あなたは下乳と横乳の境界をその目で見たことがあるか(あるいは、腰と尻の境目の話)。
2016年 12月 11日
正直もう、書くのはやめようと思っていたんです。
「バンダイが女の子をプラモデルにする」というのを繰り返し繰り返しこのブログで言ったって、別に世界は変わらない。
11回もやってりゃバンダイだってどんどん勘所を掴んでモノが良くなっていくのも当たり前ってもんでしょう。
しかも、女の子をプラモデルにしてるのは、バンダイだけじゃないのです。
▲いま私は、バンダイのフィギュアライズバスト ガンダムビルドファイターズトライ ホシノ・フミナの話をしています。
……だいたい俺は『マクロス⊿』に登場するワルキューレが好きなのであって、このホシノ・フミナという女の子はべつに好きじゃない。
しかしですよ、発売前からやれ可愛いの、やれエロいのと、モデラー諸君はこれをちょっと特別扱いしすぎたところがあるんじゃないかと思うわけです。
何だ君たち。
おっぱいが大きければ、イチコロなのか。
露出が多けりゃ、それでいいのか。
挙句の果てに、君たちは買ってくるなり興奮にまかせて組み上げたプラモを「レビュー」と称して
ぐるぐるぐるぐる回しながら箱の横に載ってるような写真を何枚も何枚も撮ってですね。「かわいい」とか書いちゃうわけですよ。
どこがどう分割されていて、どんな工夫がそこに隠されていて、工学的に、物理学的に、何が起きているのか。
その本質に迫ることこそが、プラモを愛するということじゃないのかよ、と。
そう思って、私はいてもたってもいられず、このプラモときちんと対峙することにしたわけです。
決して見た目に惑わされることなく、冷徹に、機械的な工程でもってつくられたプラスチックのパーツたちと、対話をする。
これをやめたら、モデラー失格じゃないかと、そう思ったので、ここにレビューを記すわけです。
▲私は、下乳が好きです。
あのー、このプラモデル、ズルくないですか。
まず説明書の最初の一手から、スポーツブラみたいな衣装の前後をバチーンとハメて、おっぱいをぎゅーっと押し込むことを強要してくるのですよ。
この時点で、人間は冷静な思考というものができなくなるのではないでしょうか。
▲こうした前後割りのパーツを合わせるところからスタートするのですが、左右の乳の間を走る数多の襞に、人間(ヒト)の深淵があります。
▲火曜日、主は肌色のパーツを左右の肩と腹とに分けられました。水曜日、「真ん中の三角のところがあれ」と言いました。背骨の凹みに、豊穣があります。
▲なぜ乳の左右に空間があるのかを考え、タバコを吹かしながら、縱橫に走る腹筋の割れ目を眺めます。昨日の晩飯がなんだったのか、曖昧になってきます。
▲このピンクのパーツが、"衣装の色を分かつと同時に、前後割では表現不可能な「横乳」のオーバーハングを形成する"と気づいたとき、少年は大人になります。
▲健康な少女の鎖骨と腹と腕が輪切りになり、金型が出会い、ふたたび別れた痕跡がその側面に走る。プラモデルとは、出会いと別れの物語であります。
▲顔のパーツを見せても、もう誰も驚かないでしょう。
▲本シリーズの従来品とは異なり、目の輪郭の黒い部分を顔面と一緒に成形するのではなく、目のほうに成形しています。これにより、目の周りの不気味な黒い透けが解消されました。
▲同様に、眉毛とまぶたの影色をあえて肌色パーツと一体成型とせず、裏からはめ込む仕様にしています。透け対策がここでも考えられているということです。
▲パーカーがあり……
▲袖がありました。木曜日です。
▲おっぱいがあり、腹筋があり、その下に、ヘソの予兆がじんわりと押し寄せているのを見て、思考が終わっていきます。
▲腕パーツが別途用意されていたのは「パーカーを着せない」という展示方法を選べるからです。ところで、腰とお尻の境目とは、どこなのでしょうか。
▲これは、プラモデル屋さんに行くと、売られています。あなたも組むことができます。ご清聴、ありがとうございました。
何度も言いますが、これは「技術」ではなく、こういうパーツをこういうふうに設計してこうやって成形してやろう、という誰かによる企みです。
意志であり、フェティシズムであり、思想です。それは変態的なものではなく、キャラクターを、立体的な意味で実直に解体し、再構築する試みです。
結果として現出するパーツが「変態的」に見えることと、「変態が作ったもの」を混同したり、
自分の理解の外にある恐ろしい何かを「卓越した技術」のせいにするのは、極めて危険なことです。
この世のどこかで、誰かが、極めて真面目に、フミナ先輩のいろんなところを、プラスチックのパーツに還元している。
私たちはそういう世界を生きている。祝福したいじゃありませんか。笑顔で生きましょう。プラモデルのある、この世界を。
by kala-pattar
| 2016-12-11 00:40
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