「女の子を組み立てる」という遊びの最新スタイル、"チトセリウム"にプラモの未来を見る。

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「普通の人にとってプラモの代表格はガンプラ、ミニ四駆。ちょっとマニアックな人はスケールモデル(戦車とか戦闘機とかフネとか)を作るらしい。」
こういう認識でプラモのジャンル分けってだいたい合ってると思うんですけど、ここ最近は「動く女の子のプラモ」がひとつの分野として確立されつつあります。
コトブキヤならメガミデバイスとかフレームアームズ・ガールとか、ボークスならフィオーレとか、バンダイのフミナ先輩とかもこれに入りますね。

これらは女の子を忠実にプラモにするというよりも
ここ10年ほどで一気に地位を確立した「組み立て塗装済みの美少女アクションフィギュア」のプラモ化と捉え直してもいいと思うんですよね。
モチーフは人間ですから、当然しなやかなラインで、関節が十分に動き、多彩なポーズが自然にとれるということが求められます。
その仕組みをたぶんこの世で一番考えている男が浅井真紀という人で、日本のアクションフィギュア史のテストに絶対出ます。覚えよう。


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▲女の子の体を節々で分割し、箱で出来たロボットのように隙間ができないよう可動機構を隠すという課題。


で、こうしたシーンにグッドスマイルカンパニー(以下グッスマ)が放り込んできたのが今回のchitocerium(チトセリウム) LXXVIII-platinumです。
元ネタとなるアニメやゲームはありませんが、完全にプラモデル用の新規企画として爆誕し、Amazonでも結構な人気を博している模様。
発売は5月らしいんですが、試作品(ワンダーフェスティバルで限定販売された)をゲットしたのでこちらを組んでみることにしたわけだな。

素体の設計は先述した浅井真紀氏、そんで全体のデザインは『ブラック★ロックシューター』をはじめとした作品で知られるイラストレーターのhuke氏。
huke氏はこのブログを読んでウォーハンマーを知り、しこたまウォーハンマーのヤバいやつを塗る生粋のモデラーでもあります。


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▲女の子の体がバラバラになって整然とワクに収まっている図。これがどう組み合わさるのかは直感的に理解できないっすね。


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▲スライド金型で可動軸を打ち込む穴などが開いており、文字通り身も蓋もない感じで「プラモ」になっております。女の子が。


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▲肉です。結構ピンク色で、独特の肌感です。これもどこが何になるのか全然類推不能で最初はドキドキします。


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▲こちらもスライド金型で身も蓋も(略


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▲小さな関節のパーツはハードとソフトが選択可能!スムーズなポージングと保持力のせめぎあいは可動プラモの要所なので、こうした配慮は面白いっすね。


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▲手も小指の先ほどの大きさしかないのですが、色んな表情のものが左右5個ずつ付属。


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▲顔は3つの表情が作り分けられ、印刷済みのものが付属。プラスαとして仕掛けがありますが、これは買った人に味わってもらいたいので隠しておこう。


このプラモのめっちゃ面白いところは、「小さい六角形の箱も自分で組み立て、完成後は女の子がギチギチと折り畳まれてその中に入ってしまう」というギミック。
しかも「どう見ても入りそうにないボリュームのある服を着ているのに、なんだかよくわからんが最終的にめっちゃコンパクトになる」という驚きがあります。
文字で説明するのがむずいのでグッスマのサイトに乗ってた写真を借りるぜ天津飯。


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▲この写真を見たとき「うおー!かわいい&不思議!!」という気持ちになりました。箱から女の子がニョキッと出てくるストレンジさ。


この黒い外装がまた奮っていまして、透かし彫りのゴシックなデザインがhuke節の真骨頂という雰囲気であり、シックだけど可憐なキャラクターを演出しちょります。
当然ながらこの外装が複雑に変形してコンパクトになり、箱に入ったり出たりするんやろな〜というのはわかるんですが、
何がどうなってそうなるのかは組んだ人にしかわからんので、皆さんは自動的に組むしかないことになります。プラモは組んだ人だけわかる秘密の遊びなのだ。


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▲外装の黒いパーツを接写。塗装してくれ〜と言わんばかりのディテールですが、何色に染めるか悩んでしまいますね。


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▲これが外装の各パーツをつなぎとめる小さな関節パーツ。細長いホームベースのようなカタチのパーツは意外な使い方で、組んでみると声が出ます。かっこいい!


