「女の子を組み立てる」という遊びの最新スタイル、"チトセリウム"にプラモの未来を見る。
2019年 02月 24日

「普通の人にとってプラモの代表格はガンプラ、ミニ四駆。ちょっとマニアックな人はスケールモデル(戦車とか戦闘機とかフネとか)を作るらしい。」
こういう認識でプラモのジャンル分けってだいたい合ってると思うんですけど、ここ最近は「動く女の子のプラモ」がひとつの分野として確立されつつあります。
コトブキヤならメガミデバイスとかフレームアームズ・ガールとか、ボークスならフィオーレとか、バンダイのフミナ先輩とかもこれに入りますね。
これらは女の子を忠実にプラモにするというよりも
ここ10年ほどで一気に地位を確立した「組み立て塗装済みの美少女アクションフィギュア」のプラモ化と捉え直してもいいと思うんですよね。
モチーフは人間ですから、当然しなやかなラインで、関節が十分に動き、多彩なポーズが自然にとれるということが求められます。
その仕組みをたぶんこの世で一番考えている男が浅井真紀という人で、日本のアクションフィギュア史のテストに絶対出ます。覚えよう。

で、こうしたシーンにグッドスマイルカンパニー(以下グッスマ)が放り込んできたのが今回のchitocerium(チトセリウム) LXXVIII-platinumです。
元ネタとなるアニメやゲームはありませんが、完全にプラモデル用の新規企画として爆誕し、Amazonでも結構な人気を博している模様。
発売は5月らしいんですが、試作品(ワンダーフェスティバルで限定販売された)をゲットしたのでこちらを組んでみることにしたわけだな。
素体の設計は先述した浅井真紀氏、そんで全体のデザインは『ブラック★ロックシューター』をはじめとした作品で知られるイラストレーターのhuke氏。
huke氏はこのブログを読んでウォーハンマーを知り、しこたまウォーハンマーのヤバいやつを塗る生粋のモデラーでもあります。







しかも「どう見ても入りそうにないボリュームのある服を着ているのに、なんだかよくわからんが最終的にめっちゃコンパクトになる」という驚きがあります。
文字で説明するのがむずいのでグッスマのサイトに乗ってた写真を借りるぜ天津飯。

この黒い外装がまた奮っていまして、透かし彫りのゴシックなデザインがhuke節の真骨頂という雰囲気であり、シックだけど可憐なキャラクターを演出しちょります。
当然ながらこの外装が複雑に変形してコンパクトになり、箱に入ったり出たりするんやろな〜というのはわかるんですが、
何がどうなってそうなるのかは組んだ人にしかわからんので、皆さんは自動的に組むしかないことになります。プラモは組んだ人だけわかる秘密の遊びなのだ。




ところによっては30〜40kgくらいのトルクをかけないと組み立てられない部分とかがありましたが、これは製品版できっと直ってるはず。
パーツ数はけっこう多く、それぞれが不思議なカタチをしていて、思ったよりも官能的な時間が流れます。
なんというかフィギュアとかプラモを組んでいると言うより「精密な機械時計を組んでいるような感じ」なんですね。機械時計組んだことないけど。
とにかくこう、小さい女の子のスラーッとした姿の中に奇妙奇天烈なカタチの機構がぎっちりと押し込められていて、なんだか背徳的なのです。
エロいというよりも、マッドサイエンティストの午後といった趣。



そしてこのスカートが取り付けられる女の子の機構と造形もなかなかに凄まじく、
「関節ごとにユニットが区切られる」「丸い棒が穴に入って回るから関節が動く」という意味では300円のザク(40年くらい前のプラモ)と本質的には同じなのですが、
人間をキレイに動かしてやろうという執念があらゆるところに練り込まれた恐ろしい設計なので、アウトラインが美しく、可動範囲もめちゃめちゃに広い。
可動範囲が広いというのはポージングの幅を広げるのと同時に、六角形の箱に押し込められるときに究極的にコンパクトな姿勢を取らせるためでもあるんだな。


昨今のプラモはやたらめったらいろんなポーズがとれるということばかりがクローズアップされますけれども(ガンダムは正座できなくてもいいと思うんだよね)
「プラモが動くとなんで面白いのか」というのは意外と忘れられがちなテーマです。
今回は「人間のカタチのプラモが動く」→「じゃあ六角形の箱に入れてみよう」→「箱の窮屈さと衣装のボリュームのギャップで驚かそう!」というアイディアが見られ
それを深い執念とともに実現してるのがすごいなぁと思った次第。これまた、技術の進化というよりもアイディアの勝利だよね。
このチトセリウムはシリーズ化するらしいので、これ以外の衣装の女の子もいろんなアイディアによって六角形の箱に押し込められるのでしょう。
プラモの前進は技術じゃなくてアイディアによってのみ起こるのだと信じて疑わないワタシにとって、
こうした「見たことのない仕組み」がボローンと立体になって手中に収められるという体験は貴重なのであります。
これを読んだみなさんもぜひ、「実際組めばわかるけど、しかし組まなければ分からない不思議なおもちゃ」を手にしてみてください。
by kala-pattar
| 2019-02-24 22:00
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