「コンパクトデジタルカメラ」は絶滅するのでいますぐ買ったほうがいいって話

最初に結論を言う。
価格と機能のバランスがとれた「良いコンパクトデジタルカメラ」を買いたい人は
いますぐCanon PowerShot S120を買っておくべき。

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▲これな


■理由


これからしばらく(もしかしたらずっとかも)コンパクトデジタルカメラは「安いもの(価格がこなれたときの実売1万円台前半)」と、
「高いもの(価格がこなれたときの実売5万オーバー)」しか作られなくなる、という推測がその理由である。
つまるところ、「3万円くらいのいい感じのコンデジ」という商品設計が難しくなっていて、そこからメーカーは次々と撤退している。

■「最後の銘機」かもしれないS120


倍率や画素数はカメラを知らない人をだますための数字だ。同じサイズでズーム倍率が伸びればレンズは暗くなって画質は暴れる。
同じサイズで画素数が増えれば増えるほどノイズが乗りやすくなり、ドピーカンの昼間にしか撮影できないカメラになる。

大きいセンサー、少ない画素数、無理しないズーム倍率でレンズは明るく、ボディはなるべくコンパクトに。
さらに一眼レフのように色々考えなくても電源入れてシャッター押せば明らかにスマホよりも良い画像が得られる。
コンデジというのはそれが「正義」だと思う。

S120というのはそれをよーくわかったスタッフが
「居酒屋でも気持ちよく撮影できるコンデジ」として作ってきたSシリーズの最終進化形である(と信じている)。
居酒屋で一眼レフは重たい(物理的にも心理的にも)。かといって安いコンデジではノイズがザリザリである。

何も考えずにいい写真が撮れるうえに、画質をグイングインいじれる超わかりやすいUIが備わってるのがS120である。
「俺ちょっと写真興味出てきた」っていうときに一眼レフでできることの8割くらいが学べるというのも良いところ。
コンデジのくせしてカメラの原理原則を学べる(そういう機能があるのではなく、そういうUIになっているのが重要)。

■高いコンデジ、安いコンデジ、中くらいのコンデジ


一眼レフやミラーレスのデジタルカメラが安くなりすぎて、写真に少しでも興味のある人のほとんどがそれを手に入れた。
写真に興味のない人はスマホで写真を撮るようになった。では、メーカーはどこで利益をとればいいのか?
これははいろんなメディアで言われていることだ。

安いコンデジは徹底的に原価を安く作って利益を確保するしかない。価格を優先するなら、徹底的に安く作る。
そのかわり、スマホで撮れる写真と大差ない画像しか得られないカメラとなる。
逆に、良いパーツを使ってスマホよりも明らかに良い画像の得られるコンデジを作ると原価が高くなってしまう
品質を優先するから、「絶対にかかるコスト」のせいで原価は上昇する。売値が一気に5万円を突破してしまう。

ユーザーの本音は「画質も気にしたいけど、あまりべらぼうな金額を払いたくない」というところだと思う。
そういうユーザーに向けて製品を作るなら、
松竹梅の「竹」相当のセンサーやレンズを使って組み立て、価格は1万円と5万円の間に設定する。
これが「実売3万円でスマホより良い画像が得られるカメラ」だ。

■アラウンド3万円のコンデジ市場とは


ここ数年、一眼レフやミラーレスがめちゃめちゃ売れた。
マニアにとっては違うかもしれないが、普通の人が1年やそこらで買い換えたいと思うほどカメラは急速な進化をしているわけではない。
小さくて軽いのも欲しいけど、一眼レフやミラーレスを買ったのにコンデジに3万円払うか?という心理的障壁は大きい。
スマホのカメラが進化しているのがコンデジの市場を食ってるのは明らかだと思うが
(なんせスマホは10万円くらいするのがゴロゴロしているし、Instagramはスマホからしか投稿できない)
それが故にとにかく安くて小さくて軽いコンデジか、マニア向けに一眼レフやミラーレスと同じセンサーを搭載したコンデジが
メーカーにとって「オイシイ商材」となっているはずだ。

問題はアラウンド3万円、そこそこの画質とそこそこの値段のバランスをとったコンデジの市場だ。
パーツの質を落としてしまえば1万円のカメラと差別化出来ない。利幅を削るしかない。
例えばキヤノンとニコンは二大カメラメーカーとしてこの勝負を一歩も譲らなかった。
ニコンのPシリーズとキヤノンのSシリーズがだいたい同価格帯、同グレードのパーツを維持しながら
ギリギリの利益を確保しつつ、相手のアップグレードに追いつけるか、追い越せるかを競ってきた。

