日々是超音速:怒号と悶絶の磐越路 その4
2005年 12月 30日
隣のテーブルの旦那さんがトイレに行き、戻ってくると入れ替わりで奥さんと息子が駅員に様子を聞きにいった。重苦しい雰囲気。予感は的中した。
「今日は危ないからもうダメだってー」
今から給水し、方向転換し、再び新潟に向かうなら最速でも20時頃の出発だろう。新潟までは3時間半の道のりだが今日の天候ではそうすんなりとは行くまい。そうすれば到着が深夜0時を回ることが確定する。帰りの「ムーンライトえちご」はおろか、新潟駅で野宿である。それならそれでいいのだが、そこまでしてSLに乗りたい人はもうどこにもいないし、第一JRもこれ以上のリスクは冒せない。帰ってきてから知ったのだが、SLに先行する列車に倒木が直撃し運転台が壊れたんだそうだ。至る所で線路が埋まり、倒木が行く手を遮っていた。
男の子が泣く。俺ら二人は座敷に大の字になって悲しみを表現する。旦那さんは別の目的地に行くためクルマを駐車場へ掘り起こしにいった。奥さんは半笑いで荷物をまとめる。旦那さんは帰りしなに東武線で帰京することを進めてくれた。なるほど、それならどうにかなるかもしれんが18時20分発が最終列車。浅草着は深夜0時過ぎである。ここまで来て6時間も東武線に揺られ、真夜中の浅草に帰るなんて考えたくない。俺の肚は決まっていた。多分s2mも決まっていた。
「よし、普通に新潟行くか。」
そば屋を出るなりみどりの窓口に行き、チケットを変更する。ここまで来て列車が走らんのだ。振替輸送で運んでもらった分の返金くらい大目に見てくれ。とりあえず「郡山で買ったチケットを返してその金でここから新潟経由新宿行きの券をくれ」と申し出ると駅員は気が動転していたのか、異常な額の手数料をガッサガッサと引いて返金してきたのでカチンと来て「使ってないから全額返せ」とゴネて事なきを得る。で、結局発券されたチケットは「会津若松発新津経由新宿行き」…。文句を言うパワーも残っていないのでおとなしく受け取る。
1830頃だろうか。ついに除雪が完了。改札に活気が戻る。磐越西線会津若松〜新潟間運転再開。キハ110のうなりが聴こえる。行き先表示は新潟だがスジの関係で新津行きらしい。駅員が叫ぶ。5時間ぶりの列車。ああやっとこの駅から前進できる。安堵と悔恨が混ざった妙な気分でテンションがやや上がる。
プラットホームに足を踏み入れ絶句する。息をのむ。何だこれ。線路が無いじゃないか。もっと近づかないと訳が分からん。そんな事を思いながら列車に近づく。
これ、動くのか?
別ホームの小出行き。
おそらく郡山行きであろう。
新津行きキハの先頭車輛。
正直ここまでだとは思っていなかった。ひとまず最後尾の車輛に乗り込む。
「SL」の停車位置表示が泣ける。
シートに腰を落ち着けボーッとしていると、突然列車はドアを閉め、ゆるゆるとホームを滑り出した。
つづく
「今日は危ないからもうダメだってー」
今から給水し、方向転換し、再び新潟に向かうなら最速でも20時頃の出発だろう。新潟までは3時間半の道のりだが今日の天候ではそうすんなりとは行くまい。そうすれば到着が深夜0時を回ることが確定する。帰りの「ムーンライトえちご」はおろか、新潟駅で野宿である。それならそれでいいのだが、そこまでしてSLに乗りたい人はもうどこにもいないし、第一JRもこれ以上のリスクは冒せない。帰ってきてから知ったのだが、SLに先行する列車に倒木が直撃し運転台が壊れたんだそうだ。至る所で線路が埋まり、倒木が行く手を遮っていた。
男の子が泣く。俺ら二人は座敷に大の字になって悲しみを表現する。旦那さんは別の目的地に行くためクルマを駐車場へ掘り起こしにいった。奥さんは半笑いで荷物をまとめる。旦那さんは帰りしなに東武線で帰京することを進めてくれた。なるほど、それならどうにかなるかもしれんが18時20分発が最終列車。浅草着は深夜0時過ぎである。ここまで来て6時間も東武線に揺られ、真夜中の浅草に帰るなんて考えたくない。俺の肚は決まっていた。多分s2mも決まっていた。
「よし、普通に新潟行くか。」
そば屋を出るなりみどりの窓口に行き、チケットを変更する。ここまで来て列車が走らんのだ。振替輸送で運んでもらった分の返金くらい大目に見てくれ。とりあえず「郡山で買ったチケットを返してその金でここから新潟経由新宿行きの券をくれ」と申し出ると駅員は気が動転していたのか、異常な額の手数料をガッサガッサと引いて返金してきたのでカチンと来て「使ってないから全額返せ」とゴネて事なきを得る。で、結局発券されたチケットは「会津若松発新津経由新宿行き」…。文句を言うパワーも残っていないのでおとなしく受け取る。

プラットホームに足を踏み入れ絶句する。息をのむ。何だこれ。線路が無いじゃないか。もっと近づかないと訳が分からん。そんな事を思いながら列車に近づく。
これ、動くのか?

別ホームの小出行き。

おそらく郡山行きであろう。

新津行きキハの先頭車輛。

正直ここまでだとは思っていなかった。ひとまず最後尾の車輛に乗り込む。
「SL」の停車位置表示が泣ける。

シートに腰を落ち着けボーッとしていると、突然列車はドアを閉め、ゆるゆるとホームを滑り出した。

つづく
by kala-pattar
| 2005-12-30 17:17
| 行ってきた