南アルプス北岳山行記〜その3

寝ている間に気温はどんどん下がり、4時頃寒さはピークを迎える。

南アルプス北岳山行記〜その3_b0029315_11565898.jpg一人むっくり起きてカロリーメイトとチョコレートを手に小屋を出てみる。息をのむ。上空は快晴、満天の星。天の川が容赦なく覆いかぶさる。眼下には壮大な雲海。頭を出しているのは仙丈ヶ岳。早くも北岳山頂を目指し登って行く人々のヘッドランプが時折まぶしい。気温は思ったより下がらず、最低でも6℃だったが体にはこたえる。カロリーメイトを齧りながら日の出を待っていると一気に雲海が下がって行く。

南アルプス北岳山行記〜その3_b0029315_125818.jpg甲斐駒、中央アルプスが次々と頭を出し、ふと南東を見やれば小さな黒い頂が。富士山だ。明るくなるにつれ、雲海の広がりと奥行きが強調されて、周りの地面にも色がついていく。潜水艦の如く浮上する周りの山々。もはや富士はその姿の半分ほどを出し、空はどんどん赤の面積を増していく。結局ご来光とはいかなかったが悪天を覚悟して家を出たみんなにとってはラッキーなプレゼントだった。

南アルプス北岳山行記〜その3_b0029315_12112215.jpg朝飯の炒り卵がやたら嬉しい。米も美味い。腹ごしらえをしたらパッキングをし直して北岳登頂開始。急登がこたえるがそれもわずかな間。ひと登りで山頂へ。3192.4m、日本2位の標高、深田百名山、そんなもんを全く意識することがないのに驚く。べらぼうに景色がいい。
360°の展望とはこういうことか、とただただ感心し、周りに自分のいるところより高い山がないことの嬉しさを噛み締める。

南アルプス北岳山行記〜その3_b0029315_12182976.jpg気温が上がるにつれ雲海も高度を下げ、今から行くはずの間ノ岳もちらちらと見える。やや離れて八ヶ岳、中央アルプスが大きな山容を横たえる。遥か遠くに見えるのは北アルプス。りなちゃん感激ひとしお。暖かいお茶をすすりながらこの景観とうっすい空気を恣にする。「何で山に登るんですか」「山の何が面白いの」って馬鹿にされることがよくあるけど、俺はその都度いろんな事を言ってきた。誘ったりもした。でも今回ばかりはもうダメだ。この景色はそんな事聞いてくる奴に見られたくない。理由なんか無い。飯食って歩いて高いところに立つのがただひたすら楽しいの。見たかったら登ってこい。登りたくなきゃ見るな。そんな事を考えながらボンヤリとする。

つづく
by kala-pattar | 2005-09-27 12:25 | Mountain