『インターステラー』観てきました
2014年 11月 23日
SF映画です。ちょっと散文的に書きます。まとまらんので。
「人間ドラマかSFドラマか」という評論も見かけますが、おそらくそういうことを気にする人はSF素養がないんじゃないかな。
SFの多くは「人間存在とはなにか」だったり、「我々はどこから来てどこへ行くのか」だったり
「人間を救うのはいったいなんだろうか」という人間ドラマをいかにセンス・オブ・ワンダーで描き出すか、という試みであるはず。
そういう意味で、インターステラーという映画は
親子愛、男女愛、友情、真理を探求する心、機械と人間の差とは何か、深宇宙に旅立つ方法、高次存在といった
SFではとても普遍的なテーマをかなりていねいに並べて多くの人にわかりやすく提示していると感じました。
サイエンスフィクションはメカ描写や発想の凄さがキモだ、と思っている人も多いかもしれませんが
こんなにも王道かつベタな(言い換えるなら、手垢のついた、陳腐な)時空間モノSFを
2014年にものすごいカネかけて死ぬほど真面目に描き切ったことは褒められてしかるべきなんじゃないですかね。
しかも、いままでだったらちょっと不可能だったろうな、という映像表現によって、
SFファンにとってなじみのあるシークエンスがかなりの説得力を持って視覚的に楽しめるというのは空前絶後かも。
『2001:』と『コンタクト』はもちろん、最近で言えば『GRAVITY』へのリスペクトなんかも要注目ポイント。
『トップをねらえ!』や『トップをねらえ!2』を見た人は理解が早いかもしれません。
あとひとつだけこれだけは言わせてくれ。
サターンV型ロケットっぽいディテールが気になるというスカポンタンな評論家がいましたが、
リアル世界でもあれは全然ありうることだと思うんですよね。
おそらく向こう数十年で「どっか遠いところに行かなきゃ!」となったらあのロケットの設計を引きずり出してくるでしょう。
だって、人類はアポロ以来それより遠いところに行ってないし、それより大きなロケットを必要としてこなかったのだから。
だから劇中でもアポロ計画の話がきちんと触れられてると思うんです。
あれは「人類が地球というゆりかごから出て行くことが夢物語か、そうじゃないのか」を示す重要なガジェットです。
「本当にSF素養がない人はこのへん読んでおくといいんじゃないかな」というオススメSF本
「文学としてのSFをひとつも読んだことがない」という状態で観るとかなり厳しいと思うんですよね。
なんかこう、タダの絵空事(ものすごいCG)を見せられてるだけ、みたいな捉え方になってしまいそうな感じ。
なので、宇宙開発モノ、時間モノというふたつのSFの基礎的かつ簡単なSFがぎゅっと詰まった以下2冊を読んでから観ると
かなり違って来るんじゃないかなと思います。
>ここがウィネトカなら、きみはジュディ 時間SF傑作選 (SFマガジン創刊50周年記念アンソロジー)とくに時間SFについては「ああ、こういうジャンルがあっていろんな人が同じテーマで書いてるんだな」という気分が大事かも。
そしてなにより、予告編に出てくる黒い棒のカタマリみたいなロボット、
アレがタダの脇役ガジェットかと思ってたら「おいおいおいおい、コイツの話じゃねえか!」ってくらい重要だったので
そこんところも刮目です。
さて、この映画がいいのかよくないのか、そして後世に語り継がれるかどうか、そこんところはちと考えてみますね……。
諸手を上げて「傑作!」とか簡単に言えない雰囲気ではあります。ただ、観ないとなんにも言えないですから、観ましょう。
by kala-pattar
| 2014-11-23 14:34
| Movie&Books