「組みたくても組めないプラモ」を持つ悦び。
2020年 04月 03日
もう全貌が見えるじゃないですか。
ランナー1枚に、パーツがビターっと配置してあって、これで戦車が完成するということがもう把握できる。
視界の中に、これから起きることのすべてが美しく収まっている。
こういうプラモって「作る必要がない」というか、作ったらこの美しい全能感が消えてしまうと思って、作れないのよ。
正確に言うとこれはTANKS The Modern Ageというテーブルトップゲームの拡張ユニット、つまり「ボドゲに使うとええよ」というプラモです。
なんだよ、ゲームのコマかよ……とこのページを閉じるあなたはケツの穴が小さいぜ。だって最初に「お、プラモだ」って思ったでしょ?
ステイチューン。
戦車1両のパーツとスペック書いたカードがブリスターパックにゴロンと入って売られてるんだから、
プラモの人からすればプラモ、ゲームの人からすればゲームのコマ。
山善の食器乾燥機でパーツを乾かしているキミに、どう見てもプラモなものを「ゲームのコマ(笑)」とバカにする権利なんかないぜ、ベイベー。
このゲーム、1/100の戦車をわりと簡単なルールで動かして、特殊な定規で貫通判定をするというフィジカルな楽しさがウリ。
スターターセットはT-64とエイブラムスだけだが、際限なく売られている戦車とヘリを追加していくことでめちゃくちゃな大規模戦までできちゃう。
実際く、アメリカ人とかは信じられないくらいデカいテーブルでちまちまちまちま戦車を動かして3日3晩プレイしたりしてる。楽しそう。
で、今回見せてるのは拡張パックのM60 PATTON。
とにかく、A5くらいのランナーにパーツがビシッと整列していて、そのひとつひとつがシャキッとしているのがよろしい。
1/100だから解像度的に諦めるところ、組み立てるときにダルいから一体にしてあるところ、というのもあるし、
反面車体のテクスチャを部分的に変えたり、ルーバーやヒンジを律儀に彫刻したりと「取捨選択のセンス」が良いところが見ていて楽しいんだよね。
ホテルでしげしげ見てたら「かわいい……このランナーが可愛すぎる……そもそもM60のプラモならもっと大きくて作り込めるのも買えるよね……」となり、
「でもこの小さいのをさ、サササッと組み立てて塗ったら楽しそうだよね。ピッと汚しなんかいれて、センスよく完成〜って言ってみたいよ……」と思うなどし、
そして延々クローゼットの中で寝かされていたってわけ。
で、「まあそろそろオレの気持ちも変わってるかもな」なんつって、クローゼットから取り出してまたしげしげとランナーを見ていたら
「や、やっぱ可愛い……これはもう出来てるよ……オレがパーツもがなくてもいいじゃんこれで……」という思いは揺らぐことなく
決して作るのがめんどくさいとか時間がないとかじゃないのに、またクローゼットに戻っていったというのが今日の出来事であります。
プラモは「箱を開けたらなんかドワーっとあって、ひと呼吸置いてからよくわかんない森にズブリと足を踏み入れる」みたいなのが面白いと思うんですよね。
「ランナー1枚、速攻で組んでバーンと遊ぶぞ」というゲームのコマも、こうしてモデラーが眺めると「プラモ的にどう料理してくれようか」という邪念が沸いてきて
しかもこれが視界の中に全部収まっちゃうわけですから、もう試合開始から展開からクロージングまでビシーッと見えてしまう。
この流れがビシーッと見える感じというのはプラモの場合、意外と損なのかもしれないなぁとか、馬鹿なことを考えたりしちゃうんですね。
ということで、組みたいけど組めない、だからたまに眺めて「おおお、出来いいなぁ〜」なんつうのも趣味の一つだったりします。
あなたの家にあるプラモを「積む」とか「消化」とか言っちゃいけませんよ。あなたが買ったときに抱いた気持ちはそんなに無機質じゃなかったはずですよ。
「いつまでたっても作らない」「あえて眺めるのみ、だがそれがいい」というプラモは、開き直ってこうしてみんなに自慢しましょう。
オレ、このプラモのここが好きで、これ見ると満足してフタ閉めて、元の位置に戻すんですよ〜っつう。そういうのも、プラモの遊び方ですから。
みなさんも、ぜひ教えて下さい。お待ちしてます。
by kala-pattar
| 2020-04-03 20:40
| →SPRUE CRAZY