全長1mオーバー、LEGOで組む巨大なスター・デストロイヤーに本物の「優しさ」を感じた話
2019年 12月 22日
このブログでスター・ウォーズのプラモの話をしすぎていたため(なのか?)、レゴジャパンさんから突然ものすごいハコが届いたのは先月のこと。
そう、こちらのスター・デストロイヤーはこのブログに「ぜひ組んでみてほしい」と提供いただいたものなのであります。レゴジャパンさん、太っ腹&すごい自信です。
(追記/ちなみに「ブログに書く書かないはおまかせします!」ということでしたので、この記事は私の自由意志で書いております。)
で、やっと完成しましたところ、まあこれがデカい。問答無用にデカい。全長110cmというのは、いきなり家に5歳児が爆誕したような状態です。
家に5歳児が爆誕すると、まあ大変なことになりますね。つまりまあ、我が家のリビングはまさにそのようなことになっています。
しかし、これを組んでいる20時間は、圧倒的な優しさに包まれた幸福な時間として、忘れがたいものになりました。
『スカイウォーカーの夜明け』で観た悪夢みたいな艦隊のことは忘れて、みんなもLEGOで癒やされよう。すごいぞLEGOは。
私も小さいときはデュプロ&レゴで育ちましたので、「いやー最近のレゴはすごいねー」みたいな感じで
高額ですごい再現度の製品をネットでチラチラ見てはいたのですが、まさかこんな巨漢に挑むことになるとは思ってもいなかった。
ふだん巨大なプラモの開発とかをやっていて、「デカイの嬉しいじゃん」とか言ってたけど、マジで家にデカいものがあるとヤバいですね。
レゴというのは大変危険な遊びで、特定の商品で特定のカタチを作るのも楽しいし、オリジナルなカタチを創作して遊ぶのも楽しい。
しかも規格が統一されているから無限の順列組み合わせがあり、それはすなわち底なしに買い続けて増殖しまくる可能性を示唆しています。
「碇はん! レゴは、レゴにだけはハマらんといてくださいよ!!」と言われたかどうか忘れましたが、
とにかくモデルガンとレゴはハマると危ないのでオトナになってからは触らないようにしていたのです。
で、私は勘違いしていたんですね。
「いやー、レゴって言ったってひとつのポッチを1ドットとして考えて、立体的にドット絵を組むようなもんでしょ」と。
つまるところ「無限に巨大化すれば相対的に1ドットが小さくなるんだから、そりゃ再現度も上がるっしょ」という考え方を持っていたんです。
プラモで言うと、実物と同じようにバラバラの粉々にパーツを分割すりゃ「再現してる!」という気持ちになるかもしれないけど、
それって組むのめちゃくちゃ大変だし、プラモの設計するのにアタマ使ってる感じがしなくない?という話で……。
どっこい、このスター・デストロイヤーを組んでいるとどうやらそういうことではない。
大胆に省略したり、パーツのカタチを見立てに使ったり、思いもよらない方法で見え方をガツンと変えたりというテクニックが随所に盛り込まれていて、
「これなんだろう……何を組まされているんだろう……」と思っていると、バコーンとカタチが見えた瞬間に「すっげー!!!」と叫んでしまいます。
正直組んでる最中に20回くらい「天才じゃん!」「頭良すぎか!?」「優勝では??」と叫びました。
これまたプラモで言うと「あっと驚く分割で、思いもよらぬカタチができる」という楽しさが満載なんですよね。レゴ。
レゴは規格化されたブロックを組み立てる遊びなので「こういうカタチのものを作りたい!」と思ったら
なんかレゴの社内にあるパソコンが機械的にパーツ分割考えてドロロロ〜ンと設計図が出て来そうなもんですが、そんなことはないらしい。
説明書を読むと、モデルデザイナーという人がいて、その人があーでもないこーでもないと試行錯誤して全体の構成を考えているわけです。
つまり、俺が「ひえー!」と驚いているのは、このモデルデザイナーの頭の中を覗いて「そんなの思いつかないわ!」と慄いているのと同じ。
要はこれ、めっちゃLEGOで遊び倒してるジェダイみたいな人の思考をなぞりながら、自分も必ず同じものを手に入れられるという遊びなんだね。
さっき書いた「大きければ解像度が上げられる」というのはウソで、
最小のパーツ数の組み合わせで思いもよらぬカタチが出来上がり、それを集積することでなんだか異常にミッチリしたものが完成する……。
デザイナーはLEGOのパーツの「常識」を超えたところで、つねに「こんなふうに使ったらどうだろう?」と
ユーザーの3周も4周も先で音速のレースをしているんです。
