ガンプラがスケールモデルになった日
2018年 06月 10日

2018年6月9日、THE GUNDAM BASE TOKYOの限定商品(現地に行かないと買えないアイテム)として
結論から言うと、これはあの「実物大ユニコーンガンダム立像」のスケールモデルです。
おそらく「モチーフとして実体が存在し、それを縮尺した模型」という形をとったガンプラは、史上初です。
つまり、ガンプラはこのアイテムをもって、とうとう"スケールモデル"の領域に足を踏み入れたことになります。やばい。
プラモの歴史の教科書を作るなら、絶対に書かなきゃいけないことなので、書いときます。

このアイテムは可動と色分けというガンプラの長所を1/144スケールで極限まで追求したリアルグレード(RG)シリーズの
ユニコーンガンダムをベースに、新規にパーツを追加して開発されたものです。
が、上の写真を見れば分かるとおり、ウリのひとつである可動指は入っていません。「お台場のアレ」と同じ表情の固定された手が入っています。





光が全身のフレームから発せられるというユニコーンガンダムの立像の特徴を再現するためのギミックですが、
たしかに1/144スケールで可動モデルだとその再現は厳しいでしょう。
開発コンセプトとして「光る」というのが先だったのか、「動かない」というのが先立ったのかは知るよしもありませんが、
とにかく、「固定モデルで光る」というガンプラなのです。これは。




外装はほとんどRGの流用なので設計難度が高かったのでしょうが、それにしても可動に関係するパーツがないと、本当にサクサク組めます。
超絶可動がウリのガンプラが輪廻して、無可動のガンプラになる。
あらゆるユニットの角度がパーツの絶妙なダボ形状によって、お台場のスタチューと同じポーズに固定されていくさまは痛快です。



その昔発売されていた1/72スケールのメカニックモデルやジオラマシリーズが絵画的なイメージの3D化を目的とした固定モデルだったのに対し、
「動かないこと」を積極的かつ能動的に取り入れたこのモデルは「実物(=お台場にあるやつ)のポーズとギミックを再現したモデルとして成立しています。
(最近でいうと、Gフレームも非可動フレームを採用してましたが、あれは可動フレームに換装することまで含めた商品設計でしたね。)
「動くこと」が至上命題だったガンプラの、もっとも動くモデルが、"動かないモデル"になったこと。
もっと言うならば、お台場のガンダムはガンプラを大きくしたものです。
絵があって、ガンプラがあって、それを巨大にしたものがお台場に立って、それがもう一回小さくなって、目の前にある。
自在に動くガンプラと全く同じルックだけど、ポーズを固定されることで「お台場のアレ」のスケールモデルになる。
ガンプラ(と、ガンダムのデザイン)がすごく特殊で、妙な歴史を歩んできたからこそ起こった、奇妙な出来事だと思いませんか。

このプラモは「関節が動かないキャラクターモデルは無価値なのか?」という問いにもなっています。
「動くものが動かなくなったのだから退化だ」という人もいます。「動かないのに1万円もするのか」という人もいます。
しかし、動かないからこそ、「お台場のポーズ」を誰でも手に入れることができるし、光ることもできちゃうのです。
「お前はいままでプラモの何にカネを払ってきたんだ?」と自問すると、やっぱり「見たものがほしいなぁ」という自分にとって
このガンプラは「キャラクターモデル」であると同時に「スケールモデル(=本当にこの目で目撃したものの似姿)」であるところにグッと来る。

お台場のは武器もシールドも持ってませんから、武器もシールドも組む指示がないのも超ラクでいいんですが、
それ以前に可動ギミックのおかげでガンプラのパーツは増えたし、そのぶん組む時間もかかってることにもこのモデルは気づかせてくれます。
さらに、動かなければ、光ることができる。動かなければ、特定のエモーションを平等に受け取ってもらうことができる。
もっと想像力を働かせれば、動かない1/35のザク(すっごいディテールが入ってて、超かっこいいポーズが付いている)があったってイイじゃないですか。
戦車や船や飛行機と同じように、そこにスタティックにゴロンと転がっている、キャラクターのイカしたポーズ。
もしこのユニコーンガンダムが「アリ」なら、キャラクターモデルの世界の一元的進化(≒よく動くこと)に対して
なにか別の進化系統樹が作れるかもしれない、と思ってしまうわけです。
せっかくの大問題作、お台場でしか買えないのはちょっぴりもったいない感じがしますが、それでも価値は損なわれません。
「動かないガンプラ」を組む衝撃は、それほどまでに大きいです。
ぜひ。
by kala-pattar
| 2018-06-10 23:59
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