『燕子花図と藤花図』を見てきたよ

今日も会社を休んでぼえぼえしている超音速です今晩は。
いわゆるグウタラサラリーマンです。
ていうかサラリーマンじゃないのかも。
とりあえずモテリーマンでない事は確かです。

さて、青山にあります根津美術館は5/7日を最後に3年半にわたる長期休館に入ってしまいます。本館の老朽化に伴い改築工事が始まるらしいのですが、そうなると光琳の燕子花図が見られなくなってしまいますね。
つうわけで見てきましたよ根津美術館。初潜入です。
表参道駅からテケテケと歩いていくとカルティエ、クロエ、フォリフォリ、小学校…うーん。走ってる車はメルセデスを中心にアウディ、サーブ、マセラッティとなかなか貧乏人には腰が引ける雰囲気。おどおどしながら到着しました根津美術館…

うわースゴい庭園じゃんか!昔ながらの蔵がカッコいいぞ!!

そんな感じで1000円払って学生でない事を噛み締めながら入場。
第一展示室…

轟沈。

いきなり目に飛び込んでくるのは入り口正面、尾形光琳筆『夏草図』。
俺はもう夏草が題材の絵が大好物でして、ムワーーーーっと漂ってくる草の香りとかイヤラシい匂いをぷんぷんさせる花の感じとか葉っぱがビラビラしてるのがもうたまらんのですよ。以前、川端龍子の『夏草図』だったか、あれはほんとムンムンしてて最高だったなぁ…。
で、この『夏草図』、鮮やかなエメラルドグリーンの葉に金泥で描かれた葉脈はやっぱり素敵。左下に燕子花がピョッピョッと咲いてますね。マジかわいい。
この屏風はザックリ見るとその情報量があまり伝わってこないのですが、丁寧に一つずつ見ていくとなかなかどうして、楽しいね。右の中央に唯一墨で描かれた枝がズルッと出ていて、そこに苔むした感じでグリーンがたらし込まれています。まさに「夢のような」グラデーションです。

で、右に目をやりますとそこは『吉野龍田図』。
これ誰が描いたの?なんて事はもうどうでも良くなるような大迫力。画面いっぱいにみっちりと桜(=吉野)と紅葉(=龍田)がガスガスガスガス描かれていて、問答無用のゴージャスっぷり。スンバラしいい…。所々にかけられた短冊が風にはためき、幹にはツブツブツブツブ苔がむしています。
何より驚かされるのが紅葉。朱色の紅葉がだあああああああああああっと描かれていれば、一枚一枚の見分けがつかなくなってしまいそうなものですが、なんとこの屏風では白〜朱のグラデーションで紅葉が描かれている訳です。レイヤーで言うと、最背面が白。最前面が朱。その中間はレイヤーが全面に行けば行く程朱に近づいていく感じ。よく考えりゃ白い紅葉なんぞ有り得ないのですが、不自然さを感じさせないのには驚嘆しました。すごいね。

で、右を振り返ると…
いやまて、これはすごすぎる。あとにしよう。(実話)

よし、先に燕子花見ちゃえ。
という訳で、尾形光琳『燕子花図』です。
はああああああ。本物。
ええとですね、写真で見るのと全然違う。あと繰り返しのパターンとかデザイニングの始祖とかそんなのどうでも良くなっちゃうのね。なんといいますかこう、スゴいんですよ。「迷いが無い」とかそういうレベルじゃなくて、もうこれはイラレで書いてますね。マウスで。そうとしか思えない筆さばきです。俺に同じ道具渡されて「コレ描け」って言われても絶対無理。
つまりこういうことです。(筆者がイメージする『燕子花図』@イラレ)
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伝わりますでしょうかこの感じ。知らない人でも「あ、この絵ね」って分かるでしょ?これって相当スゴい事じゃない?『モナリザ』や『最後の晩餐』ではこうはいかないでしょ。こんな感じで、ある一定のエレメンツだけでビシ、ズバ、と描いていく訳です。思ったよりも濃淡があったのが印象的だなぁ。葉は少なくとも濃淡二色が基本になってたね。とりあえずイラストレーターのシンボルツールで花を。ブラシツールで葉を。そんな感じですよ。デザインのお化け。しかも同じマットな色調でグバーーっと葉っぱが生えているにもかかわらず、きちんと一枚一枚の形を把握させる感じ。解像度がしっかりしてるというかなんと言うか…。うまく伝えられないなぁ。そういやこの屏風、よく「水平線構図と対角線構図」なんて形容されますが、ありゃ嘘だね。もっとこう、踊るようなリズムと微妙な傾きがあるからいつまでも見ていられるような気がしました。
あ、それからシュシュシュ、って生えてるつぼみも印象的。

『蹴鞠図』と『桜下麝香猫図』の良さはみじんも分かりませんでした。
なんつうかこう、「勝ち組/負け組」みたいな感じと
ボワボワボワボワした画。
うーむ。
あえて言うなら『蹴鞠図』の一番左、唐突なS字型のデザインが恐ろしく効果的。
あ、探鯨の『草花図』も微妙〜

