【超音速漫遊記 その16】帰路/岐路

二日前にブエノスアイレスの中華料理屋で別れた女子二人がプエルトイグアスの宿に現れたのは昼過ぎの事だった。
パラグアイを経由してブラジル行きのビザを手に入れた二人は前途洋洋といった面持ちで、いそいそと滝見物の準備をしていた。
もういちどメガ盛りカップラーメンのようなあの光景を見るのは嫌だったし、二人にあれをオススメするのも気が引けた。

大きな滝は下から見た方がいい。
悪魔の喉笛よりも、中小の滝(といってもそれは日本にあるほとんどの滝よりも大きい)をグルグルと見て回ったほうがいい。

そういうことを認識していた俺は3人連れ立って再び滝行きのバスに乗って、こんどはスピードボートのチケットを買った。

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スピードボート乗り場への道のりには文字通り紆余曲折があってなかなか辿りつけなかったが、唸りを上げて滝壺へと突進していくボートに乗り、
森の土に落ちた葉から染みだしたタンニンをたっぷり含んで緑色に染まった水を浴びて絶叫するのは問答無用に楽しかった。

人間、そんなもんだ。

ずぶ濡れのまま水着にTシャツで森をウロウロして、写真を撮り散らかして、フラペチーノを啜りながらタバコを吸って、
……そして、宿に戻って寝れば、翌日は日本に向けて帰るためにひとつずつフライトをこなす段取りとなっていた。

段取りなど、糞食らえだった。
ひとつもケリがついていなかった。
行きたいところ、会いたい人、食べたいメシ。ひとつとして自分で選びたくなかった。
選びたくないかわりに、このまま日本に帰るのだけは嫌だということがハッキリしていた。

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その日の夜、俺は日本に帰るのをやめて、デリー行きのチケットを取った。

「行きなよ。行きたければ行けばいいよ。行きたくなければ帰ればいいよ。」
「インドはキミが行っても行かなくてもそこにインドとしてあるよ。ただ、ここで行かない理由をグダグダ並べるんだったらやめなよ。」
「行きたいんでしょ?」

「どうしようかな」という言葉をダシに、相手にそういうことを言わせている自分は今考えればホームラン級にダサいけども
その言葉にすがりたくて仕方がなかった。
ステーキを食べて、イケてないにも程があるクラブに行って、ビールを呷って、宿のプールにダイブして、俺は南米最後の夜を終わらせた。
by kala-pattar | 2014-07-29 01:23 | 行ってきた | Comments(0)