バンダイ製ナウシカのプラモに見る、世にも珍しい「金型魔改造」の世界
2017年 05月 16日
あの、ナウシカのプラモデルってのがこの世にはあるんですよね。
で、最近はウォーハンマーの造形物とかシタデルカラーにそうとうハマってしまっている自分なので、
国内産のナマモノ系プラモデルもいっちょ買うか〜と模型店をうろついていたら、バンダイからひさびさにナウシカのプラモが再販されてました。
買いました。で、箱開けたら「どう見てもバンダイのプラモデル」という顔したランナーが鎮座していたので、びっくりしたんですよ。
だって最初の写真、1枚のランナーに3色入ってますよね。これができるの、世界でもバンダイだけです。
この人何言ってんだ、バンダイのプラモデルなんだから中身もバンダイだろそりゃ、と思うのは正しいんですが、
もともとナウシカのプラモデルを売っていたのはツクダなんですよね。
で、オレのうろ覚え情報だとツクダの金型をバンダイが引き継いでパッケージ変えて売ってる、という認識だったんですよ。
だからすんげー昔の、接着剤必須の、色分けなんてされてない、朴訥なフィギュアが入ったヤツだと勝手に思い込んでいたんですよね。
だってパッケージの完成写真、昔のやつと全く同じに見えるもん。
インターネットをウロウロすると、「2004年リニューアルしたんだよ!」というのがいっぱい書いてあるので
単純にオレがそれを知らなかったんですよ。はい、バンダイすごいね。で終わりなんですが、話は単純じゃなさそうです。
つまり、バンダイはツクダの金型をパーツごとにバラして、一部は合体し、ごく一部は新規に造形し直し、というキメラ的改造をしたのではないか、と。
みなさん簡単に「金型改修」という言葉を使ったりしますが、上記のような作業はそうとうイレギュラーなんじゃないでしょうか……。
少なくともオレはあんまり知らんぞ、そういうプラモデルの出世魚。
キットを組んでみるとだいたいスナップフィットなんですが、2004年に新規に作った金型とは思えないディテールの不連続があったり
いきなり接着指示が出てきたりと、結構不思議な体験が楽しめます(2004年にバンダイが接着必須のキット作らないもんね……)。
かと思えば記憶よりもずっとかわいいナウシカの顔が出現したり、色分けされた部分があったり、
さらには「色ごとにプラスチックの硬さが違う(説明書には全部同一の「PS」という素材表記があるのに!)」という憎い演出も……。
ツクダが得た原型が金型になり、その金型がバンダイに渡り、バンダイがツクダのオリジナルのモールドをそのままにしながら、
ユーザーが組む過程で直接経験する「パーツの裏側」とか「色分け」という部分だけをいじって「2000年代のプラモデル」に魔改造する。
金型を魔改造することで現代的な組み味を無理矢理に実現しつつ、出現するものは懐かしいモールドの、懐かしいあの姿。
そう、原型と完成品は同じ形なのに、その途中の経過がほぼ完全にリニューアルされてるんですよ。
やっぱりプラモデルは過程だよ。ランナーだよおっかさん。
ということで、「ナウシカのプラモ?ああ、ツクダのやつね」という人も、「ナウシカのプラモ、2004年にリニューアルしたよね」というのを知ってる人も
いま再販されてるやつを買って、ランナーを眺めてみてください。
21世紀の技術で建て増しされた老舗旅館の女将が、メーヴェに乗って80年代からやってきます。肩にテトを乗せて……。
明日、王蟲とかガンシップも買ってこよう……。んで、シタデルカラーで塗りたい……。めっちゃ楽しそう……。
しかし、なんですかこのフランケンシュタインのようなプラモデルは……。めっちゃおもろいやんけ……。
追記/「これ金型がない、もしくは破損してたから商品を原型にして金型つくりなおしたんじゃなかったっけ。メビウスみたいな。
だからちょっと小さいんだったよね元のより。(無責任発言)」という識者からのコメントが。
そのセンは考えてなかったしどこかで読んでいたとしても覚えていない……。
もし情報お持ちの方いましたら、ぜひ教えてください。
何にせよ、プラモデルをそのままプラモデルにしなおしているのだとしたら、それでも充分ストレンジな製品だとは思います。
by kala-pattar
| 2017-05-16 00:21
| →SPRUE CRAZY