日々是超音速:怒号と悶絶の磐越路 その5
2005年 12月 30日
列車は見渡す限り真っ白な世界を走る。エンジンの音が心地いい。塩川でSLをやり過ごすとのアナウンス。SLはもうすぐそこまで来ていたのだ。残念である。しかしやっとここで会えると思うと鼓動が高まる。惰行、ブレーキ。列車の速度がゼロになる。ホームに積もった雪は窓のすぐ下まで積もっている。最低限、人が一人通れるだけの幅が駅舎からドアに向かって除雪してある。塩川駅、ホームの対面にいたのは乗っているのと同じ110だった。キョトンとする車掌。
「情報が錯綜しております。申し訳ございません。少々停車いたします。」
何度か無線のやり取りがあった後、列車が走り出した。「SLとは喜多方での交換となります。」やはりそうか。DDが繋がったのか繋がっていないのか、何にせよSLは喜多方から発車できずにジリジリとしているのだ。先程の肩すかしで期待がより一層膨らむ。早く見たい。あわよくば写真も。
列車が喜多方駅に滑り込む。一瞬窓から見えた黒い肌。オレンジ色の照明が配管を縁取る。
停車。
ドアの「開」ボタンを叩き、膝まであろうかという雪をものともせずにカメラ片手で走る。他にも同じ魂胆の人間が数人。車輛の尻に回り込んだ瞬間、彼女はそこにいた。
DDが前に連結され、うっすらと蒸気を吐きながら静寂の中に身を横たえていた。やっと会えた。素手に冷気が容赦なくぶつかる。手に持つGXのダイヤルをマニュアルモードにし、露出もシャッタースピードも考えず、柱に寄りかかって夢中でシャッターを切る。鳴り響く発車ベル。出発を告げる車掌。全速力で車内に戻り、モニターを確認する。そこにはオレンジに輝くC57180がハッキリと写っていた。ISO400でF2.5の2秒露光、バッチリだった。
席に着くと間もなく列車は走り出した。SLの後ろに牽かれた客車には疲れきった表情のお客さんがパラパラと残っていた。大半のお客さんは別の列車で新潟か会津若松に行ったのだろう。この時間になっても残っている理由は本当に深い愛情か、なんだか得体の知れない意地なんだろうな、と思った。車内のクリスマスっぽい飾り付けが一層物悲しく見えた。
やっとこ席に着いた野郎二人に安堵と疲労がどっと押し寄せ、俺は半ば気絶するように眠りこけた。窓の外は漆黒。雪の白を照らし出す微小な明かりすらない。列車は闇を切り裂きながら新津へ進む。
つづく。
「情報が錯綜しております。申し訳ございません。少々停車いたします。」
何度か無線のやり取りがあった後、列車が走り出した。「SLとは喜多方での交換となります。」やはりそうか。DDが繋がったのか繋がっていないのか、何にせよSLは喜多方から発車できずにジリジリとしているのだ。先程の肩すかしで期待がより一層膨らむ。早く見たい。あわよくば写真も。
列車が喜多方駅に滑り込む。一瞬窓から見えた黒い肌。オレンジ色の照明が配管を縁取る。
停車。
ドアの「開」ボタンを叩き、膝まであろうかという雪をものともせずにカメラ片手で走る。他にも同じ魂胆の人間が数人。車輛の尻に回り込んだ瞬間、彼女はそこにいた。
DDが前に連結され、うっすらと蒸気を吐きながら静寂の中に身を横たえていた。やっと会えた。素手に冷気が容赦なくぶつかる。手に持つGXのダイヤルをマニュアルモードにし、露出もシャッタースピードも考えず、柱に寄りかかって夢中でシャッターを切る。鳴り響く発車ベル。出発を告げる車掌。全速力で車内に戻り、モニターを確認する。そこにはオレンジに輝くC57180がハッキリと写っていた。ISO400でF2.5の2秒露光、バッチリだった。

やっとこ席に着いた野郎二人に安堵と疲労がどっと押し寄せ、俺は半ば気絶するように眠りこけた。窓の外は漆黒。雪の白を照らし出す微小な明かりすらない。列車は闇を切り裂きながら新津へ進む。

つづく。
by kala-pattar
| 2005-12-30 19:47
| 行ってきた