行ってわかった、エベレスト街道のホントのところの話。

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はい、年末年始にエベレストを見てきた話をさんざん書いたからぱたです。
書いてしまえばもうそれはそれはフツーのトレッキング日誌になってしまい、当人ははちゃめちゃにダルかったのですが
本当に書きたかったのは「で、本当のところはどうなってるんですか」というところです。こっちのがおもろい。

「エベレスト見てくる!」と東京を飛び出して半月もいなくなってたので、帰ってきたら「凄い!」「大変なんでしょ!」とみんなに言われます。
が、エベレスト街道は「登山」ではなくてあくまで「トレッキング」であり、海外旅行保険とかも登山には分類してません。
そもそも『地球の歩き方』にフツーに誰でも行けるノリで記載されていますし、ぶっちゃけ技術的な問題は一個もありません。

ただ、12月のエベレスト街道をソロで行くという話をする上で、問題があるとすれば3つ。

・めちゃくちゃに長い(最低でもトータル100km程度は歩くことになる)
・めちゃくちゃに高い(トレッキングのスタート地点が2700mくらい。最高点が5600mくらい。)
・日没時の気温が異常に低い(下がってもマイナス20度とかなんですが、暖房がない。)

この3点をクリアするツールと知識があれば、あとはカネと時間の問題です。老若男女、誰でも行ける。マジで。
とは言え、適当に行くと痛い目に遭うのでいくつかトレッキングについて他のサイトに書かれていない知見をまとめておこうと思います。
もう一度書いておきますが、以下は「12月のエベレスト街道をソロで歩く」ということに特化しています。オンシーズンの話は知らん。


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■日本からカトマンズに行く方法
日本から行く場合はどっかを経由して飛行機で行くことになります。ぶっちゃけキャセイで香港経由というのがいちばん時間のロスが少ないです。10万円〜。
日本を昼に出て、カトマンズに夜着。帰りはカトマンズを夜に出て日本に昼着。香港での乗り換えは3〜4時間程度で、無料WiFiもあるから時間はいくらでも潰せます。
猛者はカトマンズに夜着いたらそのままホテルでパッキングし直して早朝に国内線でルクラまで飛ぶ、というのをやるみたいですが、
心の準備とか足りないモノを買うとかのマージンがなくなるのでソロの人はカトマンズに1日いるといろいろと買えて強いです。

■カトマンズからルクラまで行く方法
で、カトマンズ〜ルクラの飛行機ですが往復およそ300ドルのフィックスプライス。しかしこれがもう七転八倒です。
ネットで検索すると全然飛ばないとか飛んでも乗れないとかそういう話ばっかり出てきてうんざりしていたのですが、現地に行って納得。
世界基準での「飛行機に乗る」というマインドがそもそも間違いです。

航空会社はいくつかあって日本からも予約できるんですが、現地で起こっていることは
「目で見た天気次第で手元にある飛行機を手当たり次第に飛ばすので、航空会社のスタッフが人力で人数と便を管理している」ということであります。

とにかく時刻表は無意味。飛べる、となったら飛ぶ。天気の安定した午前中に何回飛ばせるかは、物理的に飛行機が往復できる3回まで。
ルクラ便にアサインされているのは各航空会社とも2機程度なので、MAX6回しか飛びません(たまに無理矢理の7便とか8便がある)。
定員は20〜25名程度の飛行機なので団体客はまとめて乗せたいという力学が働き、個人の予約とか余裕ですっ飛ばされます。

どうすればいいか。これはもうどうしても乗りたいという圧をかけるしかない
チケットカウンターで紙をビラビラ見せながら「俺は飛ぶぞ。何時に飛べるか言うんだ。何時間待つんだ。今日飛ぶからな!」と無限に圧をかける。
「わかった。乗れるから座って待ってろ。」「飛ぶからな!いいな!!」というのを空港で10分おきにやります。
(その間もシェルパのガイドたちは「俺の客が乗るからよろしくなー」と割り込み圧をかけてきて、バチバチになります)

そうするといつの間にか顔を覚えられていて、団体の余りとかソロをまとめて飛ばす便を設定してくれるので、
マジックで適当な便名を書かれたチケットを強奪し、あとは乗るだけ。
どううまくやっても数時間は待つし、たぶん圧が弱いと6時間とか待たされるし、最悪「今日はダメだ」とか言われて飛べない。
(実際に飛行機が飛べない日もあるけど、俺は運良く行きも帰りも飛べました。)
そんな感じで各自頑張ってください。そういうのがめんどくさい人はガイドを雇いましょう。全部やってくれますが、相応にカネがかかります。