そこの競争からいち早く抜けたのがSONYだった。
RXシリーズを設定して「高いけど明らかに良い画像が得られるプレミアム路線」に舵を切って、
それ以下のグレードは二束三文のスマホに毛が生えたようなカメラに絞った。しかもRXシリーズの後継機は2万円ずつ値段が高くなっている。
2012年6月発売のRX100がいまだ現行商品で30000円オーバーの値段を維持したまま。人気がある証拠だ。
(ちなみに富士フィルムは高級コンパクトに商品群を絞り、パナソニックのLF1はやや割高で後継機があるかどうか微妙。
オリンパスは1/1.7インチセンサーのコンデジを現在は作っていない模様。)

■で、こんどはどうやらキヤノンがこの勝負から降りたっぽい


キヤノンもSONYライクな路線に舵を切ったのではないだろうかと僕は思う。

なぜか。

先日の新製品発表でS120の後継機が発表されなかったからだ。
先ほど書いたとおり、S120は一眼レフユーザーがサブ機として使うか、一眼レフやミラーレスへのステップアップ用として使うなら
まったく非の打ち所のないコンパクトデジタルカメラである。
(コレ書いたの2013年の9月!まさか1年半経ってオススメコンデジが更新されず、むしろ値上がりする未来なんて描けてなかった。感慨深い。)
その在庫が払底しようとしている。最安値は先月25000円まで落ちたが、いま34000円あたりまで高騰している。

SシリーズはS120とS200という兄弟を最後にアップデートされないのだろう。
かわりにG7XやG1X2といった高価格帯と、高倍率小センサーな安いコンデジが残る。
「松竹梅」の「松」と「梅」だけを残して。

これまでいろいろな人にお勧めカメラを聞かれてきた。
「もしいまコンデジを買うならなんとか財布から3万円出して、コレかコレを買え!
明らかにスマホで撮った写真ではないと分かる画像が得られ、薄暗い居酒屋でもイライラしないぞ!」
というアドバイスに値するカメラが必ずいくつかあったのだけど、いまはS120を残すのみ。しかもそれがなくなりそうだ。

■コンデジは生き延びるけど、コンデジじゃないものになりかわる


もしいまを逃すと、安くてヘボいコンデジを買うハメになるか、
コンデジを買うために5万円以上の出費を覚悟しなければいけない時代が来る。思ってたよりずっとずっと早かった。
そう、コンデジとは名ばかりの、スマホと変わらない画像を得られるカメラ(スマホでいいじゃん)か
一眼レフやミラーレスに匹敵するセンサーを搭載したカメラ(一眼かミラーレスでいいじゃん)が残る。

確かにコンパクトデジタルカメラの格好をしていることにも価値はある。撮影のスタンスも変わる。
相手の見る目も変わるし、画像を撮影することに特化した設計というのが重要なのも理解している。
だけど結局カメラは画質だ。画質と使い勝手と値段のバランスだ。

そういう意味で、「コンパクトデジタルカメラならではのちょうどいいスポット」が真空になろうとしている。
ゆくゆくは1インチセンサーやAPS-Cセンサーがより安く供給され、より高性能なカメラが安価に手に入る時代が来るかもしれない。
が、センサーの大きさはレンズやボディの大きさに直結する(はたしてそれは「コンパクト」だろうか)。

コンパクトカメラは死のうとしている。蘇生するかどうかはわからない。
もし「スマホと一眼(orミラーレス)のあいだ」で悩んでいるなら、いま買うしかないと思う。
オレは昨日このことに気づいて、あわてて買った。

Canon デジタルカメラ PowerShot S120(ブラック) F値1.8 広角24mm 光学5倍ズーム PSS120(BK)

※じつはこの話、上位概念である一眼レフ市場の中でも起きてる現象だったり、オーディオとかゲームとかでも起きてる。
そう考えると「ミラーレス」っていい商材だよな。隙間に大きな市場を作るの、重要です。つらいけど。
※S95とかS100とかS110持ってる人も大事にした方がいいですよ。

by kala-pattar | 2015-02-25 13:20 | カメラ