【超音速漫遊記 その5】マリアの見守る街

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ウユニの街からどうやって脱出するのか毎日議論していた。

パタゴニアに行くか、メンドーサに行くか、いっそブエノスアイレスに戻るか。
どこに行くにしても、果てしなく面倒な土地だった。
南米最貧国であるボリビアの航空路についてはGoogleに尋ねても明確な答えを得ることが出来ず、
どうやら国営航空は倒産したりトラブル続きだったり、とにかく健全な状態ではなさそうだった。
ウユニにも空港はあったが、そこから何時にどこ行きの便が運行されていて、運賃はいくらなのか調べるのは途中で諦めた。
何にせよボリビアの首都を目指し、鉄道に乗って北上することが気分として「正解」な気がしていた。

昼のうちに夜行列車のチケットを手配していた我々は定刻の深夜0時頃ウユニ駅へと向かったが
そこには列車が遅れる旨を書いた看板が置いてあった。
列車が来たのは結局朝の9時を回っていたように思う。

鉄道はアンデスの麓にあるオルロという街を北限に、そこから先は廃線となっている。
ひたすらウユニ塩原の東の縁を北上し、色とりどりの山に挟まれた広い渓谷を進む列車。
オルロに到着したのは昼下がりで、そこからバスでラ・パスに向かえば到着が深夜になることは明らかだった。

ラ・パス。

正確な名前は「ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・パス」。
ボリビアの首都は法律上スクレということになっているが、政治経済の中心、いわゆる事実上の首都である。
強盗や誘拐が毎日のように発生している、治安の悪い街であることは
さまざまなウェブサイトを読んで知ったつもりになっていた。

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深夜に危険な場所へと到着することを恐れた我々は、終点のオルロでしかたなく一泊することを決めた。
マトンステーキとトゥルーチャという白身魚のフライはウユニのシビアな食事情を忘れさせる味だったが
同行の二人は高山病と移動から来る疲労のせいか、なかなか食事に手を付けなかった。

人々で賑わうオルロの街を見つめるマリア像が山の上に建っていた。
昨年2月に建立したという白い姿はまだ新しく、そして驚くほど巨大だった。
夜通しライトアップされていて、大船観音を思わせるその佇まいがひたすら印象に残っている。



by kala-pattar | 2014-01-26 22:40 | 行ってきた