新幹線変形ロボのプラモで味わう「変形しない勇気」の話
2019年 03月 03日
ロボットが変形するシーンだけでドバドバ泣いてしまうアラフォーになるとか、自分でも信じられないんですけども
『新幹線変形ロボ シンカリオン』の前ではそういった現象が起きるので、困ったもんです。
鉄道が変形してめちゃくちゃかっこいいロボットになって、ひたすら真っ直ぐな小学生が父親や仲間と日本を守る話、最高じゃないですか。
……つーわけで、グッスマのMODEROIDブランドで発売された「シンカリオン E5はやぶさ」をようやく組んだぞ。すげーかっこいい。
つまり、見ようと思えばホンモノが見られてしまうというところにあるわけです。
出張のときに東京駅のホームに新幹線がスルスルと入ってくるのを目にしただけで、「お前ももしかしたら変形するのか……」と思って目頭が熱くなってしまう。
人間の認知を書き換えるフィクション。現実と虚構の境目を曖昧にする物語。そう、変形ロボットは玩具の話ですが、新幹線は現実の話ですね。
さて、「変形ロボットの模型」は変形しなければいけないのか?
現実の新幹線は変形しないので、新幹線の模型としては、たとえばNゲージとかHOゲージがありますな。
シャープで繊細で、ツルッとした艶を持った塗装で仕上げられていて、そっとレールの上に乗せれば軽いモーターの唸りとともに走ることさえできます。
新幹線の模型はこれが「正解」ということでいいと思います。
(っていうか、モデロイドのE5とNゲージのE5はだいたい同じスケール感なので今すぐNゲージのはやぶさ欲しい。変形前後の完璧な模型があるって素敵。)
ロボットの模型というのは人型でガシガシ動かしていろんなポーズがとれること、つまり「アニメの絵」をどうにかして再現することがひとつの「正解」だと思います。
しかし、新幹線を変形させるとなると、ことは一気に複雑になります。
フィクションの世界の変形ロボは、変形の前後で質量や体積が変わったりパーツの厚みを無視したり無限の強度を持ったヒンジを内蔵することで成立している。
しかし立体物でこれを再現しようとするといろんな制約によって「おもちゃ的/プラモ的なアレンジ」が必要になったりします。
さらに、新幹線が変形するなら新幹線の表面に「ここから割れます〜」というラインが縦横に走ることになり、それはそれで「実在の新幹線」と少し違う。
(もちろん、おもちゃやプラモで完全変形を目指すために逆算してキャラクターデザインをしておくという手法もありますが、それはまた別のお話。)
ということで、このプラモは「変形しない」という選択をして「かっこいいロボットがガンガン動く」ということをバリューにしたと考えられます。
これによって「組むのが楽(複雑で繊細で強度のアヤシイ変形機構をちまちま組まなくても済む)」というメリットが生じるのはすごく大きいですね。
「変形"しない"」と書くとなんだか後ろ向きでネガティヴな感じになりますが、「変形"させない"」というのは、勇気ある選択なので大歓迎です。
何かを模型にするとき、その目的はなんだろう?というのはメーカーもユーザーもつねに考えるべきだよな、と思いますですね。はい。
選ぶ、という行為には、必ず勇気が伴います。些細なことのようだけど、大事だよね。
みなさんもこのシンカリオンを組んで「プロポーションとアクションに全振りした"変形メカ"のプラモ」が持つ魅力を感じていただきたいです。ぜひ。
by kala-pattar
| 2019-03-03 23:26
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