物流の王様、コンテナ船のプラモデルは三途の川を渡る夢を見るか。


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▲ドイツレベル社による完成見本写真です。ここまでコンテナ塗り分けたらさぞかし楽しいでしょうねぇ。


昨年このブログで異常にバズった20世紀最大の発明はどう考えても「コンテナ」だったという話というエントリですが、
そのきっかけとなったのはこの体験でした。
きわめてミニマルな「ただのハコ」が持つ意味、そしてそのディテールやマーキングに完全に惚れてしまったのでした。
惚れたものはプラモデルで作らないと気がすまない人間にとって、上に示した独レベル社の「コロンボエクスプレス」は喉から手が出るほど欲しい模型だったのです。
しかしプラモデルというのは良くて数年に一回再販されるかどうかという物体なので、当時はプレミアが付いてとても手の届く値段ではなく……。
そしてついにこの夏、ドイツレベルから1/700のコロンボエクスプレスが再販されたため、一も二もなく購入ボタンをポチッと押してしまったのです。




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▲実物です。めっちゃくちゃにデカく、超絶かっこいい。(Wmeinhart氏撮影)


コンテナ船というのはとにかくコンテナをひたすら積むためのフネなので、人が乗るところ以外は全部コンテナで埋まる構造になっています。
いろいろな種類の積荷をコンテナという世界統一の規格に押し込むことで、大量かつ迅速に積み下ろしができることにより、世界の物流は一変しました。
人がえっちらおっちら積荷を乗せたり下ろしたりする必要はなくなり、泥棒や雨風の心配もしなくて良い。
様々な色のコンテナを満載して海を行くコンテナ船は、すなわち物流の主であり、人類の経済活動を象徴する存在だと言っても過言ではありません。

で、そのプラモデルは面白いのか、というのが本題であります。
コロンボエクスプレスはハパックロイド社が保有するフネの中でも最大級で、全長334mもあります。戦艦大和より70mくらいデカい。ふざけてんのか。
積載量は8749TEU(20ftコンテナが8749個乗りますという意味)で、同型艦(全部都市の名前が付いている)が合計8隻存在しています。


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▲まず船体(甲板)が超絶にデカい。上に示した戦艦ロドネイの船体が子供に見えるくらいデカい。全長48cmほどあります。


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▲近づいてみると、コンテナを固定するための突起がビビビビビビと彫刻されており、ひたすらにコンテナを積んでやるという気概にあふれています。


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▲艦首にはアンカーチェーンなどがささやかに作り込まれております。ここ以外平らな面は全部コンテナが乗ると考えてOK。めちゃくちゃですね。


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▲艦橋は階段とかフロアがまあまあ作り込まれています。ここの塗り分けが民間船らしさを演出すると思うので、頑張っていきたい。


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▲コンテナはどうするんだ、と思ったら地獄みたいな板が大量に入っております。こういうランナーがもう信じられないくらい入っている。


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▲近づいてみると、一個一個のマスがコンテナのケツになっていて、カンヌキまでモールドされているのがわかると思います。


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▲つまりこれは積載されたコンテナの塊を再現するための板なわけで、これを無限に箱組みしなければいけない。


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▲冗談を言うのも大概にしてほしいのですが、説明書は延々このテンションです。物流というのは人間らしさやモデラーの尊厳の向こう側に存在する。


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▲試しにひとつ組んでみました。なんというか、身も蓋もありません。蓋のように見えるものは、40ftコンテナ17個分の屋根です。五七五のリズムが船幅いっぱいに広がる。


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▲当然ながら、いろいろな会社のコンテナはいろいろな色をしていますので、このマス目を一つずつ塗り分ける必要があります。物流、めんどくさいです。


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▲こちらは筆者が撮影してきたホンモノの40ftコンテナです。ホンモノがこうなっておりますので……


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▲無限にハパックロイド社のロゴデカール(肉眼で読めるか読めないかの大きさ)が同梱されています。他の会社のコンテナも積ませてくれ。


コンテナ船のプラモデル、壮絶ですね。
これを組み上げるだけでも大変なのに、コンテナを塗り分け、積載する作業があるわけです。
一つ一つコンテナを積載したいというモデラー心も無きにしもあらずなのですが、地獄の鬼でもそんなことはさせないでしょう。
賽の河原は一体成型されることで免れたのであります。

「ガントリークレーンの居並ぶ巨大な埠頭に、タグボートで押されながら入港するコロンボ・エクスプレス」をジオラマで作りたいです。マジで。
(そうそう、京都、大阪、チンタオ、コロンボ、ブレーメン、ハノーヴァーの各マーキングがデカールに入っていました。選ぶの悩ましい)
ガントリークレーンはプラ棒とかで根性で作りたいし、他の会社のコンテナのマーキングは自作しなきゃいけないし、
人間の人生は短いのに、コンテナは容赦しませんね。
これが戦艦なら大砲積んでイッヒッヒというところですが、ただのドンガラのフネにハコを積みまくらなきゃいけませんからね。
これはなんというか、フォルムやヒストリーではなく、人間の業である「物欲」とそれを満たすための「仕組み」のプラモデルなわけで、
そこに甘えとかが介在しない、というのがめちゃくちゃに面白いと思ったのでした。
みなさんもガンガンコンテナを積んで、物流していくといいんじゃないでしょうか。ではでは。









by kala-pattar | 2017-07-05 23:15 |  →SPRUE CRAZY