タミヤ1/24 フォードGTに教わる「組まなきゃわからんカタチの秘密」

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カーモデルが初めてだろうが、プラモデルが初めてだろうが、とりあえず買ってパチパチと貼ってみるといいです。
カースタイリングの妙味というものが、指先から直接ギガビットイーサネットで脳に入力される模型です。
組んでいて「なるほど〜!!!」と何度も叫びました。フォードのデザイナーと、タミヤの開発マンに乾杯。



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▲フォードGT40というのはこういうクルマです。クルマ!という感じの物体ですが、実物は恐ろしくひらべったくて、ノーズがとんでもなく長い。


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▲これを現代的に解釈して作り直したクルマがフォードGTの現行型です。確かに似ている。


クルマの模型というのはだいたいがシャーシ(下にある平べったい板)に座席とタイヤとエンジンを取り付け、上にボディをかぶせてハイ完成という感じです。
エンジンをまるまる再現するのか、裏返したときに排気管が見えるか、みたいなブレはありますが、和風しそおろしハンバーグかチーズバーグディッシュかの違いです。
そう、カーモデルというのは基本的にびっくりドンキーであり、「ハンバーグ食べよう!」→「今日はどんな味付けかな」という感じで選べます。
しかし、このフォードGTはびっくりドンキーに入ったら天丼が出てくるくらいのインパクトがあります。
なぜなら普通のクルマのフリしたスーパーカーだからです。

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▲クルマなのでタイヤがあります。メッキホイールはしっとりとしたシルバー。


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▲ホイールの中にはディスクブレーキが収まります。


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▲エンジンがあって(見えるところだけなので上半分しかない)


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▲ハンドルがある。あたりまえです。


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▲何かしらのハニカムな網目がカチーッと彫られており……


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▲黒いパーツはなんだか有機的に美しく光り輝いております。


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▲シャーシは半ツヤ黒で塗るところが最初から半ツヤ、ツヤあり黒で塗るところが最初からツヤありになっています。塗らんでも完璧やないか。


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▲セクシーなリア・サスペンション周りを組み上げます。複雑に見えますが、バチバチビタビタ組めます。快感。


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▲フロントサスはシャーシと絡み合うように存在しています。完成後も裏返せば見えるセクシーゾーンです。


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▲新型フォードGTをサイドから見ます。普通のクルマのスタイルに見えますね。ノーズがあって、キャビンがあって、そのまま後ろに流れるようなカタマリ。


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▲しかしケツから見るとキャビンの両サイドからテールを3分割するように2本の巨大なトンネルが存在することがわかります。普通じゃないですね。


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▲ボディパーツを見ます。巨大なノーズから後ろに向かってぎゅーっと細くなり、左右の稜線はエンジン〜トランスミッションの幅に絞られます。


新型フォードGTの真の姿は上から見たときに四角いのではなく、
二人乗りのキャビンと昔のF1マシンをむりやりくっつけたような涙滴型になっている、というのがこのパーツを見たときに直感的に理解されるわけです。
このパーツこそがこのクルマのエッセンスであり、本来の「走るために必要なカタチ」で、そこ以外はなんというか見た目の問題なんだなーという。
これはミニカーだと完成しちゃってて見えないし、私のような凡人はこの形状がクルマの中に隠されていることを見抜くことができない。
しかしプラモなので誰かが分解して「こーなってるんすよ実は!」と教えてくれる。プラモってそういうところがメリークリスマスなんですよね(沢尻エリカ)。

タイヤがむき出しだと危ないし空力的に不利なのでしかたなくカバー(フェンダー)をくっつけ、タイヤの前に昔と似たデザインのライトを配置している。
なにも入っていない左右のフロントタイヤの間にむりやりラジエーター(エンジンを冷却するための装置)を突っ込んでスペースを有効活用している。
私はクルマのこと全然詳しくないのですが、ボディパーツに収まるそれぞれの位置関係を見るだけで「なるほど〜〜」となるわけです。
構造がわかると言うほど内部が再現されているわけじゃないんだけど、無駄なスペースがボディの内側に隠されているわけではない、ということは理解できる。
つまりこれ、「ほとんどフォーミュラマシンみたいな中身に往年のフォードGTのガワをかぶせたような気持ち」で作られたクルマなんだな、と。


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▲ボディ後端部のパーツ。当然こちらも左右リアタイヤを隠すだけの幅があって、テールランプと排気管を突き出すための2つの穴がある。


さっき「キャビンの両サイドから2本のトンネルがケツを3分割するように貫通している」と書きましたが、むしろそれは結果論であり、
ルーフからリアフェンダーに向かって2枚の板(フォードはこれを「バットレス」と呼ぶ)がゼツミョ〜な角度で渡されている、というのが本質でしょう。
リアウイングに見える何かは、クルマの輪郭を保つためにくっついた板(=意匠)としても150%機能している。おもしれー!

つまり、キャビンがどーんと盛り上がっていて、四隅にフェンダーさえあればそれでクルマとしては成立するじゃろうという予想を裏切り、
昔のGT40のスタイリング(ボディのカタマリとしてのカタチ)を彷彿とさせる方法を考えたのだろう、となるわけです。


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▲これがリアのサイド〜バットレスを構成するパーツです。シャープなアウトラインの中に包含された艶めかしい曲線がタマランヌ。


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▲完成形が全く読めないエキサイティングな出会いが手のひらのなかで核融合し……


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▲巨大なノリシロはバファリンを上回る優しさでもって我々をもてなし……


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▲これがこうなって……


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▲こうじゃ。


いつものごとく、ボディを好きな色の缶スプレーで何も考えずブーッと塗った以外は、せいぜい室内と窓枠を黒でドーンと塗って、
ブレーキランプとウインカーを赤とオレンジに塗り分けた程度で、あとはまったく塗装していません。
表面の光沢はGSIクレオスの「Mr.プレミアムトップコート 光沢」をバーっと吹いて、磨きもせずにそのままでおしまい。
こういう作り方をしていると、なんだかもったいないことをしているような気持ちになる人もいるかもしれません。
しかし、これでもクルマのカタチをひとつ覚えたと思ったら、すごくオトクな気分になります。

プラモというのは「組んだ人だけがカタチを我が物にできる遊び」でもあります。
一球入魂、最高のテクニックで最高の完成品を得る!という遊びも楽しいですが、
オレはいま最高のテクニックを持っていないし、なによりじっくりと向き合うだけのまとまった時間が取れない期なのです。
だからこうしてクルマのスタイリングの哲学や奥義を、こんなにも手軽に、自宅の机の上で追体験できちゃう遊びもまた、最高に楽しい。


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▲いや、屋根から伸びる板はどうやってくっついているのか!普通のクルマっぽいシルエットになるのはどうしてじゃ!それは組んだキミだけが知っている。


いま、「次はどのクルマのスタイリングをペロッと舐めて、わかったようなことを書こうか」とムフムフしています。
みなさんもクルマの模型を適当に貼って「ここのカーブはこういうことなのだ!」みたいなヨタ話を書いてくれると
私はそれを喜んで読みたいし、そのヨタ話を確かめるためにプラモを作ってみたくなると思うんですね。
……ということで、まずはこのわかりやすーくおもしろいフォードGTのスタイリングを皆さんも組んで理解して
さらに「このクルマ、じつはおもしれー!」というのを教えてくれると幸甚至極なのでございます。
ぜひ。





by kala-pattar | 2019-05-21 23:48 |  →SPRUE CRAZY | Comments(0)
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