ありがとうアオシマ。1/700秋津洲で考える『艦これ』のありがたみ
2017年 02月 03日

我慢できなくて『艦これ』仕様のパッケージを買ってきてしまったのですが、いやはや、最高です。
排水量5000トンの小柄な船体で31トンもある二式飛行艇への整備補給を行うために35トン電動クレーンを装備した特異な姿、
厚化粧と揶揄された独特な迷彩塗装、初代艦長黛治夫大佐による敵襲回避のための超独特な操艦方法などなど尽きることのないエピソードを持つこの船ですが、
同型艦がいない(=プラモデルとしてバリエーション展開ができない)ためにこれまで立体化される機会に恵まれませんでした。
ピットロードの1/700モデルがあるにはあったのですが、なかなかに古いこともあってリニューアルされた有名艦と並べるにはやや厳しい印象。
ハセガワからは『Limted 500』と銘打ってレジンの船体を中心としたマルチマテリアルキットが500個限定で発売されたこともありました。
この辺の話については先日刊行されました『ハセガワ コンプリートワークス: キットで辿る75年』に原稿を寄せているので気になる人は是非読んでみてください。
さて今回アオシマによってめでたく新キット化となったこの秋津洲。
大砲も積まぬ水上機母艦というマイナー艦艇がこうしてシャキッとしたプラモデルになるのも艦これのおかげサマサマなのです。
戦争は知名度だよ、アニキ。














色分けや形状再現のためにしっかりとランナーを別々にして、然るべきところにはスライド金型を導入して、
一昔前ならシルエットだけ再現されてりゃオッケーくらいのテンションだった1/700艦船模型の高精細化にともなって
秋津洲という「戦わない船」までもがこうしてパリパリのプラモデルになって発売されるなんて、おじいちゃん聞いたら卒倒してしまうのではないでしょうか。
そしてそれを実現してくれているのが艦娘と呼ばれる女の子の存在なわけで、
彼女たちのお陰でプラモデルにも艦船にも興味がなかったヤングたちを、秋津洲というマイナー艦艇を知る立派な提督に育ててくれたわけです。
だって、艦これがなかったら、秋津洲はプラモデルとして新生することもなかったでしょうし、
百歩譲ってそれが実現したとしても、こんなに贅沢なキット仕様になることなんてなかったと思うのです。そうでしょう?
いくらシャープなキットがあっても、いくら簡単に作れるキットがあっても、あなたが知らなければそれは存在しないのと同じ。
「初心者」と呼ばれる人に、いくら簡単だぞ正確だぞ良く動くぞと叫んだところで、そもそも秋津洲を知らなければ興味を持たないでしょう。
簡単なゲーム、買いますか? 正確だという理由だけで時計買いますか? よく動くという理由だけで知らないロボット買いますか?
そういう人がいたら、それはおそらくすでにそのジャンルのものが好きな人で、良し悪しを判断できる人だと思うのです。
もちろん上記のような要素を軽視して良い訳ではないと思うのですが、
でも「贅沢できる」「もう知ってる人もニヤニヤしてしまうほどのものを作れる」ということの土台には
「知名度」という名の"数の論理"が絶対に必要なんだよな……と思った次第。
さて、この秋津洲、せっかくここまで贅沢なんだから、徹底的に甘やかされながら作ってみようと思います。
色分けしてあるんだから、その色を楽しみたいし、デカールがあるんだから、貼りたい。
コテコテと料理するのも楽しいですが、プラモデルが持っているスペックをそのまま、甘エビの尻尾に詰まった身をチュルンと吸うように、ナマで味わう。
そういう態度もあっていいと思いませんか?
それにしても、いいプラモデルです。
こういう「ヒーローじゃないんだけど、いいモノなんだよな!」というものまで等しく愛でることができるのがプラモデルのいいところ、なんですよ。
切って貼って眺めるだけなら、あなたにも絶対できますし、生で食べられるプラモデルもある。そういう話をこれからもしたいっすね。
ぜひぜひ。
by kala-pattar
| 2017-02-03 23:21
| プラモデル