史上最強のサブ機にしてSONY至高のコンデジ、「RX100シリーズ」最終購入ガイド

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ついに発表されましたね、RX100M5。
確かにスペックアップしてますが、数値の羅列ばかりです。正直「で、俺の写真は良くなるのか?」という印象。
その進化ぶりに期待していた人たちも「うーん、わかるけど、どうせ高いんでしょ?」と思っているのではないでしょうか。
このエントリでは「で、RX100シリーズのどれを買えばいいのよ」という悩みを未だ抱えている人をガイドします。
(あくまで私の感想なので、ツッコミ無用です。)


■RX100シリーズとは何か


かつてこちらのエントリで書いたように、私は初代RX100を友人に借りてロングタームで試用してみたのですが、
その恐ろしいまでのポテンシャルには心底驚かされました。
キヤノンのS90から延々とPowerShot Sシリーズを使い続けていた自分にとって、当時RX100に付けられていた値段はやや高く
「買い替えてまでこの機種を愛することができるだろうか」という迷いがあり、購入には踏み切れませんでした。
そして悩んでいるうちに後継機であるRX100M2、M3、M4が間隔をおいて発売されました。
恐ろしいのは「RX100シリーズはすべて現行製品として併売されている」ということです。

これが何を意味するかというと、RX100は進化しているのではなく、変化しながら「別のカメラ」としてそれぞれがキャラクターを持ち
ユーザーがそれぞれのカメラと付き合っていくための「覚悟の度合い」を初代から段階的に上昇する価格という数値に置き換えているわけです。
私は最終的にRX100M3、つまりSONY デジタルカメラ Cyber-shot RX100 IIIを選択しました。で、これを皆さんにもオススメします。
以下、その理由。
(もうRX100M3買ってからずーっとずーっと書きたかったんです、このネタ。温め続けてたのでちょっとクドいかも。)



■無印RX100の長所と短所


コンデジとしては巨大な1.0型CMOSセンサー(2020万画素)を採用し、換算28mm-100mm/f1.8〜4.9という明るいレンズを搭載。
非常にインテリジェントなカメラで、「押せば想像以上に撮れる」という印象です。薄暗いところでも上手いことノイズをいなしてきれいな画が撮れます。
コンデジとは思えないようなボケ足も魅力。で、JPEG撮って出しだとシリーズいちのバキッとしたディテールと色彩が迫ってきます。この辺も好みですね。

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ただし、電池が小さいため旅行で一日中歩きながら撮ろうとするとやや心もとないのが短所。
また、暗いところでクリアな画を撮ろうとするとどうしても絞りを開け気味になるし、最短撮影距離が長いのでテーブルフォトを撮るのにはトコトン向いていません。
ドピーカンでのスナップなら右に出るものはいないというくらいの性能ですが、近接撮影だとピントの薄い広角気味な画を許容するかどうかが肝になります。
とにかく、「小さいものに寄ってカチッとした写真を撮る」ということは諦めてください。
また、背面液晶がチルトしないのが個人的には好きです(ボディも薄めに収まっています)が、このへんは「あれば使うな」ということが最近わかってきました。

そしていちばんの魅力は実売4万円アンダーという価格でしょう。中古でも人気が高いためアラウンド3万円は覚悟したいところ。
「4年前に発売されたカメラに3万円を払うかどうか(4年の間に進化した他社製コンデジを無視するか)」というのは結構大きいのですが
RX100は初代でかなり完成されていたので、以降のM2、M3、M4とくらべても「致命的な弱点」はありません(近接撮影はM2も苦手)。
これは憶測ですが、「"予算第一"でモノを考えるなら無印RX100を買ってね」というのがSONY的なコンセプトなんじゃないでしょうか。