で、円山応挙『藤花図』。
これはもうまず揮毫(落款?なんて言うの?)に注目ですね。応挙マジで字うまいっすよ。光琳とかヘニャヘニャーって書いて(いやむしろ描いて)あるのであまり気にならんのですが、「まるやまおうきょ」って読める楷書体。どどん。
にもかかわらず画の描き方は半端じゃないっすねぇ。それぞれのレイヤーを仔細に見ていくと伝わってきます。まず太い筆でボンヨヨヨーーンと枝を描きます。そんで細い筆でシュルシュルーピュッ、ピュピュっと細い蔓を描きます。ただしこの墨部分はマジで筆の赴くままね。なんといいますかこう、適当なんですよ。「気持ちいい方向に行ってるだけ」なオーラが出ています。だから左下には「νガンダムの肩に描いてあるアムロマーク」みたいなのがあります。ああ、これは何百年経っても「かっちょええ!」っていう意匠なんだなぁ、とかガンオタ的感慨に耽ります。それから藤の花を描きます。ここは何故か超真面目です。ミチミチミチミチ真面目に描いていきます。しつこいです。そして最後に葉を描きます。こちらはなんとなくしゅっしゅっと描いていますね。
うーむ、お上品と『乱暴力』の同居する不思議で優雅でパワフルな屏風です。
素晴らしい。

そしてさっき華麗にスルーした鈴木其一『夏秋山水図』ですよ。
これは本日27日からの展示!そのかわり『烏図』は見られませんでしたが、いやはやもうスゴすぎてスゴすぎて、横で涙を流している方もいらっしゃいましたよ。俺はぶっちゃけへたり込んで延々見ていました。『紙本金地著色』っつうのはまさにこれだよ。なんといいますか、バックの金が金である意味がようやく分かったような分からんような、引きずり込まれるような強大な力ではねのけられているような、超然としたものを感じる強烈な体験でした。
とにかくもう、信じられないの一言。
右隻は夏、左隻は秋です。岩にモッタリと乗っかった苔、苔、苔。全面マットのエメラルドグリーン。岩を縫うように流れる水、水、水。全面マットのコバルトブルー。ぐーっとのびる木は杉かな?
夏は誇らしげに咲き乱れる匂いたつような百合。湿った空気を喜ぶように繁茂する笹。(これがもう悶絶する記号化されてて素晴らしい)秋は悲しげに朱色の入った枯れ葉が宙にぶら下がり、杉の葉の先端は茶色く変色してしまっています。水の流れはコバルトの上から極細の金泥で。ちょうど泡立つところには優しく泡が描かれています。水の流れが反映した岩の面には墨の上に群青のたらし込み。これが抜群の臨場感で絶句。枯れ葉の表現はもう最高。俺の一番好きな色使い(というよりむしろこんなスゴい事は日本の岩絵の具でしかできないでしょう。)である「エメラルドグリーンに朱の粒子がウワーっととけ込んでいく『あの』たらしこみ」です。虫が食ったのか、葉には穴があいています。
そしてなによりスゴいなぁ、と思ったのは、画面下方に三つ用意された金のスペース。ここは説明が出来ないゾーンなんですね。「なんでもなく、ただただ金。」そういうスペースがボコ、ボコ、ボコっとあるわけです。これが無ければ相当重たい画面になっているんだろうなぁ。これぞデザイニングだよなぁ。素晴らしいなぁ。
ま、正直言って色の使い方とかで言うと多分「幼稚臭い」ってイメージを持つ人もいるでしょうね。ですがもう見れば見る程緻密で迷いがなく、向きになって「あ、しくじった」っていう線を探したのですがもう全然ないの。とにかく厳然とそこにある素晴らしさに心を奪われました。

常設展の方もとても素晴らしい(良寛の『天地二大字』はとてもスペイシーで最高ですよ)もので、点数が少なくても2時間あまり飽きる事無く見て回ることのできる素晴らしい美術館です。これをあと4年待つなんてもったいない!しかも美しく静謐な庭園散策までついて1000円!お得すぎる!!
つうわけで皆様GWは根津美術館にダッシュなのです。

Nezu institute of fine arts

Ripple
Commented by petite-tomo at 2006-04-28 00:05
ママンと行く約束してる。
すげい楽しみ!
写真がとてもきれい!
あ"ーーー
Commented by komupi at 2006-04-28 00:18
>筆者がイメージする『燕子花図』@イラレ
解る解る!
モダンアートになってる(笑)
Commented by まいまい at 2006-04-28 00:23 x
5月14日に行こうと思ってたんだけど。
5月7日に?
3年半?
まじですか。

えーーーーいつ行こう。
Commented by kala-pattar at 2006-04-28 00:52
>ぷちとも
いいよーすごくいいよー
庭園もものすごくいいよー
ガラガラだしね。
天気がよければ最高だったね。

>komupiさん
よかったー伝わったー。
いやこれ、自分でやってみてやっぱりこれってスゴい事だよな、と
確認した次第ですよ。光琳すごい。
Adobeユーザーだったとは…。

>まいまい
哀しいサラリーマンですね。
ワタクシは一体なんなのでしょうか。
ちなみに、マジですよ。
Commented by Tak at 2006-04-30 20:43 x
こんばんは。
TBありがとうございました。

興奮が画面からバンバン伝わってきました。
鈴木其一『夏秋山水図』観られなかったのが残念。
Commented by kala-pattar at 2006-05-06 16:23
>Takさん
夏秋山水図、本当にすごい屏風でした。
もっと見たかったんですが…
まあ気長に待つとしましょうか。
by kala-pattar | 2006-04-27 23:48 | 美術館・博物館 | Comments(6)
“LWGY”