研究/グラフィティ用のスプレー缶を買ってみる

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先日「グラフィティ・アート用のスプレーがある」というのをクラブイベントにいた女子から聞かされた。
話によればそれはスペイン製で、徹底的に発色が良く、耐候性に優れまくっており、なにより「なんだか美味そうな匂いがする」というのだ。
考えてみればグラフィティというのは屋外の壁や鉄道の土手っ腹(表面の組成はさまざまだ)に描かれるものであり、
乾燥に時間がかかってチンタラと作業していればポリスに捕まってしまう。
速攻で発色してどんなものにも食いつき、速攻で乾くスプレー塗料というのはどういうもんなのか。気になる。



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▲当然ながら落書きは犯罪ということになっています。


しかもそれが東京都心で買えるというので、ドキドキワクワクしながらショップへと足を運んだのだった。
明るい店内にラックが並び、あれかなこれかなと悩みながら買う図を想像していたのだが、細い廊下の突き当りにカウンターがあり、
ショップの人に対してカウンター越しにああでもないこうでもないと要望を言うとそれらしき種類のスプレーを出してくれるというスタイルだった。
モノがモノなので、薄暗いところで小さな窓口を介して会話するのはなんだか背徳感があってよろしい。

スプレーを作っているのはMontana Colorsという会社で、吐出の圧や仕上がりによっていくつかのタイプに分かれる。
光沢の有無、乾燥速度、耐寒性能、容量などによっていろいろなシリーズ名が付いており、
さらに吐出の特性を変化させるキャップも15種類以上が存在しており、シーンによってこれを組み合わせて使い分けるとのこと。

俺はもっとも色数の豊富な"94"(低圧でラインのコントロール性能に長けており、ツヤ消しの仕上げとなる)から
蛍光オレンジとComarca Green(明るめのオリーブドラブに近い印象)を選び、
さらに"HARDCORE"(高圧、高光沢、速乾を謳っている)からシルバーを選択した。

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▲缶の上部にこのスプレーが何色なのかを示す樹脂パーツ(「ドーナツ」と呼ばれる)が装着されている。暗所でも緊張下でも色を間違えないための工夫だ。


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▲"94"の蛍光オレンジ。


"94"は信じられないほど圧力が低く、模型用缶スプレーを使っている人間からすれば「え?」と声が出そうなほど。
当然塗料の粒はきめ細かいとは言えず、飛距離もないので勢い近くでサッと吹き付けるような感じになる。
ただ、塗料のタレ感はあまりないし、何より発色は最高、乾燥もメチャクチャに早く、数分で触れるようになる。

塗膜を薄くキープする必要がなくて、細かい模様や狭い面積を塗るには近距離からストロークをバッチリと決めて描かなければいけないグラフィティだからこそ
こういう独特な吹き味のスプレーになるのだろう。とにもかくにも、発色は抜群。やや柚子肌のしっとりしたマットな仕上がりが得られる。
小さなスケールの模型に使うのは難しいかもしれないが、大スケールの模型をオブジェ的に仕上げたり、家具の塗り替えをするには使えるはずだ。
なによりエアブラシに移し替えたときにどんな性能を発揮するかが気になる。これは追い追い試してみたい。


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▲上から"94"のComarca Greenを塗装してみた。


蛍光オレンジを塗装してから10分ほど放置して、爪で引っ掻いてみたが塗膜は強固で剥げない。
マスキングテープを使って上からComarca Greenを塗装してみたが、隠蔽力は抜群。吹き味は蛍光オレンジと同じだった。
柚子肌は鋳造肌っぽい印象になるので、そのうちAFVモデルの基本塗装に使ってみようと思う。
……それにしてもこの"94"、本当に美味そうな匂いがする。甘くて温かい、とても有機溶剤とは思えない優しい香り……。危ない。


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▲こちらは"HARDCORE"のシルバー。缶のデザインがむっちゃかっこいい。かっこいいものを描く人はかっこいい道具を使うのだ。


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▲飛行機模型のランナーに吹いてみた。


"HARDCORE"は高圧を謳っているのでさぞかし凶暴な出方をするのだろうと思ったのだが、こちらも模型用スプレーより圧倒的に低圧。
粒子もデカくて、メッキのようなシルバーを期待していたので肩透かしを食らった。
……なるほど、これは確かに壁に描くためのスプレーだ……。そのように、チューニングされている。おもしろい……。


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▲キャップも数種類おまけで頂いたので、いろいろ試している。


グラフィティというのはいざ描いている動画を見てみると、本当に身体的なアートなのだな、と感じることがある。
ノズルの遠近と速度で線の太さをコントロールし、自分の身長と腕の可動範囲、旋回半径に応じた線で目一杯大きなラインを描いていく。
美しいグラデーションを作り出す人もいれば、パワフルな単色の面をグッと押し出す人もいる。
説明するのが難しいが、「人間のサイズ」という限界のなかで、すばやく字や絵を描く技能は単純に見ていて惚れ惚れする。

……願わくば模型もこういうふうにスマートに遊べたら面白いなぁと思いつつ、ひとまずグラフィティの世界の道具に触れてみた夜でありました。
見た目が同じスプレーでも、こんなチューニングが"あり"なシチュエーションもあるんだなぁと感じ入りながら、もうすこし研究を続けることにします。


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by kala-pattar | 2018-11-23 19:55 | プラモデル