貨物列車の世界
2018年 10月 22日

Twitterのフォロワーさんから『貨物列車の世界』という本を頂戴しました。ありがとうございます。
さて、鉄道模型だワイワイと騒いでいる私ではありますが、HOゲージについては貨物列車に限って遊ぶことにしております。
客車列車や電車は、いつどのへんをどんな編成で走っていたのかという、「列車」としての姿形に意味があると思っているので、
どうしてもキレイに揃えないといけないという先入観があり、限られた予算で高解像度な鉄道模型を手に入れるのであれば、
車両一つ一つが異なる役割を持ちながら、それぞれにユニークな姿をしている貨車、そして電気機関車を楽しもうというマイルールに基づくものです。
(これはつまり、金がないことへのいいわけです。)
で、貨物列車というのは観察するのがなかなか難しい。なにせ我々は貨物列車に乗ることができない。
そのへんの駅に停まっているもんでもないので、貨物時刻表というすこぶる難解なものを片手に、「ここに何時頃にくるんじゃね?」と見に行くことになります。
さらに特定の機関車が特定の貨車を牽いてるところが見たいとなると、かなりバクチに近い様相を呈してきます。
貨物列車にはどんな種類があって、どんなふうに運用されているのだろう?と興味を持ったとしても、これがまとまっている本はあまりない。
……というか、撮影するとか分類するとかではなくて、「貨物列車とはなにか」「各列車がどんな役割を果たしているのか」というのを
ビジュアルとテキストでしっかりと詳説した本は現状これが一番なのではないかと思います。なにより、社会性のある章立てが本当に素晴らしい。

たとえば上の写真のようなものが何のためにあって、どんなふうに使われているのか。
ついこの間までなにも意識していなかったのですが、いちど自分が撮影した貨物列車に載っていると気になるじゃないですか。
そう、貨物列車も無秩序にその日の思いつきで荷物を載せているのではなく、各地から各地へ、決まった時刻に決まったものを運んでいるのです。
トヨタはなぜカンバン方式を使えるのか?玉ねぎや牛乳がそのへんのコンビニでホイホイ買えるのはなぜか?
海のない県のガソリンスタンドからガソリンがなくなってしまわないのはどうしてなのか?
めっちゃくちゃに長いレールを遠くに持っていかなければいけないときは?超重たくて道路では運べないほど大きい機械を遠くに持っていくには?
貨物列車を眺めることで、そういう疑問が解決されていくのはとてもおもしろいことです。

国内貨物輸送において、たった4%のシェアしかない貨物列車。しかし、決して無くなることのない物流の要。
「人間が移動するための手段としての鉄道」と「人間の暮らしを豊かにするための鉄道」が、同じレールの上を走っていることを知ると
毎日の通勤時に視界の端を走っていく貨物列車が、いつもとは違ったものに見えてくるはずです。
とかく機関車ばかりが注目される貨物列車を、輸送や物流といった見地からしっかりと解説する、とまえがきにある通り、
鉄道ファンならずともしっかりと読めてしまう、ニッチなようで非常に開かれた構成となっていますので、ぜひとも読んでみてください。
by kala-pattar
| 2018-10-22 21:47
| 鉄分