あと預けられる荷物は10kgまで(それを超過すると結構な手数料がかかる)。
今回は飲み水含む総重量が12kgになるようパッキングして、カメラとレンズと貴重品を手荷物にしてギリギリ重量制限をクリアできるようにしました。


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■ルクラへの飛行&トレッキング開始
ルクラまでのフライトは世界で一番ヤバイ空港とか言われてますが、アトラクションが好きな人ならめちゃくちゃ最高です。
コクピットも丸見えだし、ヒマラヤ一望できるし、クソ揺れるし尾根にぶつかりそうだしありえないところに滑走路ありますが、楽しい。
危険性をアレするとアレなのですが、ここの便はまあ5年に一度くらいしか墜落してないので運ゲーです。

着陸するともうポーターやらガイドやらが群がってきますが、飛行機からカゴ車にぶちこまれた自分のザックを引きずり出して歩き出しましょう。
ネパールの心優しい人たちをシカトするのが嫌だという人は「もうガイドは予約してあります」と言えばOKです。
で、滑走路端の道を歩いてルクラの村に入るゲートを右折するとトレッキング開始……なんですが、これ知らないと無理です。
俺は「えっ、どこが街道なの……」とルクラで10分ほど迷いました。やったことないRPGの最初みたいな感じで面白いです。
そういうのがめんどくさい人はガイドを雇いましょう。全部案内してくれますが、相応にカネがかかります。

■そういえば入山許可とかはどうなっているのか
ネットでエベレスト街道の話をググるとだいたい出てくる「トレッキング許可」と「国立公園の入園許可」についてですが、
悪名高いTIMSという制度は汚職の温床になっていたらしく、あっさり瓦解しておりました(2017年12月時点)。
カトマンズのツーリストオフィスにわざわざ出向いて「TIMS取得したいです〜」と言ったら「そんなものはない」と言われて拍子抜け。
何も持たずにルクラに飛んだら、まずルクラで2000Rs、モンジョの先、ナムチェ坂の前で3000Rsを支払うチェックポイントがあるだけ。
現金5000円少々とパスポート(国籍と名前をチェックされる)を持ってればOKです。証明写真はいらないし、カネは多分米ドルでも払える。
払うと支払証明書をもらえますが、これはPhunki Tengaにある陸軍のチェックポイントと、帰りの各チェックポイントで提示しましょう。
そういうのがめんどくさい人はガイドを雇いましょう。全部案内してくれますが、相応に以下略。

■歩いてるときにエンカウントするモロモロ
ひたすらにヤクが出現します。ほとんどは荷役用なんですが、これを避けるときに道の谷側に立っているとぶつかられてゲームオーバーになります。
ガスボンベとか積んでるヤクは自分の車幅がわかっていないので、山側に避けるのが鉄則。
あとめっっっっっっちゃウンコします。特に急な上り坂でリキむとすごい出ます。おしっこもしますが、こちらは弛緩したとき。
3500m以下ではヤクのウンコ&オシッコが光速で発酵して道が最高に臭いので、我慢しましょう。
森林限界を超えるとたぶん分解する菌とかがあんまりいないのか、ウンコが臭わなくなります。
なお、森林限界より上ではウンコがストーブの燃料になり、肉はステーキとして供されます。ヤク美味い。マジエラい。ヤク大好き。


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あと遠くからシャンシャンシャン……って鈴が聞こえたときは馬です。こちらは人間を運搬するパターンが多い。
こちらはヤクと違ってトウカイテイオー並のスピードでエンカウントするので、鈴の音を聞いたらマッハで山側に逃げましょう。
当たったら即ゲームオーバーです。


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あとは大量のベニヤ板とか巨大なキッチンとかコカコーラ9万リットルとかを運搬するポーター(シェルパ)ともよくエンカウントします。
彼らは完全に自分のペースで歩きたいし、エベレスト街道のことを藤原拓海の300倍くらい記憶しているので、コース取りも変えたくない人たちです。
トレッカーは彼らの補給によって生かしていただいているので、絶対にじゃまにならないよう道を譲ってあげましょう。


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■昼間にやること
太陽が出たら(谷底まで陽が届くのは8時半くらい〜)歩きましょう。太陽さえ出ていれば、止まっても死ぬほど寒いということはありません。