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▲こちらが箱。プラモの入る箱を自分で組むというなんだか倒錯的な状況が発生しますが、こちらはテラテラの光沢がニクいです。


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▲箱のフタ。真ん中の白いマークはあらかじめ印刷済み。コスメのケースみたいですごく良くないですか。


今回のものは試作ということで、パーツの嵌合(組み立てのときのはめ込み具合)が異常に固く、
ところによっては30〜40kgくらいのトルクをかけないと組み立てられない部分とかがありましたが、これは製品版できっと直ってるはず。

パーツ数はけっこう多く、それぞれが不思議なカタチをしていて、思ったよりも官能的な時間が流れます。
なんというかフィギュアとかプラモを組んでいると言うより「精密な機械時計を組んでいるような感じ」なんですね。機械時計組んだことないけど。
とにかくこう、小さい女の子のスラーッとした姿の中に奇妙奇天烈なカタチの機構がぎっちりと押し込められていて、なんだか背徳的なのです。
エロいというよりも、マッドサイエンティストの午後といった趣。


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▲そして現れたのがこのスカートのパーツ。メカニカルでありながら、明らかにゴシック好きのする「今までになかったプラモ!」の匂いがします。


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▲角度を変えて。小さなヒンジが大量に組み込まれていて、華奢な女の子に大きなボリュームを付けてくれます。


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▲これがパタパタと変形して、六角形の板2枚が向かい合った状態になる。格納時はその空隙に女の子が体育座りで収まるするというカラクリなんだな!


とにかくこのスカートのデザインと機構が面白くて、パタパタクキクキと遊んでしまいます。
そしてこのスカートが取り付けられる女の子の機構と造形もなかなかに凄まじく、
「関節ごとにユニットが区切られる」「丸い棒が穴に入って回るから関節が動く」という意味では300円のザク(40年くらい前のプラモ)と本質的には同じなのですが、
人間をキレイに動かしてやろうという執念があらゆるところに練り込まれた恐ろしい設計なので、アウトラインが美しく、可動範囲もめちゃめちゃに広い。
可動範囲が広いというのはポージングの幅を広げるのと同時に、六角形の箱に押し込められるときに究極的にコンパクトな姿勢を取らせるためでもあるんだな。


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▲こんなふうに、ぎゅっと関節を曲げたポーズができるので、ちょこんと座ったディスプレイもかわいい。


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▲箱はディスプレイスタンドにもなっていて、背中を固定してくれるアームも付属(もちろん箱に収納できまっせ)


昨今のプラモはやたらめったらいろんなポーズがとれるということばかりがクローズアップされますけれども(ガンダムは正座できなくてもいいと思うんだよね)
「プラモが動くとなんで面白いのか」というのは意外と忘れられがちなテーマです。
今回は「人間のカタチのプラモが動く」→「じゃあ六角形の箱に入れてみよう」→「箱の窮屈さと衣装のボリュームのギャップで驚かそう!」というアイディアが見られ
それを深い執念とともに実現してるのがすごいなぁと思った次第。これまた、技術の進化というよりもアイディアの勝利だよね。
このチトセリウムはシリーズ化するらしいので、これ以外の衣装の女の子もいろんなアイディアによって六角形の箱に押し込められるのでしょう。

プラモの前進は技術じゃなくてアイディアによってのみ起こるのだと信じて疑わないワタシにとって、
こうした「見たことのない仕組み」がボローンと立体になって手中に収められるという体験は貴重なのであります。

これを読んだみなさんもぜひ、「実際組めばわかるけど、しかし組まなければ分からない不思議なおもちゃ」を手にしてみてください。




Commented by 影狐 at 2019-03-01 23:56 x
まあ、何もない1からの試みであれば、凄いと思いますが、ブキヤのFA-Gやメガミデバイス等、前例となるプラモがあるので、本製品はそこから「可動域を向上させてポージングを多彩にした」と言えます。
by kala-pattar | 2019-02-24 22:00 |  →SPRUE CRAZY | Comments(1)
“LWGY”