バンダイ製オールドプラモデルが海を渡ってリバイバルし、タミヤの魂とともに蘇っていた話。

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模型店をフラフラしていると、突然このハコが目に飛び込んできて、その瞬間手に取っていました。
一も二もなくレジに行って、値段を聞いて「ヴッ」と思わず声を出してしまいましたが、手に取らせたそのデザインにお金を払うのが粋というもんです。
戦車の端正な四面図と小さな級数で書き込まれたスペック。そして縮尺メジャーとミッチミチのタイトル。
タイガーモデル 1/35 ドイツ軍 レオパルド2 レボリューション1 MBT プラモデル TML4629は本当に心配りの行き届いたプラモでびっくりします。
これがなんで人間のノスタルジアをくすぐるのか数分考え込んで、パッと思い出しました。
地元の駅の向かいにあった狭い模型店で、狂ったように買っては組んでいたあのプラモデルのことを。




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▲これが2017年の新作プラモデルのパッケージなんですから、「一本取られた」としか言いようがないですね。


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▲こちらが元ネタ、バンダイの1/48キングタイガーのパッケージです。最後に再販されたのは21年前のこと。


香港の新興プラモデルメーカーが、1970年代前半にバンダイが販売していた戦車模型のパッケージ(四面図パッケージは1980年代の再販時より)をオマージュして
ドイツ軍が誇る最新の戦車をプラモデルにして、日本で販売しているわけです。
そこに言葉はいりませんね。素敵なリバイバルだと素直に思います。

バンダイの1/48機甲師団シリーズは'80〜'90年代にかけてアジア系のメーカーを通じて中韓をはじめとする国で販売されていたらしく、
ちょうど香港界隈で現在壮年期で模型メーカーを立ち上げるような世代の人々のプラモ少年時代を彩った製品であったのだとか。
デザイン的な観点で言えば「完璧な仕事」ではないですが、一昔前の「日本製品をバレないようにコピーしてます」という時代とは隔世の感があります。

バンダイのヨンパチ機甲師団シリーズといえばスター・ウォーズの撮影用プロップに使われまくった(話題のミレニアムファルコンにも!)ものですが、
こうしていま脚光を浴びるのは時代の必然なのか、全くの偶然なのか……。

で、話はこれだけで終わりません。


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▲ザラザラの白色度低い紙に印刷された説明図。こんなチョイス、わざとじゃなければありえません。何度も言うけど、最新の舶来プラモデルです。


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▲そしてこの工具の図やカラーリング指示をご覧ください。圧倒的なタミヤオマージュ。日本語も正確です。


そう、単なるバンダイオマージュだけでなく、タミヤへのリスペクトがビシバシ伝わってくる説明書。書体のチョイスも的確だと言えるでしょう。
これはランナーを眺めていてもグイグイと日本人ユーザーの心を掴んできます。


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▲ご覧くださいこの成型色。素敵なベージュでディテールもクッキリパッキリ。


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▲滑り止めのモールドも繊細で、大胆に一体成型された車体上面は歪みもなく金型の仕上げも丁寧であります。


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▲車体後半部にあるラジエーターグリル(だよね?)も見事なシャープネス。


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▲かと思えば最新ドイツMBTのメカニカルなSFメカ的ディテールが突如として出現し、未知との遭遇を盛り上げてくれます。


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▲クリアーパーツが豊富なのは大陸製プラモデルっぽいですが、最近の戦車は光学系がすごいっすからね。


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▲ランナータグの入れ方やパーツの配置の美しさもタミヤ製品をしこたま勉強している感じがひしひしと伝わってきます。


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▲柵のようなスラットアーマーがこの戦車の特徴なんですが


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▲裏返すと(こっちが表なんですが)布の質感がめちゃくちゃにすごい。こんなプラモあんまり見たことない。


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▲履帯は履板とピンを一個ずつ組み立てる仕様で大変そうですが、なんかはめ込むだけでオッケーらしいです。すごくないっすか。


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▲今っぽくエッチングパーツや金属ワイヤーが入っているうえに、ランナーを識別しやすくするためのシールまで入ってます。イタレリツクセリ!!!


ということで、意外性のあるラインナップでユーザーを驚かせている香港のタイガーモデル、ガワもすごけりゃ中身もすごい、という話でした。
値段はけっこうな感じですが、パーツ数を押さえつつもシャープで組みやすい印象なので、来月あたりにガバッと組んで塗ってみようと思います。
それにしてもパッケージでバクっとユーザーを掴んで、中身までしっかり神経の行き届いたプラモデル。
デザインというのが見た目とエクスペリエンスの両面に渡ってきっちりと行き届いている様子にはうっとりせざるをえません。
懐古主義とフロンティア精神を併せ持った、まさに温故知新が爆発したプラモデルをみなさんもぜひ。めっちゃいいですよ。






by kala-pattar | 2017-07-26 00:13 | プラモデル