見慣れたスパナが、スキー板が、家の窓が、フライパンが、クルマのドアが、レンガのアーチが、まさかまさかの用途に化ける瞬間。
これに感動すると、「プロのレゴビルダー」という職業が存在するのもわかる……。まさに「匠の仕事」ですよ。
レゴブロックという制約があるなかで、モチーフを認識して、解体して、再構築する。これはプラモの本質と根底でつながっています。
ハコから袋をドバドバっと出して、1番から19番までに分類する。どの番号まで袋が開いたかによって、全体の進行具合が何となく分かる。
4784ピースのブロックのなかから目的のものを探すのは悪夢なので、こうした気遣いがまず嬉しい。
で、袋の中身を見るとこれがなんだか異常にカラフルなんです。グレーの塊を作るのに、なぜこんなにカラフルなのか?と思うじゃん。
これは組み始めてわかったんですが、見えなくなる部分の複雑な構造を組み立てるときにさまざまなポッチ数のブロックを使うことになります。
そうすっと必然的に大量のブロックのなかから似た形状のブロックを避けて所定のブロックを拾っていくという作業が発生しますよね。
(というか、LEGOを組み立てている時間のなかで「パーツを探している」というのは結構な割合を占めます)
ここで「2✕10のプレート……2✕10のプレート……いちにいさんしい……違う、これ2✕8だわ……」という事態が予想されますが、
最初から2✕10と2✕8のブロックで違う色を採用しておくことで「ポッチ数を数えずに、色で拾えば良い」ということに気づくのです。
説明書には言葉が書かれていませんが、このメッセージに気づいたときに「うーわ頭いいなこれ……」と思ったわけです。
さらにこの色付きブロックは、無機質なグレーの外殻を作るときにも活躍します。
裏から補強や骨格との接続用ユニットなんかを作っていくときに、アタリがないと「このブロックはどこにつければいいんだ?」となりますが、
これもいちいち数えなくていいように、わかりやすい座標を起点に色付きブロック同士を隣接させて組み付ける仕様になっています。
つまり、突然「ここにこのブロックを付けてね」とぶん投げるのではなく、
「まずここが起点で、上に2✕3、右に4✕8、下に2✕2行ったところに付けますよ」というのを、ブロックの組付けをしていくだけで誘導している。
目的地まで、言葉を使わずに地図を作ってくれる(あるいは、自分で気づかぬうちに測量しながら目的地に向かっている)というのが
このLEGOを組んでいてビビったところであります。
また、説明書は絶対に死角がないよう考え抜かれており、フルカラーで縮尺も一定のまま進みます。
デザインにも印刷にも猛烈なコストがかかっていますが、「絶対に誰にでも(言語を解さない人間にも)組めるようにする」という気迫にあふれています。
ひとつのブロックを組み付けるのに、A4の半分を使うことすらあります。ホスピタリティの極み。グランマンマーレの優しさ。
もうひとつ、スター・デストロイヤーっていうのは各面が微妙な角度で構成されたくさび形(大まかにいうと四角錐)の宇宙船です。
ブロックでどうやってこの角度を決めるのかな〜というのが組む前に興味を持ったポイントなんですが、これもまた工夫のカタマリ。
無数に穴の空いた棒にピンを打って、そこに適正な本数の筋交いを飛ばすとバシッとカタチが決まります。
ピンを打つ位置がめちゃくちゃに練り込まれているのはもちろん、そこにガンプラで言うボールジョイントみたいなものの受けを作り、
外板をバチンバチンとハメていくとあっという間にスター・デストロイヤーが現れる……。
これは言葉で説明するのがすごく難しいのですが、全体的に三角関数をこれまた言語抜きで説明されている状態が延々続くんですよね。
小学生のときにこれを組んでいると、多分中学の勉強でめっちゃ有利になると思います。
とにかく、ユークリッド幾何学が手から直接インストールされるんですよ。俺の小さいときにもこういうLEGOがあったら良かったな……。
「LEGOってブロックであることが本質でしょ?特定の形状を再現するのに専用パーツ使うのってずるくね〜?」と俺も思ってました。
思ってたんですが、このスター・デストロイヤーは正直そんなに「専用パーツ」が多いわけではない気がします。
むしろ、組んでいると「お、おまえは俺が5歳のときに散々遊んだアイツ!(の色違い)」という衝撃のほうが多い。
ウン十年カタチを変えずに生き延びてきた、遺伝子レベルで意識化に刻み込まれているあのブロックが、いまここでスター・デストロイヤーになってる!
