天皇と神事
2019年 01月 21日
平成最後の初場所、中日。稀勢の里がいなくなったけど、白鵬は相変わらず白い注連縄を装備して土俵に上がる。
ハリもツヤも、りゅうとした筋肉も神々しい。
天皇皇后両陛下が国技館を訪れるあの空気は一種独特で、やはり天皇以外には考えられない、理屈抜きの粛然とした緊張感が場内を支配する。
取り組みの合間が引き伸ばされるにつれ人々は直立不動になり、いよいよロイヤルシートに現れた両陛下に、なんとも言えぬ嬌声とどよめきが巻き起こる。
すれ違ったヤンママ風の女性は、小さな男の子を手を握って歩きながら「どうしてだろう」と声を震わせつつ、双眸から滂沱の涙を流していた。
平成だとか昭和だとか、誰にどういう役割があるとかを超越した、なんだか感動的な状態に、人々はうろたえているのだった。
すべての取組が終わると、観客は弓取り式を見るのもそこそこに直立不動となって、両陛下が去るのを見守る。
国技館はやがて、いつまでも止むことのない、大きな万歳の声で包まれた。根拠の希薄な、しかし確かな多幸感が全員を笑顔にしていた。
まるで三島小説を読んだあとのような感触の残る、不思議な体験であった。
by kala-pattar
| 2019-01-21 20:11
| 町中での出来事