■夜やること
太陽が沈んだら寝ましょう。太陽が落ちると(16時くらい〜)、死ぬほど寒いです。

■宿屋の使い方
とにかくエベレスト街道には無数の村が存在し、ほとんどの村のほとんどの家がロッジとして機能できるようになっています。
まずは外観を見て、洗濯物や回りでたむろしている人々などを観察します。
直感で良さそうなロッジの玄関を開け、でっかいダイニングに行って「泊まりまーす」と言えばOK。
部屋をあてがってもらい、晩ごはんをオーダーしてとっとと温かいお茶などを飲みましょう。

宿泊料は100〜500Rsくらい(高度と規模によって違いますが、日本の感覚で言うと実質無料ですな)。
彼らはメシ代で生活しているので、なるべくいっぱいゴハンを食べてお茶を飲んでお金を払うとイイカンジです。
晩飯はカレーか焼きそばかチャーハン(全部ネパール風なのでうまい)、朝はトーストかパンケーキ(にジャムとかメイプルシロップを10ガロンくらいかける)。
高山病対策として鬼のように紅茶とかコーヒーを飲んで(最低でも1日1リットルは飲んでた)、
寝る前に沸騰させた水を湯たんぽ代わりにもらい(次の日の飲料水となるので、ただのお湯ではなく殺菌されていることがマジ大事)、それを抱いて寝ます。

これでいまの相場だと1日1700〜2000Rs程度。携帯の充電が500Rsくらいで、WiFiも場所によっては有料で貸してくれます。
だいたい1日2500Rs持ってれば生きていけますが、米ドル建てで払うのも嫌な顔はされませんでしたし、なんならレートが良い気がする。
ということでカトマンズではトレッキングの日数×2500Rsと、100米ドル程度をゲットしておけば死にません。
最悪現金ない場合はカード決済できる宿もバンバンあるのでとにかくなんとかなる。
ただし、ネットに書いてある物価の相場とかは大概古くなってるので、とにかく余裕を持ってもっていきましょうね。

■高山病とは
1日500m以上標高を上げると人間の身体は即時対応できなくてわりとゲームオーバーになります。
具合が悪くなって横になると高山病はますます悪化するので、下りるしかありません。
高山病にかかりやすい人はナムチェあたりの標高(3000〜3500mあたり)で2泊したほうがいいでしょう。
元気な人はディンボチェ(4400mあたり)で2泊し、周辺のサブルートを適度にトレッキングすればなんとかなるでしょう。


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■マジで高山病がヤバいとき
エベレスト街道ではマジでヘリコプターがタクシーみたいなノリで飛んでて、トレッカーがちょっと具合悪くなるとガイドがすぐヘリコプター呼びます。
(病人の輸送だけでなく、金持ちがエベレスト見ながら朝飯食うためだけに飛んできたり、遊覧飛行したりもできる。ヘリすごい。)
私はソロだったのですが、それでも道中で話したガイドたちは「ちょっとでもやばかったらヘリ呼べ。保険はクレカの付帯でイケる」とそそのかしてきます。
実際海外旅行保険入って無くてもクレカの保険でヘリ呼んでる人の話はネットでいくらでも読めますので、本当なんでしょう。
客の財布は痛まないし、ヘリパイロットは儲かるし、ガイドも客を死なせずにすむのでクレジットカードは持っていおいたほうが良いです。

■道とかどうなってんの?
正直日本の登山をイメージしてると全く違うのでビビります。しこたまゆるやかでしこたま長い筑波山みたいなのが無限に広がってる感じです。
なにせエベレスト街道は村々をつないでおり、ヤクとか馬とかがバシバシ通行する生活道路なので、広くてしっかりしてます。
アホみたいに急なところはないし、延々登りというところもあんまりありません。靴はぶっちゃけ登山靴じゃなくてトレッキングシューズでおk。
実際シェルパ族の人たちはナイキのスニーカーとかでガンガン歩いてます。

村は大小問わなければ最低でも1時間にひとつは見つかるし、ゴミ箱とかトイレとかも比較的多いです。
で、オンシーズンは銀座かというくらい人が多いらしいですが、オフシーズンは1日30人くらいすれ違うかなーという感じ。
まあ宿とかは空いてるのでもうソロだろうがなんだろうがウェルカム状態ですね。


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……ということで、いまパッと思いついた「そういえばネットに書いてなかったな」というエベレスト街道の情報でした。
また思いついたら書き足すし「これ検索してもよくわかんねえんだけど質問していい?」みたいなのはコメント欄とかTwitterとかに書いてくれれば
気が向いたときに返答したり追記したりします。
みなさんもエベレスト見に行ってください。むっちゃ面白いです。



by kala-pattar | 2018-01-15 21:00 | 行ってきた | Comments(0)
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