この驚きと喜びは、脳に新しい刺激を与えてくれます。たとえば……
シールド発生機(両サイドの丸いやつ)を支えているのは筋入りの2✕2円柱パーツなんですが、
その周囲をぐるりと取り囲んでいるのはLEGO組んだことある人なら絶対知ってる「可動レバーのパーツ」なんですよね。
言ってみれば「玉のまわりに添えてあるだけ」なんだけど、これがスター・デストロイヤーのオタクなら「ニチャア……」と笑うくらい、良い見立て。
さらに真ん中のX型のレーダーを構成しているのはこれまたみんなご存知「自動車のドアでよく見るパーツ」を横に倒して使っている……。
(根本がヒンジになっているので後ろに90度倒せば『帝国の逆襲』版も再現できるというのはオタク用ナイスギミックです。)
こういう「知ってる人がぜんぜん違う役をやっている」というのがむっちゃおもしろいんですよ。ほんとに。
と、レゴジャパンさんに忖度しているわけでもなくべた褒めしてきましたが、
やっぱり自重なりの弱点もないわけではなく、「ちょっとそこの接続はどうよ!」とか、あまりに大きく組み立てるパーツはどうしても歪みが出たりします。
(これは商品写真でも微妙に歪んでいるので、組付けの上手い下手というより、不可抗力っぽいなと思います)
しかし、思ったよりもガッチリしていて、完成重量(6kgくらい?)を考えても剛性感がすごいです。
説明書の冒頭、モデルデザイナーへのQ&Aに「完成後にブンドド出来ますか?」という質問があるんですが、
艦橋前のパーツをちょいちょいと外すと中のキールが露出するので、これを握れば片手でひょいと持ち上げられる。
ただ繊細なモデルが組み上がるだけでなく、ちゃんと遊ぶときのこと(=モデルの頑丈さ)もしっかりと考えられていて
「迷子にならないように誘導しながら、すげえ精密なものが完成して、さらに完成後にブンドドして遊べる」というのは本当にすごいことです。
塗装も接着もしていないし、ボッキリ折れるようなところもないからオカンの掃除機が直撃してもホイホイ直せるし……。
こんなに巨大だと(お値段的にも)家が爆発しかねませんが、しかしその価値は十二分にあります。驚きが体積比でズンズン脳に入ってくる。
カタチを作る喜びと、モノの解像度。そして見立ての楽しさ。こうしたことってプラモを作っているとどうしても忘れがちなんですが
底抜けに親切な設計と手ほどきにより、新たな境地に導かれた気がします。すごく勉強になった!
音楽を聴きながら、コーヒーを飲みながら、休みの日にゆっくりとLEGOを作る……。やっぱり危険だよ、この遊びは。
みなさんも、年末年始にテクニカルでカッコいいLEGO、組んでみませんか?
ぜひ。
by kala-pattar
| 2019-12-22 18:48
| STAR WARS