■RX100M2の長所と短所


2代目のRX100M2は無印の完全無欠ぶりに蛇足感のあるアップデートを施した機体だと考えています。
光学的な部分(=つまりカメラの本質としての機能)にはまったく変更がないのがその証拠です。
大きく異なるのはセンサーが大きさや画素数そのままに裏面照射型になったこと。カタログスペックだけで語るなら
「ノイズが乗りづらい」というのがその大きな特徴なのかもしれません。
(それを誇示するために最高感度は6400から12800に引き上げられています。ただし使えるとは言ってない……。)

センサーの変更と画像エンジンの変化によって、無印よりも随分とまったりした画を出すようになりました。
私はナチュラルな画よりもディテールフルで彩度高めの画が好きなのでこの変化にはかなりがっかりしたのを覚えています。
また、背面液晶のチルトや天面のホットシューが追加されたことで「ギリギリ許せる大きさ」を飛び出してしまった印象もあります。

兎にも角にもこのM2は「無印よりも良いものが出たら買いたい」という人に対して理論武装をしてリリースされたような印象があります。
タマ数も少ないのか、中古であんまり見かけません。それでも現行製品で、実売価格は無印+2万円。すでに3年前のカメラですが、強気です。
正直、コレをかう積極的な理由というのはなく、もし買うとしても「寿司屋で松竹梅のメニューがあったら竹を選ぶ」というところじゃないでしょうか。
だったら無印を買って高速なSDカードやグリップ、ケースを買ったほうがトータルではオトクな感じがします。


■RX100M3の長所と短所


3代目は完全にカメラとして別物になります。
光学系に手が入り、24-70mm/f1.8〜2.8と広角気味になって望遠端も明るくなりました。
これによって最短撮影距離がテレ端30cmとなり、テーブルフォトにも(ギリギリ)対応できるようになっています。
とは言え70mmというのは案外画角が広いため、小さなものを引き寄せて撮ろうとするとやはりピントが厳しくなります。
結局のところ、「ブツ撮りよりも風景スナップのほうがニーズあるよね」というマーケティングの結果みたいなものが透けて見えます。


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もうふたつ。手ぶれ補正が5軸に増えたことで薄暗いシーンでの安心感が圧倒的に増大しているほか、有機ELファインダーが増設されています。
この電子ファインダーというのは「見づらい、レスポンス悪い」という印象を持っていたのですが、いざあるとこれが相当便利です。
ファインダーを覗く以上、構えが昔のカメラ的になり、ホールドがガッチリします。
フレーミングに集中できるため、漫然と背面液晶で画角を決めているときよりも絵作りに意思が込められます。
(このファインダーを本体に押し込むと勝手に電源が切れるというのも地味に便利です)

補足ですが、動画を生業にしている人でなければ本機で撮影できる動画についてはかなり衝撃的だと思います。
XAVC Sという高ビットレートな動画を撮るには少々ハイスペックなSDカードが要求されますが、
手ぶれ補正と明るいレンズとあいまって、一昔前のハンディカムなら蹴散らせるくらいのフルHD動画が撮影できます。

犠牲にしたのは望遠端の焦点距離くらいのもので、値段も相応に高くなっています。
RX100M3はそういう意味で、動画時代のデジカメを意識しつつ、光学的な刷新によって「違うカメラ」という立ち位置を作り上げました。
実売はアラウンド8万円ですが、「RX100をいまさら買うのも/RX100M2は中途半端だし」という人間にとって、ギリギリの価格設定だと思います。
これはRX100M4の価格設定とも絡んでくるので後述します。



■RX100M4の長所と短所


RX100M4はRX100M3の光学性能をそのままに、プロセッサ関係をめちゃくちゃ強化して映像に特化した機種です。
進化したというより、RX100というスチルに4Kビデオカメラの性能をまるまる乗っけた、と考えたほうがすっきりすると思います。
実勢価格はアラウンド10万円。人間というのは「コレくらいの大きさのこういう格好をしたものはコレくらいの価格でなければいけない」という
謎のバイアスを持った生き物なので「コンデジに10万円かよ」と思うかもしれませんが、
まあこのM4については「5万のデジカメに5万のビデオカメラが合体したもの」と考えるべきです。
純粋なスチルカメラとしてはM3のほうが妥当な値付けでしょう。

