英国で地球最強のヒストリックカーレースを観てきた話/最終話
2017年 09月 18日

グッドウッド・リバイバル・ミーティングのなかでも、私にとってもっとも贅沢な時間。
それは、二次大戦機が実際にその空を舞うときでしょう。
文章として、これを伝えるのはとても難しいことです。兎にも角にも、ひたすらに美しく、感動的でした。

▲スピットファイア Mk.IXB。時折水滴の降る曇天の中で、キャノピーにはシートが掛けられています。
▲カーチスP-40C。私はこの飛行機をあまり好きではありませんでした。
▲グッドイヤーコルセア FG-1Dです。まあ厳密なこと言わなければ、F4Uです。
▲エンジンの巨大さ、プロペラ直径の巨大さ。着陸脚を伸ばさずとも胴体の位置を高くするため、主翼は逆ガル型に折れ曲がっています。ひたすらに、巨大な飛行機です。
▲P-51D "Miss Helen"です。映画『メンフィス・ベル』にも登場した機体で、実際相当数の敵機を撃墜したのだとか。
▲曇天の中を飛ぶ大戦機たち。
▲青灰色の空で、その迷彩が滅法効果的であることに気づきます。
▲襲いかかるような角度で、コルセアが視界に飛び込み
▲マスタングのパイロットは大層アグレッシブな操縦桿さばきで、圧倒的なロールレートを見せてくれます。
▲他の単発機よりも二回りほど大きな機体が、短い滑走距離でふわりと宙に浮かびます。さすが、艦載機。
▲毎朝昼飛ぶ大戦機たちを見て、律儀に毎日泣いていました。
▲珍しく、空のディテールがきちんと機体に絡んだ瞬間。
▲プログラムにはなかったのですが、レッドブルのP-38が参加していました。その迫力たるや……。
▲垂直に立った動翼が、揚力についての視覚的気づきを与えてくれます。
▲機体外板はきわめて滑らかで、外形の美しさが際立ちます。
▲P-38のことを好きだと思っていたけど、実物見てもっともっと好きになりました。
▲離着陸時のパイロットは、本当に横から自分の機位や姿勢を確かめます。
▲ありがとう、マスタング。
▲コルセアが、こんなにもカッコイイ飛行機だったなんて。
▲大柄なパイロットも、この飛行機のコクピットの中では小さく小さく見えるのです。
▲この磨きっぷり。
▲パイロットがアイコンタクトに応えてくれて
▲夕暮れ空をスピットが離陸していきます。
▲夕焼けをその腹に抱いて
▲空に響くはマーリンの協奏曲
▲夜空と昼空の隙間を跳ね返して
空を飛ぶ戦闘機がこんなにも美しいなんて、知りませんでした。
咆哮をあげるマーリンエンジンのサウンドがこんなにも叙情的だなんて、知りませんでした。
低く沈む太陽の光を反射する金属の曲線が、こんなにもエロティックだなんて、知りませんでした。
知らないことがいっぱいありました。
イギリスが完璧なのではありません。イギリス人が完璧なのでも、ありません。
グッドウッド・リバイバル・ミーティングに来ない人、来られない人たちの生活がどうなのか、この目で見たわけではありません。
このブログを読んでくれた人々が指摘しているように、来場者や参加者に有色人種の姿は見当たりません。
そう、これは完全に遠心分離された「貴族が主催の園遊会」のひとつなのかもしれません。
しかし、そこには「であるからこそ成立するホビーの姿」がありました。
ここにあるのは階級社会なのか、格差社会なのか、経済的なピラミッドの上澄みなのか。
文化や歴史に対する理解を共有し、誰しもが笑顔で参加する行事とはいかなる前提の上に成り立つのか。
果たしてこれこそが正しい娯楽のあり方なのか。そこにわかりやすい答えを導くことはできません。
しかし、間違いなく言えることは、趣味の世界を具現化したイベントをこれだけの規模で開催できる可能性があり、
そこに集う誰しもが気持ちよく過ごせる3日間がこの世には存在して、そこから得られることがたくさんある、ということでした。
人生でもっとも濃密で、思考回路を猛烈に駆使した3日間を経て、これを見た私にできることはなんでしょうか。
これを読んだあなたが感じたことはどんなことでしょうか。
ただひたすらに、異なる文化に触れた衝撃だけが、いまも脳味噌を支配しています。
by kala-pattar
| 2017-09-18 23:01
| 行ってきた