!」ってなるから、とにかく印刷してみようよ。
撮った写真をSDカードやHDDに閉じ込めておくだけじゃもったいないし、オンラインで友達に見せるだけじゃ味気ない。
ひとりでも、みんなでも、たくさんのプリントを前にムホムホするのも酒のつまみになります。
プリントを親とか彼女とかにもあげよう。喜ばれる。モテる。背が伸びる。安くてもいいからプリンターを買って背を伸ばそう。

伸びないけど。

そして私はいつかもっと高いプリンタを買うのでしょう(沼)。
by kala-pattar | 2014-01-12 11:49 | これほちい | Comments(0)