この機種から採用された積層型センサというのも「読み出しスピードが速い」という話で、静止画の本質には大きく影響しません。
とにかく大量の画素から大量のデータをガンガン吸い出して動画として記録する、というところに技術があるわけです。

高速シャッター、高速連写、アンチディストーション、スーパースローモーションというのも「動画のためのスペックのおこぼれ」であって
RX100M3とRX100M4を比較すると、その人が「動画を撮るか撮らないか」で見え方がまったく変わってくると思います。
正直このスペックアップと価格上昇は「良い写真を撮る」ということに直接的につながるとは思えず、結果として私はM3を選びました。
(もし高速連写が必要なシーンがあればそれはコンデジではなく本気カメラを持ち出すシーンだし、24-70mmなどというレンジでは撮れません。
例えば高速連写によって戦車の発砲炎を撮りたければ少なくとも400〜500mmで狙うわけですし……)

コンデジはアマチュアのスナップ用であり、プロ機材のサブ(万一のとき、広角〜標準で場面を押さえておくのに使う)ということを考えると
そこにいくら機能を盛り込んでも「限界」があると思うのです。
しかしこのRX100M4が市場にある、ということは「コンデジでなんでもやりたいマン」がそれなりに存在する、ということでしょう。



■で、結局どれを買えばいいの?


「現行のRX100シリーズから選ぶとするなら、無印のRX100かRX100M3のどちらか」というのが結論です。
その価格差は4万円ですが、カメラとしてどう違うか、は上に書いたとおりです。
「広角、フルオートで押せば絶対に応えてくれる4万円のカメラ」としてRX100を買うか、
「全域で明るく手ブレ耐性もあり、より広いシーンに対応してくれる8万円のカメラ」としてRX100M3を買うか。
M2もM4もやや蛇足感があり、RX100M5は(円高の影響でべらぼうな値段にはならないかもしれませんが)M4の電子的な性能強化版です。
「良い写真を撮るということは、それを目標として設計されたものに相応の値段を支払うことである」ということが理解できるならば、
ここまでの解説と合わせてその真意を理解してもらえると思います。
オマケとして、無印からM4までのスペック比較表を以下に示します。
それぞれの差が一目瞭然ですから、古い新しいは一回忘れましょう。全部「今のカメラ」です。
あとは「自分がそのスペックの差に差額を払えるかどうか」です。予算がなければRX100無印を買っても全然良い写真が撮れます。

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■(蛇足)RX100M5は私たちに何を見せてくれるのか


奇数番台のアップグレードということで注目を浴びていたRX100M5が発表されたわけですが、現段階の情報を総合すると
今回は合焦速度(フォーカススピード)の向上と高速連写の継続時間延長が大きなポイントでしょう。
光学的な面ではM3からのものを継承しており、「良い静止画を撮る」という本質的なところにはタッチしていないのではないでしょうか。
ですから、被写体や景色と向き合ってシャッターを切る、という静的なモードの人間(殆どの人がそうでしょう)に対して
「で、その機能向上が我々の写真にどう寄与するのですか?」というのは、おそらくビジュアルには提示されない(できない)でしょう。
希望小売価格もオーバー10万だと思いますが、これなら映像ガジェットとして個性的なものを買いつつコンデジを追加することも可能な価格だと思います。
「それでも欲しい」「常にスペック番長でありたい」という気持ちは否定しませんが、
次回のRX100M6があるならばセンサーやレンズといったカメラの本質、すなわち「どうやって光を捕まえるか」というところにフォーカスしてほしいな、と思いました。
また気づいたことがあれば追記します。




by kala-pattar | 2016-10-07 23:56 | カメラ