【超音速漫遊記 その12】川の向こうのワンナイトリゾート
2014年 05月 08日
感激していた。
憧れに憧れたインキャット社製のウェーブピアサーカタマランが目の前に停泊していた。
僕がこの世で一番かっこいいと思う客船が、確かにそこに存在しているのだ。
待望のナイトクラブで門前払いを喰らい、ひたすら朝まで酒を呑んでいた僕らは数時間の眠りから無理やり目覚め、
パスポートに「ウルグアイ」というスタンプを押してもらうラリーをするためだけにタクシーを飛ばした。
やたらと現地人が優遇されるスペイン語オンリーの予約サイトではどうしてもチケットが取れなかったのが悔しかったが、
イケメンオペレーターの居並ぶフェリーターミナルでチケットを買い、必要最小限の着替えだけを持ってアルゼンチンからの出国手続きを済ませた。
フェリーのデッキは小奇麗で、床でゴロゴロしながら迎え酒としてのキルメスを呷り、サンドイッチを貪った。
同行者は延々寝ていたが、僕はこの史上最高の造形美をもった船の中に自分がいる興奮に抗えず、結局ずっと起きていた。
ラプラタ川の広い河口を横断する1時間あまりの船旅の後、到着したのはコロニア・デル・サクラメントというウルグアイの港街である。
南米では珍しくスペインとポルトガルが代わる代わる支配したこの街には双方の文化が渾然一体となって残存しており、
現在では町並みのそのものが世界遺産になっている。
例えて言うならばコロニアはブエノスアイレスの富裕層が喧騒から逃れるために小旅行をするための土地であり、
まるで西伊豆のようなちょっとうらびれたリゾート地であった。
宿に荷物を置き、シャワーを浴びて昼寝をして、小さな町の街路をふらついた。
土産物屋とマリファナの売人が点々と並ぶ石畳の道に西日が射し込む。
腹は減れど、ディナーには早かった。
我々は防波堤のそばに建つカフェレストランのテラス席に陣取って、イカスミのパエリアをつつきながら陽が沈むのを待った。
恐ろしい量の蚊が腕や脚を刺したが、テーブルに並んだグラスをキラキラと光らせながら沈みゆく夕日はとても美しい。
呆然とその光景を見ながら、この旅で初めてじっくりと眺めるリゾート地としての雰囲気を全身で感じていた。
ホテルに戻り、ビールを呷り、だらだらと無為な時間を過ごしてから再び街に繰り出すも、
日曜に開店している飯屋は観光客向けの不味いレストランだけだった。
しかたなく席に座った我々はそこで不味い腸詰めとワインを儀式のように平らげ、再びホテルに戻った。
結果として、この小旅行は本当にスタンプラリーに過ぎなかった。
時折稲妻のように閃く謎の身体の痛みに目を覚ましながらベッドで寝たり起きたりを繰り返しているうちに、朝が訪れた。
同行者はベッドの上で夜通しキーボードを叩いていたが、結局それを起こすのは僕の役割であった。
急いで荷物をまとめ、歩いて港へと向かうと、そこにはまた果てしなく格好の良いインキャット社製のウェーブピアサーカタマランが待っていた。
一夜のリゾート地の記憶はまあそんなもので、おそらく1週間ほど滞在すればそれは素晴らしい体験になっただろうが
土地の魅力の1/3も理解できぬまま船は滑るようにアルゼンチンへと戻っていく。
クリスマスが近づいていた。旅の終わりが近づいていた。
どちらともなく距離をおいて船の中のどこかにいるであろう同行者のことをチラと考えながら、ひたすらラプラタ川の茶色い水面を眺め、
ブエノスアイレスの港に居並ぶガントリークレーンが近づいてくる様子をカメラに収めていた。
憧れに憧れたインキャット社製のウェーブピアサーカタマランが目の前に停泊していた。
僕がこの世で一番かっこいいと思う客船が、確かにそこに存在しているのだ。
待望のナイトクラブで門前払いを喰らい、ひたすら朝まで酒を呑んでいた僕らは数時間の眠りから無理やり目覚め、
パスポートに「ウルグアイ」というスタンプを押してもらうラリーをするためだけにタクシーを飛ばした。
やたらと現地人が優遇されるスペイン語オンリーの予約サイトではどうしてもチケットが取れなかったのが悔しかったが、
イケメンオペレーターの居並ぶフェリーターミナルでチケットを買い、必要最小限の着替えだけを持ってアルゼンチンからの出国手続きを済ませた。
フェリーのデッキは小奇麗で、床でゴロゴロしながら迎え酒としてのキルメスを呷り、サンドイッチを貪った。
同行者は延々寝ていたが、僕はこの史上最高の造形美をもった船の中に自分がいる興奮に抗えず、結局ずっと起きていた。
ラプラタ川の広い河口を横断する1時間あまりの船旅の後、到着したのはコロニア・デル・サクラメントというウルグアイの港街である。
南米では珍しくスペインとポルトガルが代わる代わる支配したこの街には双方の文化が渾然一体となって残存しており、
現在では町並みのそのものが世界遺産になっている。
例えて言うならばコロニアはブエノスアイレスの富裕層が喧騒から逃れるために小旅行をするための土地であり、
まるで西伊豆のようなちょっとうらびれたリゾート地であった。
宿に荷物を置き、シャワーを浴びて昼寝をして、小さな町の街路をふらついた。
土産物屋とマリファナの売人が点々と並ぶ石畳の道に西日が射し込む。
腹は減れど、ディナーには早かった。
我々は防波堤のそばに建つカフェレストランのテラス席に陣取って、イカスミのパエリアをつつきながら陽が沈むのを待った。
恐ろしい量の蚊が腕や脚を刺したが、テーブルに並んだグラスをキラキラと光らせながら沈みゆく夕日はとても美しい。
呆然とその光景を見ながら、この旅で初めてじっくりと眺めるリゾート地としての雰囲気を全身で感じていた。
ホテルに戻り、ビールを呷り、だらだらと無為な時間を過ごしてから再び街に繰り出すも、
日曜に開店している飯屋は観光客向けの不味いレストランだけだった。
しかたなく席に座った我々はそこで不味い腸詰めとワインを儀式のように平らげ、再びホテルに戻った。
結果として、この小旅行は本当にスタンプラリーに過ぎなかった。
時折稲妻のように閃く謎の身体の痛みに目を覚ましながらベッドで寝たり起きたりを繰り返しているうちに、朝が訪れた。
同行者はベッドの上で夜通しキーボードを叩いていたが、結局それを起こすのは僕の役割であった。
急いで荷物をまとめ、歩いて港へと向かうと、そこにはまた果てしなく格好の良いインキャット社製のウェーブピアサーカタマランが待っていた。
一夜のリゾート地の記憶はまあそんなもので、おそらく1週間ほど滞在すればそれは素晴らしい体験になっただろうが
土地の魅力の1/3も理解できぬまま船は滑るようにアルゼンチンへと戻っていく。
クリスマスが近づいていた。旅の終わりが近づいていた。
どちらともなく距離をおいて船の中のどこかにいるであろう同行者のことをチラと考えながら、ひたすらラプラタ川の茶色い水面を眺め、
ブエノスアイレスの港に居並ぶガントリークレーンが近づいてくる様子をカメラに収めていた。
by kala-pattar
| 2014-05-08 00:28
| 行ってきた