「零戦のプラモを作ってみたいけど、塗装はしたくない」という人のための、出血大サービス。

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ほんとうに日本人は零戦が好きなんだなぁ、と思うことが最近は多いですね。
零戦のプラモデルを組んでみたいけど、塗ったりするのはちょっとめんどくさいんだよなぁ……という人も多いんでしょう。
じゃなきゃ説明がつきません。たった1000円で、"塗装済みの零戦を組み立てる"というプラモデルが発売されちゃったんですから。

エフトイズ・コンフェクトのフルアクション零戦21型は、いわゆる食玩フォーマットで1/72のフルキットを実現してしまったモンスタープロダクトです。
ハセガワの1/72スケールの零戦(当然、接着も塗装も必要です)が1296円、タミヤのそれが1512円であることを考えると、驚異的です。
いったいどうしたら1000円でプラモデルを塗装済みにして売れるんでしょうか。
コンビニとかスーパーとかホビー店とかにバンバン置くことを前提に多く作ると言ったって、限度っちゅうもんがあるでしょう。謎です。


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▲ハコを開けるとペナペナのブリスター(この辺にもコスト削減の影響を感じます。勘ぐりすぎ?)に胴体や主翼上下面、カウリングなどが入ってます。


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▲ランナーにくっついたパーツが塗装してあるんですよねぇ。誰かが塗ってくれているんです。


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▲このランナーなんて、裏面を含めると7色が使われています。グレーの樹脂に、どこかの誰かが色を塗っている……。


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▲エンジンとエンジン支持架がちゃんと塗り分けられているあたり、ありがとうございますとしか言いようがない。


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▲プロペラの赤い帯も最初から入っています。操縦桿や機銃だってこまかく彫刻されています。


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▲胴体の内部を見たら、壁のディテールがちゃんと塗り分けられていて仰天……。


ワタクシはハコの中に整然とパーツが並んでいるのが好きなんですが、みなさんはプラモデルのどのへんが好きですか。
カタチができていくところなのか、塗装するところなのか、汚しを入れるところなのか……。
これっていざ聞かれると難しいですよね。難しいので、「零戦が欲しい」ということにして、なんとなく蓋をしてしまいがち。
だからこの製品は「零戦が出来上がる」というところにフォーカスして、心理的なハードルが高いであろう塗装の部分をメーカーがやってくれている。

んで、スナップフィットの本製品を組んでみたんですけど、これがまあけっこう難しい。
脚柱や主翼端の折りたたみ機構も可動再現しちゃってるし、エンジンまわりも結構細かいパーツで構成されています。
正直、プラモデルに慣れている人でもピンセットを持ち出さないとなかなか難しいでしょう。
ダボやピンに対して塗装の厚みというファクターが入ってきて、組み付けも接着剤を併用する必要があったり(説明書でも推奨されています)。


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▲計器盤を付け忘れて写真を撮ってしまいましたが、ここだけで17パーツ構成です。結構な凝縮感ですが、組みやすいかといえばNOです。


そう、他人が塗装したプラモデルの「組むところだけ」をハイと渡されるのはそんなに単純なことではないんですよね。
とはいえ、この製品の価値が下がるわけではありません。確かに、組み立てるだけで色を塗った状態の零戦が完成するんですから。
しかし、これがどんな人にでも組み立てられるかというと(もっと言えば、塗装が心理的ハードルになっていてプラモデルに手を出しそびれている人に組めるかというと)
それは結構酷なことなのかもしれません。

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▲水転写式デカールって、ある意味塗装よりもハードル高いかもしれないよね。


そう、この製品の優れているところは「オレにもなんとかなるかもしれない」というパッケージングを実現しているところなんですよね。
1000円なら、なんとかなるかもしれない。零戦なら、オレも知っている。塗装がいらないなら、オレにも組めるかもしれない。
そういう意味で、いろんなハードルをガツンと下げている。

実際手に取ると、プラモデルには当たり前のパーツナンバーがランナーに入っていなかったり、パーツのサイズがかなり小さかったり、
組み付けにある程度調整が必要なところがあったりと、そこかしこで「む、これは歯ごたえがあるな!」というポイントに出くわします。
そこで「うーん、やっぱり無理だ!」という人もいるかもしれませんし、「頑張って次に行ってみよう!」というポジティブな人もいるかもしれません。
どちらにせよ、「プラモデルを手に取らせる」ということには成功しているわけで、そこに的を絞るなら、非常に良く出来たプロダクトなんです。

プラモデルを新しいユーザーに向けて発信する。組んだことのない人にプラモデルを触ってもらう。
そのために取ったアクションが、かえって「普通のプラモデルでは生じない難しさ」をまとってしまうのはちょっとおもしろい現象ではないでしょうか。

でもいいんです。プラモデルは、どこか難しいところがあるから、面白い。
次はどうしよう、何を改善しようと考えるのも楽しい。下手でも良いから、貼るのが楽しい、塗るのが楽しいという人だっているでしょう。
「ふたつめのステップ」はユーザーの心のなかにある問題ですから、「オレ、こういうプラモデル的なモノがほしいんだよね」という人に気づいてもらうために
こういう「ひとつめのステップ」としてのプロダクトがこの世に生まれたことは素直にすばらしいことだと思うのです。

みなさんは、どんな理由で「初めてのプラモデル」を選びましたか?
簡単だからこれにしてみよう、なのか、どうしてもコレが欲しいから、なのか。ハコがかっこいいとか人にもらったとか、出会いはそれぞれ。
それは狙ってできることじゃないかもしれないし、こういう変化球で誘うことができるものなのかもしれないし、考え続けて損はないのでしょう。


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▲デカールはあとで貼ろうと思います(カタチができたところで満足してしまった)






by kala-pattar | 2017-06-13 22:31 | プラモデル